ベストエッセイ 米原万里 平成28年初版

米原万里さんのベストエッセイという単行本を読んだ。

いい本だ。

いくつかのエッセイが集められた本なので、様々な分野の話が、彼女の軽快な文章で奏でられる。このテンポ、好きだ。

 

私は、日英の通訳の勉強をしている最中なのだが、それを知ったワイン仲間が米原万里さんの本が面白いよって言って、一番最初に進めてくれたのが「不実な美女か、貞淑な醜女か」だった。それで彼女にはまった。

 

米原さんご自身は 2006年に早逝されてしまっていて、私の中では後からネット上でお顔を拝見して、あーこの人と分かるぐらいで、当時の記憶はほとんどなかった。2006年、ちょうど私が海外にいた頃であったこともあり、彼女が亡くなっているということも知らなかった。

 

とにかくテンポがいいし、面白い。

 

今回はベストエッセイということで、これまでに書かれたエッセイを集めたものなので、一度は読んだことがある文章もいくつか出てきたのだが、それでももう一度爆笑したり、楽しい。ソ連のあの時代にプラハで育った人だから国際政治に関するコメントも血が通っている。現場の生の声な感じがする。

通訳の勉強の参考になると思って読み始めた米原さんだけれども、気がついたら本当に面白くて読むようになり、かつ彼女の書く1980年代・90年代、その頃の話は、本当に歴史の勉強になるようだ。歴史の教科書の何倍も面白い。 

 

今回のエッセイでまた勉強になったのは、上方落語の「壺算」という有名な話。確かに聞いたことあるような気もするけども同じような手口の詐欺が実際に起こっているということで、逮捕された詐欺師のニュースで番組のキャスターが「まさに落語の『壺算』を地で行くような事件でしたね」とコメントしていたことがあったと、なんとも私にとっては、生きた勉強である。また、この話がでてきたエッセイのテーマは、北方領土をめぐる日露の話。加えて、沖縄をめぐる日米の話。「壺算」、後でYoutubeで落語も観てみようと思う。

 

米原さんのお話は、生きた政治社会の勉強になって面白い。

 

もう一つ、今回の本の中で通訳・翻訳業ということについて、色々な興味が満たされることが楽しい多様性の塊である、というようなことを書かれていた。私も元々通訳になるつもりなんてこれっぽっちも無く、単に仕事でも英語を使うし、もっと英語ちゃんとしゃべれた方がいろいろ楽になるなと思って勉強を始めたのだけれども、実際に通訳の勉強してみると勉強しなくてはいけない分野が本当に果てしなくて多様で、私の好奇心を満たしてくれているのだ。

 

本は、色々と発見がある。

死ぬまで、あと何冊読めるのだろう、、、と思うと、面白くない本を読んでいる時間はない。でも、読んでみないと、わからないのよね。

図書館の本なら、心置きなく途中放棄できる。

自分で買った本は、貧乏根性でつい読んでしまう、、、、。時間のほうがもったいないのにね。

ま、つまらないという事がわかるのも、収穫だ。

100万部のベストセラーだって、全員に面白いとは限らない。

自分の好みは、自分で探すしかない。