靡く 騒く 揺く 輝く 囁く
なびく さわく ゆらく かがやく ささやく
「GOZOノート1 コジキの思想」 吉増剛造 慶應義塾大学出版会 2016年6月15日
の中の、「一語の魅力」という項ででてきた。
この「なびく」はオノマトペを語幹とする動詞の一例として挙げられていて、「ナビ」は長いものの元が抑えられていて、先のゆらゆらとする意味を持っているのだと言う。
オノマトペというと、「ピカピカ」とか、「ワクワク」とか、擬音語のことだと思っていたら、擬態語もオノマトペというのね。
広辞苑をひくと、
オノマトペ=擬音語、とあるが、
擬音語へ飛んで調べると、広義には擬態語も含む。
と、書いてあった。
靡く。なびく。ナビく。
ナビナビ、なびく。
なんとなく、今の季節なら川の土手の雑草や菜の花が風に揺られてゆらゆらとなびいている感じ。
秋なら、ススキの穂がなびいている感じ。
長いものの元が抑えられていて、先のゆゆらゆらする、というのは、まさに、擬態している。
やわらかで、美しい景色が目に浮かぶ。
騒く 揺く 輝く 囁く、これらも擬態語と言われても、ピンと来るような、こないような。
囁く、ささやく。ササヤく。
は、なんとなく、そーーっと、話す感じを擬態しているような気はする。
風のささやき。風がささやく。
日本酒のささやき。日本酒がささやく。
発酵中って、微生物の働きで二酸化炭素が発生するので、ぷくぷくとはいわないけど、しゅーーというか、お酒って、ささやく。
やさしげで、和風なかんじ。
擬態語、自然の情景を思い描くと、何とも平和なやさしい気持ちになるのだが、これが、人の行動を表す言葉として使うと、なんだか怪しげな雲行きになる感じ。
なびく。
”あの人は、田中さんに靡いている。”
って、あんまり、いい感じがしない。
”彼女は、彼に靡いている。”
なら、ちょっと、いいかも?でも、なんかちょっと違う。
普通に、
”彼女は、彼に惚れている。”というのとは、何か違う。
あれ、ほれる、も擬態語かなぁ???
ほぉぉぉっとしている感じ。
ささやく。
”彼は、隣の部下にそっとささやいた” ⇒ 行き詰まった会議中なら、ちょっと、やなかんじ。こそこそしやがって!
”彼は、彼女にそっとささやいた” ⇒ デート中なら、ちょっといい感じ。
擬態語って、あまり気にしたことがなかったけれど、たしかに使う時と場合で、同じアクションだとしても、その行動に背景にある目的のような意味が変わるってこと?
いわゆる動詞、eat「食べる」、sleep「寝る」みたいなものとは、発生の語幹が違うということなのだろう。
日本語って、おもしろい。
英語の勉強をしていると、自動詞と他動詞で、目的語の使われ方が明確に異なるので、自動詞と他動詞を意識することはあったけど、日本語では自動詞も他動詞もあまり気にしないし、語幹も気にしたことがなかった。そりゃ、母語だからね。
なんせ、日本語は、主語がなくても、目的語がなくても、文になる。
ハイコンテクスト。
その分、言葉の受け取り方による誤解も多いかもしれないけど。
だからこそ、対話を大切にしないとね。
英語と日本語は、意味を同じつもりで使っても、なんとなく語感が違う事がある。
日本語で幸せ、っていうと、ぎゅっと腕で自分を抱きしめる感じ。
英語でHappy、っていうと、パーっと腕を伸ばして自分を解放する感じ。
私の勝手な解釈だけど。
もちろん、パーっと腕を伸ばして天を仰ぐ幸せ、もあるけど。
言葉の持つ意味が、時と場合で、あいまいであることも、悪くない。
そこから、相手の意図することを読み取ろうとするためにするのが対話。
Dialogue
一方的に語るだけでなく、対話ができてたらいいね。
そのためには、自分が少し黙ることだよ。
今度会うときは、少し沈黙をまってから、そっとささやこう。