「ダリウスは今日も生きづらい」 アンディーブ・コラム 集英社
2020年12月20日第1刷発行
心をゆるめたい時に、おすすめ。
読んでよかった。
数時間で一気読み。
アカデミーヒルズのおすすめの本だったので読んでみた。
最初は、普通に家族愛の物語かと思って読み始めた。普通に、文章表現が面白いなと思いながら。394ページ結構な分厚さの本である。
最後の5%ぐらい、怒涛の展開。号泣しながら読んでしまった。
やはり父親と息子の、母と息子の、そして家族みんなとの、友達との愛の物語。
ごくありふれたテーマだけれどもやはり心にしみる。
特にしみる。
主人公とその父親は、二人そろって鬱を背負って生きている。
思いの行き違い。それが溶けて再び父親と息子がお互いの存在を必要としていることを認識しあう。そりゃ、泣かないわけがない。
私も、田舎の親戚にあいに行きたくなった。
コロナが収まったら、、、、祖母のお墓参りに行こう。
家族に、親戚に、やさしくなりたくなる本だった。
以下、ネタばれあり。
主人公 ダリウスは、アメリカに住む、ペルシア系の高校生。学校では、あまり友達とはうまくいっていない。いじめられている。鬱の薬も飲んでいる。天真爛漫な8歳の妹はかわいい。
母親は、イラン出身。結婚してアメリカにきてから15年、実家のヤズドに帰国していなかったが、ダリウスの祖父、母方の祖父の病気が思わしくなく、ペルシアの新年(ノウルーズ)のタイミングで、2週間ばかり、母親の実家へ家族4人で帰国することにする。
そこで、ダリウスは初めて、自分の親戚にあい、初めてココロ許せる同世代の友達に出合い、、、。
うれしいこと、悲しいことを、ぎゅっと凝縮した2週間を経験することになる。
鬱、宗教、親戚、、、、政治、、、。
初めて友達と思えた友達は、バハーイー教徒。イランでは政治的に迫害されている。でも、ダリウスには優しかった。
その2週間で、ダリウスは、一回りも二回りも、、、なにか、成長という言葉で言い表せない、変化を遂げる。
アメリカに帰国して、これから、前よりはちょっとうまくやっていけそうな予感で、話は終わる。
著者の、デビュー作らしい。
著者自身が、鬱とともに生きている。そんな著者だから表現できた鬱の人の自分へのいら立ちや、周囲の人の戸惑い、心に響いてくる感じがした。
小説の中で、ダリウスが友人が言われた言葉、
「あなたの場所が空っぽ」
相手にいてほしいときのペルシアの表現らしい。
なんて、詩的で、切ない表現何だろう。
「あなたの場所が空っぽ」
空っぽを、埋めてもらえたら、うれしいね。
著者が、あとがきで、
「何があろうと、鬱に人生をコントロールさせる必要はない」と書いている。
心が、暴れても、暴れる心にコントロールされるのではなく、やり過ごす。
そんな、時間も必要なのかもしれない。
場所をかえることで、やり過ごすこともできるのかもしれない。
「ダリウスは今日も生きずらい」
なかなか、良い本だ。
ちょっと、西加奈子の「サラバ」を思い出した。
少年たちの、短い時間で築かれる友情物語。
でも、その短い時間が、その後の人生を変えるほどの経験になることがある。
たくさんのこと、経験しよう。
うまくいかなくてもいい。
経験して、学べばいい。
人生は、死ぬまで勉強なのだ。
だから、楽しい。
今日も生きづらくても、気にしない。
人生、楽しもう。