「サハラに死す」上温湯隆の一生 

「サハラに死す」上温湯隆の一生  長尾三郎 編

講談社文庫

1987年7月15日 第一刷発行

 

東西7000キロのサハラ砂漠を、ラクダとともに単身で横断しようと挑んだ上温湯(かみおんゆ)青年の話。残念ながら、その夢はかなわなかった。遊牧民に死体として発見されて、その22年の人生の幕を閉じた。

そんな、実話。

 

知人が、この本に影響されて若いときに1年ブラジルで暮らした、と言っていたので、読んでみた。

 

冒険の旅は、好きだ。

でも、これは、あまりにも、無茶だ。と、私は思った。

青年よ、命を大切にしてくれ!

やっぱり、生還した冒険の話なら元気が出るけど、道半ばで途絶えた冒険の話は、読み終わった後に、なにか、しこりが残る。

若いときに読んだら、自分なら成功させる!とか、思うのだろうか?

でも、知り合いも、この本に影響はされたけど、サハラ砂漠は死ぬと思ってブラジルにした、と言っていた。

 

引き返す勇気。

想定外のことが起こるのが人生。

うまくいっているときほど、謙虚になろう。

そんなことを思った。

 

読んでいてい、頭に残った、2つ、余談。

 

購入するラクダを選ぶ時の、目利きのおじさんのことば。

「上門歯がない。これはだめだ」

まえに、米原万里さんの本を読んでいた時に、友達が彼女に向って、「いい男を見分けるには、歯並びを見るのよ」といったようなことを語った話がでてきた。

人間も、ラクダも、歯が命?!?!

でも、確かに、健康なら歯はちゃんとしていそうだ。

 

もう一つ。

彼の日記の出てきた言葉。

「まろぶ」

ラクダのサーハビー(アラビア語で「わが友よ」という意味)とサハラの砂漠の中で、食料と水は尽き、これ以上前進するべきか、道が明らか元の場所へ戻るべきか。

上温湯青年は、友人に言われた「無謀な前進をするな」の言葉を思い出して、引き返す選択をする。

そして、丘を越えて目に入ったテント。遊牧民たちのテント。

「僕は、まろぶようにして サーハビーと一番近くのテントに駆け込んだ。」

3日と5時間の絶食の後、ようやく食事にありつく。。。

 

青年の日記に「まろぶ」と書いてあったのか、編集した長尾さんが「まろぶ」という言葉を使ったのかはわからないけど、「まろぶ」って、最近はあまり聞かない言葉の気がした。

 

「まろぶ」

転ぶ。ころがる。ころぶ。倒れる。

 

人生、どう、まろぶかわからない。

でも、健康だけは常に大事にしよう。

そう、歯を大切にしよう。