「君たちはどう生きるか」 by 吉野源三郎

君たちはどう生きるか

吉野源三郎 著
マガジンハウス
2017年8月24日第1刷発行


もともとは、1937年昭和12年7月に発行された本。
戦前に発行された本ではあるが、戦後にも売り続け、そして皆さんご存知のように今でも売れている。戦後に、文部省の定めに応じて漢字や仮名遣いが修正されている。1967年にも再度修正されて現在のタッチになっているということ。今回読んだ本は、マガジンハウスから2017年に発行され、池上彰さんの解説が冒頭についていることから、売れに売れた本。


著者の吉野源三郎さんは、1899年(明治32年)生まれ。1981年に82歳で亡くなられている。児童文学者であるとともに編集者として手腕を発揮したことで知られている。一旦東京帝国大学経済学部に入学するが、哲学への思いがつのり、文学部哲学科に移る。社会主義系の団体に出入りしたことから1931年昭和6年には治安維持法違反で逮捕されている。この経験から第二次世界対戦後は、いわゆる戦後民主主義の立場から反戦運動に取り組む岩波書店の雑誌世界の初代編集長を務め、岩波少年文庫の創設にも尽力した方。

(本書の中の、池上さんの解説の一部を引用)


この時期は、日本が日中戦争の泥沼に入っていく時でリベラルな考えの人が弾圧されたような時代。
そんな時だからこそ自分の頭で考えられる子供たちに育てたいそんな想いからこの本が書かれたということ。

 

実は、2017年、その時には、私は本を手に取らなかった。
気になっていたけれど、取らなかった。
心に余裕がなかったのかもしれない。

 

そして、今回、50代で、初めて読んだ。

たまたま、他の本を探していた図書館の棚で、目に入った。

「あ、もう、予約しなくても借りれる本になっていたんだ・・・」

借りてみた。


本当に、良書だった。
内容も素晴らしいのだが、本の構成がいい。

本当に、こういう本を書いてみたい、と思うくらい、素晴らしい。


以下、ネタばれあり。


主人公の15歳、コペル君をめぐる日常のストーリー。そしてお父さんを亡くしているコペル君にとっての相談相手である、叔父さんとのやり取り。叔父さんはコペル君に伝えたいことを、会話の中で伝えるだけでなく、Noteに書き綴り、後にコペル君にプレゼントする。


一から十のストーリーがあるのだが、その中に織り込まれているのは、人としての生き方を考えることに行きつくのだが、その導入ストーリーがそれぞれ素晴らしい。デパートの屋上からみた銀座の町並み、学校でのいじめ、ニュートン(物理の法則)、友人の貧困、ナポレオン(英雄の栄光と没落)、ガンダーラーの仏像、などなど。極めつけは、コペル君自信の失敗、卑怯者。

 

哲学的な学びだけでなく、広くリベラルアーツを学べる本だと思った。

ナポレオンのくだりでは、ナポレオンの栄光と没落の20年を引用して、

「自分の権威に驕るな、謙虚であれ」

という教えがメインテーマだけれど、歴史の勉強にも興味をそそられる。

 

事実、私自身は、今、ちょうど「ボナパルト」に興味持っているので、それより先に、「ナポレオン」を、あの時代の「ヨーロッパ」を今一度学びなおしてみようと思った。

中学や高校で、まじめに歴史を勉強してこなかった私にとって、今、歴史を学ぶのは楽しくてしょうがない。

もっと、歴史を学べ、と、この本が言ってくれている。

 

ガンダーラの仏像も、先日、「古寺巡行」を読んで、仏像・観音様にあいにいきたい、と感じていたところだったので、あぁ、博物館、予約しよう。。とリマインドしてもらった。

megureca.hatenablog.com

コロナで、ふらっと美術館や博物館に行けなくなってしまって不便だが、その分、待たずに観れるはずだから、暑いけど、この夏に行ってこようと思った。

 

外のカフェで読み始めたのだが、涙があふれて仕方がないので、半分読んだところで、あきらめて自宅に帰って続きを読んだ。

 

卑怯者、の項は、号泣。

コペル君は、友達が上級生から暴力を受けそうになったら、みんなで闘うと約束していたのに、いざ、その時が来たら、動けなかった。。。ほかの2人は約束通りに友達を守ったのに、自分は遠くから見ているだけで、足がすくんで出ていけなかった。

そして、そのまま風邪をひいて寝込み、裏切り者の自分に、卑怯者の自分に、なんとか言い訳してみたり、そんなことをしても、卑怯者であることには変わりはなく、、、。

コペル君は、寝込んでいる蒲団の中から、叔父さんに相談する。

 

叔父さんの言葉。

「また、過ちを重ねちゃいけない。コペル君、勇気を出して、他のことを考えないで、いま君のすべきことをするんだ。過去のことは、もう何としても動かすことはできない。それよりか、現在のことを考えるんだ。いま、君としてしなければならないことを、男らしくやっていくんだ。こんなことでーーーーコペル君、こんなことでへたばっちゃぁダメだよ。

さ、元気をだして、北見君たちに手紙を書きたまえ。正直に君の気持を書いて、北見君たちに許しを請いたまえ。」

 

素直」が、一番大事。

そいういう事。

 

謝っても、友達がゆるしてくれないかも、なんて、考えてもしょうがない、と叔父さんは言う。今、自分がやるべきことをやる。謝る。

 

大人の世界も、同じ。

自分の過ちを認めることは、もしかすると大人になるほど難しくなるのかもしれない。

でも、素直であること。

ちゃんと、ごめんなさい、を言える大人でいよう。

もちろん、ごめんなさい、が必要な過ちを犯さない方がいいけど、

人は、ミスを犯すもの。

 

「ありがとう」と、「ごめんなさい」は、本当に大事だ。

 

君たちはどう生きるか

50を過ぎても、問い続けなくてはいけない言葉だと思う。

「ありがとう」がたくさんの人生にしたいと思う。

 

吉野さん、良書をありがとうございます。

 

読書は、楽しい。

学びは、楽しい。