「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」 by カール・マルクス

ルイ・ボナパルトブリュメール18日 第2版
ハンブルグ・オットー・ マイスナー書店 1869年)
カール・マルクス 著
丘沢静也訳
2020年4月8日 第一刷発行
株式会社講談社

 

「この一冊、ここまで読むか!」に出てきて、気になったので図書館で借りてみた。

違う訳本だけど。

megureca.hatenablog.com


カール・マルクス(1818~1883年)
ドイツの哲学者・経済学者。言わずと知れた「資本論」の著者である。
マルクスは、ニューヨークで政治週刊誌を出そうと計画していた友人に頼まれて、クーデタの歴史についての寄稿をした。予定が変わり、週刊誌の代わりに月刊誌となった『革命』に掲載されたのが、この「ブリュメール18日」。
マルクスは、「はじめに」のなかで、
「最後に私としては本書がいわゆるカエサル主義〔皇帝民主主義〕という常套句の排除に貢献することを望んでいる。」と書いている。

 

「ルイ・ボナパルトブリュメール18日」は、本来のブリュメール18日をもじったタイトル。本来のブリュメール18日というのは、ナポレオンがクーデターによって、総裁政府を倒した1799年11月9日のこと。ルイ・ボナパルトは、ナポレオンの甥。


マルクスは、「ボナパルトはナポレオンと呼ぶにふさわしくない、グロテスクで凡庸な人物」とみなしていたので、「ルイ・ボナパルトブリュメール18日」とした。

マルクスは、1848年2月革命から1851年12月2日のクーデターを、ボナパルト茶番劇とみている。その展開を同時代に生きていたマルクスの目からの報告が、本書である。

 

ルイ・ボナパルト、すなわち、ナポレオン三世に対する評価は、人によって様々であるが、マルクスは、「陰謀好きなたんなる馬鹿」「好色で、宴会好きの成り上がり」とみている。
であるから、全体的に、批判調の文章。

ジャーナリスティックな記録であり、分析レポート。そして、この一冊を人類学者であるレヴィ=ストロースが愛読していたというから、興味深い。何かの問題に取り組み前に、何ページか読んで自分の思考に喝をいれていたという。

なるほど、本というのは、そういう活用の仕方もあるのか。

レヴィ=ストロースというと、やわらかい文章、あまり攻撃的に表現をしない人、と思っていたけど。喝をいれる、という事はしていたらしい。

megureca.hatenablog.com


もともとの、ドイツ語で読むと、その辺の感じがもっとわかるのかもしれない。

 

私にとっては、歴史の勉強の一冊、という感じだった。


マルクスの文章の上手さまを堪能できるほど、読解はできていないと思うけれど、全体に、テンポがいい感じは、訳本でもわかる。


本書で社会主義派・ボナパルト派として「ルンペンプロレタリアート」が出てくる。ルンペンプロレタリアート(独: Lumpenproletariat)とは、プロレタリアート(労働者階級)のうち階級意識を持たず、そのため社会的に有用な生産をせず、階級闘争の役に立たず、更には無階級社会実現の障害となる層、というのが、マルクスのいうところ。

社会主義派のなかでも、そのような人たちがいたから、ボナパルトが活躍できた、、、と。

 

やはり、ヨーロッパの歴史をちゃんと学びなおさないと、理解できない、、ということがわかった一冊。そもそも、王様をギロチンで処刑しちゃう歴史。それでも、だれか一人のリーダーを求めてしまう民衆。お金持ち優遇策と、労働階級の怒り。王に期待してはいけない。やはり、共和政だ!。でも、内部の分裂も起こる。農民と労働者の対立。
そんなどさくさのなか、、、「ナポレオンの名を持つのなら、農民と労働者の対立を解決してくれるだろう!」という期待におされて、まんまと皇帝の位に収まるボナパルト

 

なるほど、そういう歴史だったのね。

 

ジャーナリストとしてのマルクスの書。
文章がいちいち長いのが一つのマルクスらしさか?
でも、テンポがいい。

 

そんなに、ぶ厚い本ではないけれど、中身がつまった一冊という感じ。
今回読んだのは、第二版ということで、マルクス自身が最初の第一版から、いくつか手直しをしているらしい。
第一版も、いつか読んでみよう。。

 

いや、その前に、歴史の勉強のし直しが必要かもしれない・・・。

世界史を理解せずに、人生52年、特に困ったことはなかったけれど、理解しているともっと楽しめたことがあったのかもしれない、と今さらながら思う。

 

ワインの勉強中に出合った「最後の授業」も、第二帝政時代に起きた普仏戦争の話。

時代背景を理解していると、もっと、深く楽しめたかもしれない。

megureca.hatenablog.com

 

 

人生100年時代。

学びを楽しもう。

知っていると思っていても、知らないことがたくさんある。

わかっていると思っていても、わかっていないことがたくさんある。

 

でも、今日の5分の学びが、昨日より少し成長した自分を作ってくれる。

そう信じて、今日も、学びを楽しもう。