「草原の国キルギスで勇者になった男」
春間豪太郎 著
2020年10月30日
新潮社
春間豪太郎さん。本に書かれている紹介によると、
1990年生まれ。大学時代、行方不明になった友人を探しにフィリピンに行って以来冒険家として開眼。主なスキルは語学(英語、フランス語、アラビア語、ロシア語他)、船舶衛生管理者、気象予報士、小型船舶1級、応用情報処理技術者、歌舞伎町などでのキャッチ経験により身につけた交渉力、キックボクシング。好物は卵。
知人が読んでいて面白そうだったので、図書館で借りてみた。
冒険物語としては安心して読めるタイプのノンフィクション。 春間さんは、冒険は動物と一緒にすることを一つの楽しみにしているらしく、如何にその動物の健康を守るかということをきちんと勉強してから旅に出ている。また紹介文からもわかるように気象予報士を取っていたり、自分で自分の身を守るための勉強をきちんとしてから冒険に出ているから、何となく安心して読める感じ。
今回は、馬、犬、羊との旅。
あらためて、キルギスの場所を地図で確認してみると、北にはカザフスタン、西にはウズベキスタン、南にはタジキスタン、そして、東は、新疆ウイグル自治区。大陸の砂漠の合間の山と湖の国、と言った感じ。場所によっては、治安の悪いところもあるようだけれど、優しいキルギス人もたくさんいるらしい。
冒険旅行のだいご味は、やはり、その土地の人たちとの交流だろう。
客人がくれば、その場で羊を一頭解体してごちそうしてくれるとか。
冒険物語では、食事の話はよく出てくるけれど、春間さんの場合は、生卵が好物らしく、地元の人は食べない生卵でも、こよなく愛している模様。たしかに、旅の途中の栄養補給には、卵は完全食だ!けど、生じゃなくても、、、とかおもっちゃうけど、加熱する設備がなければ、そりゃ、生よね。生肉はさすがに食べないけど、生卵なら、確かに食べられる。なんだかんだ、サルモネラにあたったことは無いとのこと。あるいは、あたっても、吹き飛ばすくらいの免疫力があるのかもしれないけど。
冒険そのものの話というよりも、なぜそういう準備をしたのか、とか、トラブルが起きた時に、何に基づいてどう考えて行動したのか、という話が面白い。
旅の仲間である馬や羊が、調子が悪くなった時、自分がどうしたいかよりも動物の健康を一番に考える。そしてその動物がなぜ調子が悪いのかをきちんと調査分析できる力。
片脚を引きずり始めた相棒の馬。どうやら、脚の内側に傷を負っている。街に立ち寄って、治療の時間をとる。傷は、みるみる回復していく。でも、そもそも傷の原因になったものがわからない。でも、よくよく観察すると、蹄鉄の留め具が微妙に飛び出ている。たくさん歩いている間に、蹄鉄そのものは悪くなっていないけど、留め金が緩んで飛び出し、もう一方の脚にあたっていたらしい。
よく観察するって、大切。
そして、何事も、治療という対応よりも重要なのは、その原因を取り除くこと。
大事。
間違えたと思ったときに、道を引き返せる勇気。
無茶はしない。
すごいなぁ、 と思った。
自分で考えて行動できる判断力を養うための、勉強。
何をするにも、そういう準備が一番大事なんだと思う。
身に着けた知識は、裏切らない。
アリストテレスの言葉を借りれば、
「教養は幸運な時には飾りとなるが、不運のときは命綱となる」
まさに、旅のトラブルは、教養が、知識が自分の身を守ることにつながる。
人生も、長い時間の旅みたいなものだ。
やはり、自分の頭の中に蓄積していく知識は、何よりの財産だ。
知識があるから楽しめることもたくさんある。
言語は知らなければ読めない。
翻訳本の原書を読もうと思うと、その言語を知らないと読めない。
世の中は、未知にあふれている。
歳をとると、新しい経験が減るなんていうのは、嘘だ。
新しい挑戦をしている間は、常に新しい経験がたくさんある。
50歳を過ぎて、何かの勉強をしていると、
それ、仕事になるの?とか、
なぜ、挑戦するの?とか、
聞かれることが多い気がする。
お金にならないものは、勉強しても仕方がないと思う人も、世の中にはいるようだ。
でも、自分の人生を楽しむための学びはたくさんある。
オリンピックを楽しむのには、競技のルールを知ることも必要だろう。
健康に関する学びもそうかもしれない。
人生100年時代、健康で楽しく過ごすには、
健康に関する知識も必要だろう。
病気になってから治療するより、未病対策。
健康で病院知らずでいられるほど、経済的なことは無い。
金銭的にも、時間的にも。
ぼーっとしてないで、勉強してみよう。
ま、たまには、ぼーっとすることも必要だけどね。
バランス、バランス。
いい塩梅で行こう。