「キャリアポルノは人生の無駄だ」 by 谷本真由美

「キャリアポルノは人生の無駄だ」
谷本真由美
2013年6月30日第1刷発行
朝日新書


著者の谷本さんは1975年神奈川県出身。メイロマ(May_Roma)として Twitter で多くのフォロワーを持っているらしい。 私は彼女のツイートを見たことはない。ほかの著書も読んだことはない。
知り合いが今でも時々読み返すほどインパクトのある本だと言っていたので読んでみた。

 

感想。

はっはっはっ!

なるほどね、面白い。

ただの思い付きで言っているのではない、そう考える根拠も書かれているから、面白い。

 

キャリアポルノという言葉は谷本さんの造語。フードポルノからもじった。ある種の自己啓発本の事を言っている。見ただけで満足しちゃうもの。

美味しそうで豪華な食事の写真をみて、自分もなんとなく満足しちゃうような。でも、自分が食べているのは体に悪い超加工食品、、、。

キャリアポルノを読んで、自分もその著者のように成功できるような気になって、でも、今日も一日だらだらテレビを見て夜更かして寝不足で頭の回らない毎日を続けている、、、。みたいな。


本の主たるメッセージは、ある種の自己啓発本というのは実際の効果は不明だし 、読んだ時には、一瞬、人生に対する不安がなくなったような気がするだけで、ただのドラッグと変わらない。そんな本を読む暇があったら自分で体を動かして、アウトプットして自分の道を探していけ。 本を読んだだけで満足するのは最悪だ。ということと理解した。

 

その中でキャリアポルノは、「下品。字が少ない、余白だらけ」な本が多い、としている。


ちょうど、同じ日に図書館で借りた別の本が、まさに、ドンピシャ!だったので、笑ってしまった。

 


彼女が言ってるのは、その本の内容が良いとか悪いとかいうことではなく、本を読んだだけで、自分もあたかも何者かになれるというような妄想を抱いたり、社会の競争の中で不安が少し軽減するような気がしたりするのが、無意味だ。ということだと思う。

 

具体的なキャリアポルノとしてあげている本を見ると、 世の中で言われる素晴らしい自己啓発書とされているものも数多く含まれている。 もちろん、私も読んだことのある本がたくさん含まれていた。

 

以下、本書にでてきたキャリアポルノを彼女の分類と共に一部引用。

 

① 説教系
「道をひらく」 松下幸之助
「生き方 ~ 人間として一番大切なこと」稲盛和夫

 

② 俺自慢系
カーネギー自伝」 アンドリュ・カーネギー

 

③ 変われる系
ナポレオン・ヒルの人生が確実に変わる習慣」 ナポレオン・ヒル
スタンフォードの自分を変える教室」 ケリー・マクゴニガル
「さあ才能(じぶん)に目覚めよう ~あなたの五つの強みを見出し、活かす」マーカス・バッキンガム、ドナルド・ O・ クリフトン

 

④  やればできる系
「 企業参謀」 大前研一
「ハーバード流交渉術」 ロジャー・フィッシャー、ウィリアム・ユーリー

 

⑤ 儲かる系
「金持ち父さん貧乏父さん」ロバート・キヨサキ
「働かないで年収1560万円稼ぐ方法」 川島和正
「秒速で1億円稼ぐ条件」 与沢翼

 

⑥ 信じる者は救われる
引き寄せの法則 シークレットカード」 エスター・ヒックス、ジェリー・ヒックス
「宇宙に上手にお願いする法」 ピエール・フランク

 

⑦ エンタメ系
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」 岩崎夏海
「夢をかなえるゾウ」 水野敬也
チーズはどこへ消えた?」 スペンサー・ジョンソン
「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」 エリヤフ・ゴールドラット

 

⑧ ノマド
「モノを捨てよ 世界へ出よう」 高城剛
「冒険に出よう」 安藤美冬

 

おそらく、一冊くらいは手にしたことがあるのではないだろうか。


私も、読んだことがある、あるいは、目にして気になったことがあるものをいくつかここに抜粋してみた。

中には、素晴らしい内容のものあるし、いかにもキャリアポルノと呼ぶにふさわしい下品さも兼ね備えているかも??、というものもある。

 

彼女の説として面白いのは、こういった自己啓発系の本が多く並んでいる国は、アメリカと日本、というのである。

欧州にはあまりない。

 

それは、アメリカにはアメリカンドリームのように努力をすれば救われる、競争に勝つことに意味がある、という考え方があり、日本もそれに近い考え方が社会の中に蔓延している。競争に勝たなきゃ!の社会。


一方で、欧州のように長い歴史の中で社会的階級があり、もって生まれたものはどうにもならないのだから、自分は自分で生きていけばいい、という価値観にいると、自己啓発の本より文化芸術の本のほうが本屋さんに多く並ぶ、というのだ。


妄想主義か現実主義か。

 

日本人が自己啓発本を手にしてしまうのは、その効果が本当にあるかどうかを信じているというより、他の人が読んでいるのに自分だけ読んでいないと競争に負けてしまうかもしれないという焦燥感からではないのか?と。

 

そして、日本ほど、「売上ランキング」を商品に掲示する国はないという。確かに、本屋さんも売上ランキングで並べられているのはよく見る光景だろう。

家電量販店もそうかもしれない。

 

なるほど、面白い見方をするんだな、と思って読んだ。

 

そして、彼女がそう考えるようになったきっかけが、弟がある日突然、生死をさまよう交通事故にあったこと。しかも、事故を起こした相手は保険にも入っていなくて、弟はただただ被害者。

生きる死ぬか、という場面に直面すると、社会での競争のむなしさを感じるのだろう。

 

確かに、どんなに素晴らしい本も、読んだだけでは一時の気晴らしにしかならない。

問題は、そこでインプットした知識を、どうアウトプットするか。

読書だけではない、何事も自分次第。

 

私は、彼女がキャリアポルノと呼ぶこれらの本を無駄だとは思わない。

でも、彼女に共感するのは、読んだだけでは意味がないという事。

かつ、それらの著者がその後の継続的に成功を続けているかという事も疑わしい、というのもよくわかる。

 

本を読んだだけでは、何も変わらない。

そこで感じたこと、学んだことを、実生活でつかって、なんぼ。

小説だって、そこで新しい言葉に出合う事で、次に同じ言葉で躓くことがなくなる、という意味で、十分学習になる。

 

私は、読書ほど人生を豊かにするのに安上がりなものはないと思う。

でも、それを時間の無駄にしないためにも、

あらゆることは、自分次第。

 

つまらないと思った本は、途中でやめる勇気も必要。

それは、今の自分には合わないだけかもしれない。

 

読書は、雑食でいいから、楽しもう。

そして、読む前より、少し、賢くなったような気になる。

それでもいいと思う。

 

読書は、楽しい。