「チャイナ・アセアンの衝撃 日本人だけが知らない巨大経済圏の真実」 by 邉見伸弘

「チャイナ・アセアンの衝撃 日本人だけが知らない巨大経済圏の真実」
邉見伸弘
2021年2月22日第一刷発行 
日経 BP

 

六本木アカデミーヒルズの読むべき新刊として、2021年3月に紹介されていて、図書館で予約していた。8月になってようやく回ってきた。


今年3月、同時期に、National Security Commission on Artificial Intelligence(NSCAI)のfinal reportのサマリーに目を通す機会があったこともあり、私自身が中国や ASEAN とビジネスをしようと思っているわけではないけれど、やはりこれからの経済の中心として China ASEAN は外せないだろうと思って、予約した。


ちなみに、私が中国の動向を情報として入れておこうと思ったきっかけは、NSCAIのfinal reportで、「10年以内に技術競争でアメリカは中国に追い抜かれる可能性がある」と名言されていたから。そして、その後、アメリカのアンチ中国が政治的にも全面にでてきた。
NSCAIのレポートは、ネットで、誰でも閲覧可能なので、興味があれば下記アドレスから。
https://www.nscai.gov/2021-final-report/

www.nscai.gov

 

さて、本書。
著者の邉見さんはデロイトトーマツコンサルティング合同会社 執行役員・パートナー・チーフストラテジスト。

邉見さんは、最初に、古代ローマの英雄ユリウス・カエサルの言葉を引用している。
人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない

 

見て見ぬふり、希望的観測、「知らない」ことも自覚しない。
そして、気が付いた時には、取り返しのつかない事態に・・・・。


と、ならないように、いま、チャイナ・アセアンの動向についてを記したのが本書。
単純な対中脅威論でも、対中迎合論でもなく、公式統計や白書から情報が提供されていて、ページの多くに、デロイト トーマツ コンサルティング の推計資料などが掲載されている。


コンサル会社の資料に、説明の文章が付いた本と言ったらいいだろうか。
さらっと読める。


グローバルなビジネスをしている人であればサラッとではなくじっくり読んだ方がいいかもしれない。

 

ビジネス世界で必要と言われる、現実を見るための三つの視点が述べられている。
鳥の目:事業・産業の全体を見る
魚の目:時代の流れを読む
虫の目:現場の動向を見る

この三つの視点は、グローバルだろうがドメスティックだろうがビジネスを進めるためには必ず必要な視点だろう。


そのような、一般的な概念としても参考になることが多い本だった。
定価2400円の本だけど、コンサルタント会社の情報が得られる本と思えば、何て安い。

まぁ、私は、図書館で借りただけだから、使った資本は自分の時間だけだけど。

 

虫の目で見なかったための失敗例がいくつか紹介されている。現場の調査不足で、自国のやり方をそのまま適応しようとして失敗したケース。

例えば、アメリカの Uber。 クレジットカードを登録することで支払いが容易になるし、身元の保証にもなる仕組みだが、そもそもクレジットカードが普及していない国で同じことをしようとして失敗した。


タイのデパート、セントラルの中国への進出。タイ国内では高級志向のセントラルだが、同じことを中国でしようとして失敗。客の嗜好が違ったのだ。

 

China ASEAN 経済圏では、日本が学ぶような先端サービスや技術も生まれつつある。その一つとして紹介されているのが、越境EC。


越境 EC によるライブコマース、大臣・外交官を巻き込んだビジネス、など。
ライブコマースの大成功例として、タイの法務大臣(副総理)がマンゴスチンの食べ方を丁寧に説明して、マンゴスチンを大量に売りさばいたという事例が出ている。テレビショッピングと違うのは、ライブコマースは売主と客との双方向コミュニケーションだから、顧客の疑問にその場で答えることができる。しかも、説明してるのが官の人となれば、詐欺まがいではないだろう。そうして、マンゴスチンもドリアンも大量に売りまくったという。

国を挙げての、商売合戦。

その柔軟さは、日本にはあまり期待できない感じ。

自国の農作物を、大臣自らセールスマンとして宣伝する姿、日本では想像しにくい。

 

関係ないけど、昔、バンコクに駐在してた頃に祖母にマンゴスチンを送ったことがあった。祖母は、食べ方がわからず、なんと、そとの皮を食べたらしい、、、、。確かに、分厚い皮の部分が全部きれいな紫のような色だから、熟していて食べるところと思うのだろう。で、なんと渋くて美味しくない、とおもったと。。。で、アジアをよく知る親戚に食べ方を教えてもらって、ようやくちゃんとあの白い甘い果肉を食べれたと。たしかに、あの白い種の周りが食べるところだなんて、説明されないとわからないのか、と、この逸話を読んで納得。

 

日本はアセアンのように陸続きではないのだから、アセアンの地産地消から取り残されかねない、と思った。アセアンでは陸路もどんどんつながっている。パスポートをもって海を越えない限り他国に足を踏み入れることがない日本とは、地理的な条件が全く異なる。空のハブ空港も、各国が整備されていく。


正直いって、成田ほど不便な国際空港はない。。。
昨今のコロナの勢い、そしてのその対策をみていると、コロナを言い訳に、日本はグローバル経済圏からとりのこされてしまうのではないか、という気がする。

 

コロナで海外へいくことも減った今の生活は、実にドメスティックであるけれど、消費しているものはエネルギーをはじめ、多くがグローバル経済に依存している。
やはり、時には、世界の動きを見て見ぬふりではなく、事実として把握しておく必要があるな、と思った。

 

人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない

誰にでもある、バカの壁

壁があるということを、時々思い出そう。

都合の悪いことを、見て見ぬふりをしないように。

 

違和感を感じたら、それを認めよう。

希望的観測で進みたいところだけど、時には視点を変えてみることも必要。