言語コミュニケーションにおける、読む力

「読む力」のあとがきで、佐藤優さんが言われていたことが、頭に残った。

 

”言語コミュニケーションにおいて、読む・聞く・書く・話すという四つの力が要求される。そのうち読む力が基本になるということが意外と理解されていない。大人になってから外国語を習得する状況考えてみよう。読む力の範囲で残り三つの力が発揮されるのである。外務省の研修でロシア語を徹底的に叩き込まれた際に私はそのことを痛感した。実は母語においても知的に高度な操作が必要とされる分野においては、読む力をつけることが何よりも重要なのである。 ”

 

読む・聞く は、INPUT

書く・話す は、OUTPUT

 

読むというのは、単に音を読み上げるという事だけではなく、文脈の意味と取る、という事も含めて、一番大事とおっしゃっているのだと思う。

 

佐藤さんは続けて、ロシア語通訳者、米原万里さんとの会話を紹介している。

 

米原さんは、ある時こんな話をした。米原さんは、
「通訳というのは原発言者の言ったことをそのまま訳すのが仕事よ。原発言者が怒っている時は通訳も怒る。原発言者が気弱がになっているときは通訳も気弱になる。原発言者が馬鹿な発言をした時は、通訳も馬鹿になるの。取り繕ったらいけない。」


”ところが、外交の場になると、その場の判断で身の危険を回避するために、話を作ることがある、と。読む力で窮地を脱出することもある。”

 

具体的に、米原さんが、アゼルバイジャンアルメニアが戦争をしているときに、アゼルバイジャンに日本の代表団を連れて行った時の話が出てくる。アゼルバイジャン政府主催の晩餐会で通訳をした。その時、日本人の団長が、「いままで、フランスのコニャックが最高だと思っていたけど、アルメニアのコニャックが世界一だ」と発言した。

戦争相手のコニャックをほめてしまった!

アゼルバイジャン人には、文脈はわからないけれど、「アルメニア」という言葉は聞こえている。アゼルバイジャンの人たちの顔が引きつる。

とっさに、

「フランスやアルメニアのコニャックが一番と聞いていていたけれど、あなたの国のコニャックが一番と知りました」、と訳した、と。

アゼルバイジャン人は、大喜び・・・。

 

出てくる固有名詞の単語は、そのまま登場させ、文脈をちょっと、、、修正した。

外交通訳であれば、それも含めて、読む力が必要、という事。

 

日本人同士でも、「空気を読む」し、「文脈を読む」。

場を読む。

相手の思惑を読む。

 

黒川龍之助さんの著書にもでてきた、だれでも、日常的に読んでいるのだと。

”Aさんが、「今日はだいぶ冷えますね」と言ったら、
Bさんは、「そうですね、冷えますね」と、答えた。
でも、その裏には、
「寒いから窓をしめませんかね?」とか
「ストーブつけましょうかね?」とか
「夕食はお鍋にしましょうかね?」とか、、、、”

megureca.hatenablog.com

 

社会が、グローバル化、インターナショナル化が最先端かのように言われる時代になり、「空気を読む」ということが、日本人の悪い習慣のように言われることがある。

でも、どこの国、どのような人との会話でも、「空気を読む」ということは、「文脈を読む」という意味では重要だと思う。

 

問題は、「読んだ」あとに、どう行動するか、だろう。

 

Aさんが、「今日はだいぶ冷えますね」と言ったら、その言葉に、

「暖房つけましょうか?」と答えることだって可能だ。

あるいは、恋人同士だったら、何を言わずにマフラーを貸すかもしれない。

 

読む力は、文字を読むだけではない。

 

通訳は、相手の言わんとすることを音で読み取り、コミュニケーションを仲介する仕事。音だけ聞いても、意味が不明であれば、きっと通訳は成立しない。

たとえ、専門用語の羅列だったとしても、何を言わんとしているのかを読み取る力が必要。

 

読むなり、聞くなり、受け取ったINPUTを、自分の脳の中でどのように解釈するか、その速度を上げる訓練として、文章を読むのがいい、とのいうのが、「読む力」が大事、という事なのだと思う。

 

TOEICのListeningのテストも、Part2、と言われるテストは、聞く力+読む力が必要。

通訳の先生は、Part2は、日本語のテストだと思え、とよくおっしゃる。

Part2は、対話を成立させる問題。

聞こえてくる英語の質問に対して、適当な対応を3つの中から選ぶ。

 

(Example)

Q: When should we hold the company picnic?

   (会社のピクニック、どこでやりましょうか?)

A: A) Around 50 people.  (50人くらいです)

         B)  Mr. Han is arranging that. (ハンさんが、準備してくれてるよ)

         C) Hold tha handle carefully. (手すりを注意して握ってね)

 

正解は、B)ということ。

When、いつ? と聞かれているからと言って、答えは、時とは限らない。

 

言葉は、コミュニケーションのツールである。

ただの音の羅列ではない。

そこにある意味を読み取ろうとすることが大切。

そのために訓練として、文字を読む。

文章を読む。

 

速読は、音読をしないことで成立するが、それは、視覚情報から全体の意味を読み取ることが出来るから。

 

英語の速読を身に着けるにも、たくさんの英語を読むのが一番。

 

読む速度が上がると、脳の回転が上がる。

 

英語も、やはり Listening も大事だけれど、readingも大事だ。

英語の勉強は、Vocalization が大事、っていうけれど、

文章を読めなければ、Vocalization もできない。

 

日本語も英語も、たくさん読もう。

 

一日中動画をみていると、頭が馬鹿になるようなきがするのは、気のせいじゃない。。。気がする。

 

 

「書を捨てよ、町に出よう」も、たまにはいいけど、

「Stay home.  本を読もう」も、いいと思う。

 

読む力があったほうが、町にでても楽しいことが増える。

本を読もう。

 

読書は楽しい。