「知の読書術」 by 佐藤優 

「知の読書術」 

佐藤優 
2014年8月31日 第1刷発行
集英社インターナショナル
 
図書館で見かけたので借りてみた。
 
「読書術」と言うタイトルの本だが、前半と後半、大きく2つに分かれている。前半は第一部、「危機の時代」に備えよ、というタイトル。なぜ読書によって教養を身に付けることが必要なのか、ということが説明されている。
第二部は「知のツール」の活用法。実際に電子書籍をどう使うか、インターネットをどう使うか、あるいはなぜ今英語が必要で、英語をどのように身をつけるか、といった話が続く。読書がテーマにはなっているけれども、第一部と第二部は方向性がだいぶ違う。第一部では、歴史を見直すことで、現代、今起きていることを理解する為には、読書が必要だ、という話。第二部は、具体的な佐藤さんの薦める読書のやり方、How toが紹介されている。
 
まず、読んだ感想。
良かった。
185ページの単行本の割には、内容が多い。濃い。良書。
やはり、身銭を切って勉強しないと、色々なこと、身につかないな、と思った。
 
第一部では、かなり歴史の勉強になる。
歴史の変革点となった出来事の復習になった。
1648年 ウェストファリア条約。宗教対立の解消。国民国家ができる
1789年 フランス革命
1914年6月28日 オーストラリア・ハンガー二重帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフ一世の甥、皇位継承者であったフランツ・フェルディナント大公がサラエボで夫人とともに暗殺される。 第一次世界大戦の勃発。

  国内における「資本主義」、外へ向けての「帝国主義」の発動。
1929年 世界恐慌 (大戦中だったのだ)
1945年 ドイツと日本が連合国に降伏。第二次世界大戦終戦

  国内における「資本主義」、外へ向けての「帝国主義」は、終わっていない。
1973年 オイルショック
1991年 ソ連崩壊
2014年 ウクライナ危機
 
戦後、アメリカ主導のグローバリゼーションが始まった。そのまま行くかと思いきや、21世紀は、ナショナリズム帝国主義が顔を出す。
ナショナリズム帝国主義の暴走が起こると、戦争や排他主義の蔓延につながる。それを如何に防ぐのか、それを考えるには、歴史に学ぶ教養が必須である、というのが第一部での佐藤さんの意見。
ごもっとも。
歴史を学ぶために読むべき本がいくつか紹介されている。
覚書。
 
・「20世紀の歴史 極端な時代」上・下巻 
  エリック・ホブズボーム、河合秀和訳、三省堂


・「トレルチ著作集10 近代精神の本質」
 エルンスト・トレルチ著、小林謙一訳、ヨルダン社
 
・「歴史と階級意識
 ジェルジ・ルカーチ著、吉田光訳、白水社
 
・「帝国主義
 ウラジーミル・レーニン著、宇高基輔訳、岩波文庫
 
などなど、、、、どれも読んだことがない。。。
 
第二部は、読書術の話。
2014年の本なので、電子書籍が今よりもそろっていなかった事もあると思うけれど、やはり、教養を身に着けようと思って読むのなら、紙の本がいい、とおっしゃっている。そして、図書館の本もダメだって!やはり、紙の本を買って、書き込みながら読み込むのがよいと。
電子書籍は、紙で買った本の2冊目として活用することが薦められている。持ち運べるから。それは、分かる。
そして、教養を身に着けるための情報収集術として、現地の情報を得るには、英語での情報収集が必要であることにも言及されている。だから、やはり、英語は必要なのだと。
 
お薦めされている英語の習得は、日本語で分かるものを、英語で読むということ。
夏目漱石や、小泉八雲ラフカディオ・ハーン)などの小説が、取り上げられている。
 
そして、本当に、英語も教養も身に着けたいのなら、有料のコンテンツを活用するべきだと。
メールマガジンも、有料のものならばそれなりの価値があるだろうけれど、無料のもは校閲もされていないし、編集もきちんとされていない。知的クオリティが低いことが多く、自己中心的な意見に偏りがちであると。
 
あはっ!
そりゃ、そうだ。
 
たしかに、お金をかける、って重要だ。
身銭を切れ、なんだな。

 

 

第二部の中に、「第四章 『反知性主義』を超克せよ」という章がある。

その中で、佐藤さんは、フランス革命が、 ジロンド派からジャコバン派へ、そしてナポレオンの独裁政治にいたった経緯を説明している。

”代議制民主主義と市民社会が常に合致している近代国家では、市民は一回政治家を選んでしまえば次の選挙まで政治について考える必要がなく、欲望だけを追求していれば良い。したがって、経済さえうまく回っていれば、政治はどうでもいいというのが市民社会の原則です。ところが景気が悪化すると、今度は政治に経済を改善するように要求し始めます。その先に待ち受けているのは、国家機能の強化です。そして国家機能の強化 イコール 政府機能の強化、政府機能の強化 イコール 独裁の強化と、いう形で独裁制へと移行していくわけです”

と。

 

佐藤さんの歴史の解説が分かりやすいのは、歴史の裏にある、人々の思考の変化が分かりやすいから。

しかし、上記のことは、フランス革命の時代の話だけではない。

現在の日本においても、安倍政権はそれに近しいものがあった、と。

 

今を知るためにも、もっと、勉強したくなった。

歴史、宗教、経済、、、、どこまで勉強すると、点と点がつながるのだろうか。

私のなかでは、まだ、点が点でしかない知識がたくさんある。

点と点がつながって、初めて教養と言えるのだろう。

 

時間が欲しい。

もっといっぱい、本を読みたい、と思う。

もっと、勉強したくなった。