「ビジネスパーソンのための クリエイティブ入門」by 原野守弘

ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門
原野守弘 著
2021年2月1日初版発行
クロスメディア・パブリッシング
 
2021年3月に、アカデミーヒルズの今読むべき新刊書籍、で紹介されていた。
図書館で予約していたのが、半年たって回ってきた。
ずいぶん、人気だったようだ。

 

最初に出てきた言葉。
 
「人間は自らが愛するものことによって、形づくられる。」by ゲーテ
なんだか、ゲーテの言葉に良く出会う、今日この頃。。。。

megureca.hatenablog.com


 
著者の原野さんは、もともとは、広告代理店でセールスパーソンだったそうだ。34歳の時に、「クリエイティブ」する方に、「川」を渡ったという。「向こう側」と「こちら側」の両方を経験したからこその視点が、普通のビジネスマンに分かりやすいクリエィティブに関する本を書くきっかけになったという。
私は、本書を手にするまでは、原野さんのことはまったく知らなかった。でも、Docomoの「森の木琴」、Hondaの「Honda, Great Journey」、「POLAリクルートフォーラム」など、作品をみると、あ、、、これを作った人なんだ、という感じ。なんだかわからないけれど、心に残る作品を作られている人だ。

「森の木琴」は、私も見た時に、心奪われたのをよく覚えている。

youtu.be


 
本書のはじめに、原野さんは、次のように書いている。
”本書がフォーカスしているのは、何か新しいものを作り出すために、今を生きるために、そしてクリエイティブな問いを立てていくために、必ず求められることになる「人間という生き物が持つ習性」の理解なのだ。”
 
なるほど。
普通のビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門、ということだ。
そして、その中核には、本能的な「好き」があるみたい。
本書は、4つの章と、最後のまとめ「ものづくりを成功に導く7つの原理」から構成される。
横書きの単行本。190ページ。1580円(税別)
文字数は、少なめ。
余白多し。
おや?キャリアポルノの類か?と思いきや、ただのHow toでもなかった。
なかなか、面白かった。
 

第一章:感情に訴えろ
ハリウッド映画の最大のクライマックス、最高の演出は?「無言」という事例の紹介。なるほど、そうかも。語りすぎるな、と。
大脳新皮質がつかさどる「理性」への訴えより、大脳辺縁系がつかさどる「感情」への訴えが人を動かす、という話。
人は、心揺さぶられる時、理性より感情が動かされている。
広告(advertising)は、商品をたくさん売ることが目的ではなく、ブランドを好きになってもらうことが目的なので、感情に訴えかけることがより重要だという。
 


第二章: 「好き」というプログラム
好きが共感を呼び、共感が連帯を生む。
始まりは、個人の「好き」。
「好き」な人が集まって、それが組織的な、社会的な動きになる。
ビートルズは、ファンが好きな音楽を作ったのではない。彼らが好きな音楽をつくったら、ビートルズが好きなものに、ファンが共感した。そして、世界的にその共感は広がった。
巨大な社会現象でも、出発点は、「個人的な好き」という感情にすぎない。
だから、「好き」という感情は大切。
 


第三章:クリエイティブ必勝法
創造の3ステップ。
1 好きになる
2 好きを盗む
3 好きを返す
アイザック・ニュートンですら、「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです」 と、これまでの人類が積み上げてきた物の上に、自分の発見があることを認めている。
多くのものは、真似ることから生まれてくる。黒澤映画にインスパイアされたスターウォーズだってそうだ。
そして、パブロ・ピカソの「Good artists copy, great artists steal」(良い芸術家は真似をする。偉大な芸術家は盗む)という言葉を引用し、ただのコピーではなく、自分のものにすることの大切さを語っている。
自分のものにして、人類の新しい知的財産を積み上げることで返す、ということだ。
オリジナリティがあると思うなんて、傲慢だ、という。
わかる気がする。
 
第四章:「好き」が世界を動かす
人間は、whatではなく、whyに動かされる。
その一言に尽きるかもしれない。
 
最後に「7つの原理」としてまとめているところが、ちょっと流行りに載っている感じがしなくもない。。。。
大事な原理のようだが、私のこころに響いたのは、最後の一つ、
「愛と尊敬」
 
「いいもの」というのは、「愛されるもの」、ということ。
これは、おおいに共感する。
 
そして、第二章でもでてくるのだが、「いいもの」への審美眼は、「いいもの」にたくさん触れることで磨かれる。まさに、その通りだと思う。
かれは、それを「ディープラーニング」と言っている。人間の脳のディープランニングは、いいものにたくさん触れることだ。観ること、聞くこと、触ること、感じること、、、、実際に経験してみること。
 
良いものをつくりたいなら、良いものにたくさん触れること。
美味しいものをつくりたいなら、美味しいものをたくさん食べること。
 
きっと、良い文章を書きたいなら、良い文章にたくさん触れること、だろう。


クリエイティブ入門、というタイトルだけれど、根底にあるのは、
「人間は自らが愛するものことによって、形づくられる。」by ゲーテ
 
自分の上質世界を大切にしよう。 

そして、「好きを返す」ができたら、社会に何か返せるかもしれない。

自分の「好き」を大切にしよう。