「『ズルさ』のすすめ　　今を生き抜く極意」　ｂｙ佐藤優

「ズルさ」のすすめ　　今を生き抜く極意
佐藤優
青春新書
2014年12月15日　第一刷

2013年の「人に強くなる極意」の続きのような一冊。
佐藤さんがすすめる、ほんの少しだけ「ズルさ」を身に付けることのすすめ。

表紙にでかでかと、佐藤さんの写真。

なかなかのインパクト。。。

佐藤さんがあげられている「ズルさ」の例え。
”「お前嘘をつくな」といえば喧嘩になる。それを「お互いに正直にやりましょう」といえば特に角は立たず、相手も不快な思いをしない。表現を少し変化させるだけで同じ事柄をうまく伝えることができる。”
と、そんなこと。

第１～11章からなる一冊。

第1章　人と比べない
第2章　問題から目を背けない
第3章　頭で考えない
第4章　時間に追われない
第5章　酒に飲まれない
第6章　失言しない
第7章　約束を破らない
第8章　恩を仇で返さない
第9章　嫌われることを恐れない
第10章　人を見た目で判断しない
第11章　上下関係を軽んじない

どれも、タイトルをみただけでもそりゃそうだ、と思える。

そして、こういうことが出来るようになるための、ちょっとした考え方のコツ、みたいなものが書かれている。

いくつか、面白かったものを覚書。

第一章　人と比べない
「ニヒリズム」になれということではない。もしも、激しい競争の中にいるのであれば、その競争の世界とは違う、別の価値観の世界の自分も持つ。「複線思考」をすることで、人と比べる必要のない世界の自分になれる。
そして、「頑張れば報われる」は欺瞞だ、と佐藤さんはいう。
私も、それはホントだと思う。

頑張れば頑張っただけの結果は出るだろうけれど、報われるかどうかは、結局、本人がどう思うかだ。
そこにも、人と比べず、自分で自分に対して納得できるかどうかが重要、というメッセージがあると思う。

第3章　頭で考えない
「違和感」を放置しない。「違和感」に気づく直感が大事。
論理的に説明がつかなくても、世のなかには正しいこともある。社会は、実は論理ではない。
うん、これも、よくわかる。
人の行動だって、論理的でないから、行動経済学という学問がうまれたのだ。
人は、不合理にできている。

第5章　酒に飲まれない
そりゃそうだ。
佐藤さんは、ロシアでの外交官時代、ウオトカ、3本くらいは空けることが出来たそうだ。。。さすが。。。
でも、飲まれない。外交は酒に飲まれたら、絶対に務まらない。
外交だけではない。普通に人間として、酒に飲まれたら、、、、きっと何かを失っている。
酔っぱらわないように、、、気を付けよう、、、、。

第7章　約束を破らない
約束を破らないのは当たり前だけれど、約束は二重構造になっている、という佐藤さんの説明が面白い。
小さな約束は、大きな約束につながる、ということ。
大きな約束を達成したいなら、小さな約束も破ってはいけない。

日本がおかした、北朝鮮外交の失敗例をあげられている。

拉致被害者が、日本へ一時帰国した際、結局、蓮池さん達を北朝鮮へ返さなかった。それは、日本政府が約束を破ったということ。そして、その後、北朝鮮とは何も交渉できない状況になってしまった。全員帰国という大きな目標を果たすためには、最初の一歩の約束は、ちゃんと果たさないといけなかった。心情的に「拉致被害者を北朝鮮にもどすことなんてできない」というのはあったとしても、外交で約束を破ったら、その次はない、、、ということ。

なるほど、確かにね。

小さな約束を守れない人に対して、そのうち信用できなくなるのは、普段の私たちの生活でもあることではないだろうか。
遅刻の常習犯、いつもドタキャンする人、というのもそう。
そのうち、色々な信用を失っていく。

医師であるとか、職業柄、突発の仕事でドタキャンせざるを得ない、とかいうのはやむなしだけど、、、。

いつも、なにかしらの言い訳でドタキャン、、、っていう人、残念。

最近、私の周りにはそういう人はいなくなった気がする。

自然と、距離ができたのかもしれない。

佐藤さんは、「低信頼社会は発展しない」と言っている。やはり、社会は信頼で成り立っている。

約束は破らない。
小さい約束も大事にしよう。

とまぁ、色々と他にも面白いことが書かれている。
そして、「人に強くなる極意」と同じように、お薦めの本が各章で２冊ずつ紹介されている。　

また、読んでみたい本が増えていく。

「ズルさ」というと、ちょっと「ドキッ」とする言葉だけれど、佐藤さんの言わんとするのは、一歩引いて考える余裕を持つことの大切さ、ってことかな。

心に余裕を持つこと。