『メジャー・ホワット・マターズ』 by  ジョン・ドーア

メジャー・ホワット・マターズ
伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR
クライナー・パーキンス会長 ジョン・ドーア
グーグル共同創始者 ラリー・ペイジ (序文)
土方奈美 訳
日本経済新聞社
2018年10月15日 一版一刷
Measure What matters 2018
How Google, Bono, and Gates Foundation Rock the World with OKRs

 

友人が面白いと言っていたので読んでみた。
組織の目標達成のためのハウツー本。

 

裏表紙には、
”あなたが目標に向かって前進できないのはやり方が間違っているからだ。
「野心と想像力を最大限に解き放つ」
「やるべき時にやるべきことに集中する」
「見当違いな仕事を洗い出す」
世界レベルで戦うための
シンプルで確実な方法を
シリコンバレーの伝統的な
ベンチャーキャピタリストが
お教えします”
とある。

 

著者のジョン・ドーアは世界的ベンチャーキャピタル、クライナー・パーキンスの会長。1980年にクライナー・パーキンス・シールド&バイヤーズ(KPCB) に加わり、 AmazonGoogleTwitter、 ネットエスケープ など数多くの世界的な成功企業に初期段階から投資。投資先が大企業へと成長を遂げるなかで、時価総額世界2位、3位の企業を生み出した。オバマ財団及びONEの理事を務めている。

 

表紙に、わざわざラリー・ペイジの名前を載せているのは、OKRsをラリー・ペイジに教えたのがジョンだったとしても、やはり一般の人には知名度が低いからか?
私は、ジョン・ドーアのことをこの本で、初めて知った。

 

本書のキーワード:OKRs
Objectives and Key Results (目標と主要な結果)

 

ラリー・ペイジが、たったの2ページだが、序文を寄せている。
19年前、グーグルを創業したときに、この本があればよかった。”と。
実施には、ラリー・ペイジセルゲイ・ブリンの二人は、ジョンからOKRsを教えてもらって、グーグルは大きく育った。そのお礼があるから、この序文を書くのだと言っている。

 

アメリカの啓発本らしく、書かれていることの半分以上はエピソードだ。


OKRsの生みの親ともいえる、インテルの三人柱の一人、アンディ・グローブの話。
アンディ・グローブは、インテルでの結果をだすために、ピーター・ドラッカーの手法を学び、MBO(Management by Objectives)を取り入れた。でも、時代とともにMBOの限界がみえてきて、OKRsに切り替えたということだ。

MBOとOKRsと何が違うんだ???
というのが、私には、クリアにはわからなかった。
MBOKPI(Key perfomance indicaters)を組み合わせたのが、OKRsという感じだ。
ただし、OKRsは、報酬とは無関係のところで使う、という点がMBOとは違う。評価、人事考課は別に考えるというのが、具体的にイメージしにくかったが、MBOのその欠点はわかる。
リスクをとった目標を設定して失敗するより、安易な目標で達成したほうが、見た目には点数が高くなり、評価される。だれも、チャレンジングな目標を立てなくなった弊害は、私もかつての組織で経験がある。ただ、それは、KPIの設定が良くなかったのであって、やはり目標に対する結果と報酬を結びつけない目標管理というのは、実体としてどう活用できるのかが、今一つ想像できない。

 

日本語にすると、performance と Resultsが同じような「結果」とか「成果」と解釈されるので、KPIとKRの違いがイメージしにくいのかもしれない。また、英語の解釈が日本では日本流に解釈されて、MBOといっても数字一辺倒、という活用だけではないようにも思う。

 

一応、著者の解釈でのMBOとOKRの違いが、一覧になっている。

 

MBO:「何を」、年次、非公開・タコつぼ化トップダウン報酬と連動、リスク回避

 

OKR:「何を」「どのように」、四半期ごと・月次、公開・透明性ボトムアップあるいは水平展開、報酬とほぼ完全に分離、積極的、野心的

 

やっぱり、従来のMBOの活用の仕方が違うという事のように思う。

MBOでも、公開することもあれば、リスクを負ったチャレンジングな目標を立てることもできる。

OKRsを報酬と結びつけないのであれば、報酬は考課者が独自判断するのだろうけれど、それはそれで、透明性があるのか??と懐疑的に思わなくもない。

 


2018年の本、すごく画期的なマネジメント手法とは思わないけれど、経営、組織マネジメントに大事なことはたくさん書いてある。

 

覚書。

アイディアを思いつくのは簡単。実行がすべてだ

 

・O(目標)は、「何を」達成すべきか。具体的に方向性を示すもの。
 KR(主要な結果)は、目標を「どのように」達成しつつあるかをモニタリングする基準。具体的で、時間軸があり、測定可能(数字化)であること。

 

・「あなたが何を知っているかなど、どうでもいい。何より重要なのは、実行である

 

ドラッカーが示そうとしたもの
 「個人の強みと責任感を発揮させつつ、同時に全員のビジョンと努力の方向を一致させ、チームワークを醸成し、個人の目標と全員の幸福を調和させるような経営の原則」

 

・起業家の三つの合言葉
  「問題を解決せよ」
  「シンプルなプロダクトを作れ」
  「ユーザーと対話せよ」

 

スティーブ・ジョブズの言葉
 「優秀な人材を採用するのは、指示して何かをやらせるためではない。何をやるべきか、指示してもらうためだ」


・進捗トラッキングの重要性
 目標を単に明文化するだけでも、それを達成する確率は高まる。目標を同僚と共有し、進捗をモニタリングすれば、確率はさらに高まる。

 

・哲学者・教育者 ジョン・デューイの言葉
我々は、経験からは学ばない。経験を振り返ることで学習するのだ

 

・数字だけに頼るマネジメントの限界を悟ったピーター・ドラッカーの言葉
「マネージャーが果たすべき第一の役割は人間関係に関わるものだ。他者との関係、相互の信頼感の醸成、コミュニティの創出である」

 

シェリル・サンドバーグ
話すことで考え方が変わり、行動が変わり、組織が変わることもある

 

・フィードバックの重要性
 人事主導ではなく、適宜リアルタイムに、様々な方向から提供されるフィードバックが、成熟した組織を生む

 

・「協力すること、すなわち他者とつながる能力こそが、成長とイノベーションの原動力だ」 

 

などなど、、、。

事例が多くて、読み進めるのにややじれったさを感じるが、そこをさらっと読めば、簡単に読める一冊。

 

時々、マネジメントというものを見直してみるのに、ぱらぱらめくってみるといいかもしれない。

 

やっぱり、組織は人だ。

なんだかんだ言って、人だ。

 

難しい目標管理制度なんて作らなくても、優れたリーダーには、自然と優秀なフォロワーがついていく。制度は継続性に重要だが、問題はどう運用するか実行がすべてだ。

 

優れたリーダーとは?

自分の使命のわかっている人。

そして、人のこころのわかる人。

永遠の課題だな。

 

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『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKRs』