『この社会の歪みと希望 』 by  雨宮処凛(あまみやかりん)、佐藤優(さとうまさる)

『この社会の歪み(ゆがみ)と希望』

雨宮処凛(あまみやかりん)、佐藤優(さとうまさる)

第三文明社

2021年6月30日 初版第1刷発行

 

雨宮処凛さんは、1975年北海道生まれ。作家・活動家。反貧困ネットワーク世話人。高卒からフリーターを経て、2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版ちくま文庫所収)でデビュー。2006年から貧困格差の問題に取り組み、『生きさせろ!難民化する若者たち』(太田出版ちくま文庫所収)で JCJ 賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。

 

知らなかった。多分、初めて彼女の本を読んだ。

佐藤さんとの出会いは、10年以上前のことで貧困問題にとりくんでいた雨宮さんを佐藤さんが適切なアドバイスで応援してくれたのがきっかけとのこと。「官僚はこう考える」「こういうふうに訴えると物事は動きやすい」などと。猫を愛しているところが佐藤さんと一緒!

 

二人の対談が単行本になっている。

 

目次

第1章 コロナが浮き彫りにした社会の歪み

第2章 教育という光

第3章 「相模原事件」が突きつけるもの

第4章 貧困問題と政治の現場から 

 

第一章では、コロナの発生でこれからの社会へ影響を与えるであろう様々な要因に関する話。ペストやスペイン風邪のように感性症そのものとしての健康への影響、国民への心理的影響、EUで健在化しているような国際関係への影響、経済への影響。

やはり、何か起こると、社会的弱者への影響が大きくなってしまう。コロナ禍では、非正規雇用で働く人への影響が大きく、非正規雇用の比率が高い女性への影響が大きいという。

そんな中、支援活動をしている雨宮さんへの佐藤さんのアドバイスは、官僚の内在的理論からして、「与党」に組している人に頼るべきだと。かつ、知事などトップと直接コンタクトをとること。責任の押し付け合いになったときでも、トップ、与党の人は逃げるわけにいかないものだと。

官僚の内在的論理として、県の職員は市議が区議が要請しても動かない。自分の人事や評価に影響がないから。県の事業なら、知事、あるいはそこを選挙区にしている国会議員に働きかける、それが大事だと。

なるほど、ごもっともだ。

10万円の定額給付金に関する対話もでてくる。やはり、あれは全員一律にしてよかったと。所得制限などを設けていたら、貧困とそうじゃない人との差別につながっていたと。

結果的に、それぞれの家庭で、それぞれの有効な使い方になったのならば、それでよかったのではないかと思う。

私は10万円で、自宅用眼鏡を新調した。在宅勤務が増えて、さらにパソコン使用時間が増えて、、、有効な活用だったと思っている。眼鏡屋さんの経済も回ったと思うし。

 

第二章の教育に関しては、佐藤さんのご両親がどうやって佐藤さんを教育したのか、ということが語られる。佐藤さんのご両親は戦争体験世代。勉強は、稼ぐためにするのではなく、「生き残るための力」をつけるためのもの。だから、15歳でロシアへの一人旅にも行かせてくれて、それは佐藤さんにとってはとてつもなく大きな基盤となっている。

雨宮さんの話で、無戸籍の子は、義務教育がうけられないのだという事を、初めて知った。というか、そりゃそうなのだろうけれど、無戸籍の子が日本にそんなにたくさんいたのかと、、、。

 

第三章は、津久井やまゆり園」のこと。佐藤さんは前からこの事件については、植松被告の思想はヒトラーの思想であり、極めて危険。事件をもっと根底から調査すべきだと言っている。雨宮さんは、裁判の傍聴もしていて、『相模原事件・裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害ヘイト」のあいだ』(太田出版)という本も出されている。

一人の頭のおかしい人の犯罪、とおもっていたのだが、そういう簡単なことではないようだ。最後まで、植松は自分がやったことは正当であるといい、ネットにはそれを支持するコメントも多数あったそうだ。いまでもあるのかもしれない。

また、施設そのもののありようも課題として取り上げている。事件後、別の施設に移った障がい者の中には、やまゆり園では暴れるからという理由で拘束されていたのに、楽しく他の入所者と協働作業をする様子が見られているという。。。

複雑だ。

 

雑誌の対談集みたいな感じで、さーーっと読める。内容は、さらっと、っというものではないけれど、今、現在進行形で起きている社会の問題をみるには、参考になる一冊だった。

 

生きづらい社会は、生きやすい社会に変えていきたいと思うけど、、、。

自分のできることを粛々とやるんだろうな、、、と思う。

消費活動は、社会経済を回すプラスの活動だ。

無駄遣いはしないけれど、自分がワクワクすることにはお金を使おう。

お金の使い方に、その人の人間性がでる、というけれど、

将来のためになることには、お金を使おう。 

快適な生活のために、お金を使おう。

 

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『この社会の歪みと希望』