『佐藤優の地政学リスク講座』 by  佐藤優

佐藤優地政学リスク講座 一触即発の世界
佐藤優
時事通信社
2018年1月22日初版発行

 

地政学をテーマで図書館で借りてみた。

 

目次
第1章 米朝開戦の可能性
第2章 北朝鮮金正恩のしたたかな戦略

第3章 どこまで進む「爆風トランプ」
第4章 誰も知らない北方領土交渉前史
第5章 北方領土問題解決の道筋
第6章 不透明な時代を読む技法

 

第1章から4章は、(一社)内外情勢調査会での著者の講演を元に再構成
第5章は、著者と名護市拓殖大学教授との対談
第6章は、(公財)新聞通信調査会での講演を元に再構成・加筆

ということで、アメリア、北朝鮮、ロシアに関する地政学、リスクの本。

 

262ページのちょっと小さめの単行本。比較的、さらっと読める。

 

アメリカについては、トランプのアメリカ第一主義は、昔の孤立主義のような姿勢に戻ったということ。真珠湾攻撃の前に戻した、という事。これは、『大国の掟』での説明と同じ。

megureca.hatenablog.com

また、国内で国民に呼びかける時には、「神」という表現を使い、歴代の大統領、カトリックでもプロテスタントでも、キリスト教徒とユダヤ教を区別しない「神」という言葉を使っている、ということ。聖書を引用するなら、旧約聖書から。

ちなみに、トランプ元大統領は、プロテスタントキリスト教で、プレスビテリアン(長老派)というカルバン派の教派。「天国のノート」にあらかじめ名前が書かれていて、自分の能力を神様の為に一生懸命働いて、成果を還元するという生き方。不動産王として、アメリカのためにつくした自分、世のため人のために自分は大統領にえらばれたのだと信じている。神がかり的であるという事。。。

ちなみに、20世紀以降で長老派のアメリカ大統領は、ほかに、ウィルソン大統領第一次世界大戦後、国際連盟をつくろうとした)と、アイゼンハワー大統領(ノルマンディー上陸作成指揮者)。長老派は、逆境につよい、という事らしい。

佐藤さんは、イスラエルアメリカ大使館をエルサレムに移すなんてとんでもないことだ、といっていたが、2018年5月、トランプは実行してしまった。第5次中東戦争を誘発するといっていたが、中東の混乱はもうなんだか訳が分からなくなっている。

 

北朝鮮については、金正男がなぜ暗殺されたのか、金正恩にとって、異母兄弟の兄は、どういう存在だったのか、ということが述べられている。トランプ大統領の出現で、本気でアメリカが北朝鮮のミサイルや核兵器を破壊しようとしたら、ヒューミント(人によるインテリジュンス)を使うはず。内部をよく知っている兄が生きていると危ない、、、と。
また、金日成の言葉だといって「遺訓政治」をするにあたり、言葉はどんどん勝手に追加されていく、、、ということ。やりたいことはなんでも、金日成の言葉が新しく見つかったことにしてしまう。昔を熟知している人がいるとこまるから制裁。異常に残酷な処刑と見世物にする。。。。。。昔を知っている人がいなくなったら、遺訓政治からの脱却。。。

 

本書の半分は、北方領土関係。あまり詳しく理解していなかったけれど、日本にもロシアにも、言った言わない、、、、解釈、、という駆け引きがあったということ。
1951年のサンフランシスコ平和条約、2条C項で、
「日本国は、千島列島ならびに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部およびこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」(吉田茂内閣)
と言っている。
でも、サンフランシスコ平和条約ソ連は署名しなかった。会議は参加したものの署名しなかったのだ。
だから、日本としては、その後、ソ連に対して「放棄するなんて言っていない」と。
その後、日本は「北方領土」とか「固有の領土」という言葉を持ち出し、北方領土ソ連に不法占拠されている、という立場をとる。
実際、1945年、日ソ中立条約を破ってソ連が北方4島を不法占拠したのだ。それは、史実だ。
その後、1956年 日ソ共同宣言で、歯舞群島、色丹等の「引き渡し」に関する合意が成される。日本医してみれば「返還」で、ソ連にとっては「贈与」。人の土地を盗んでおいて、「贈与」とはなんだ!!というところだが、ここは、「引き渡し」という言葉で落ち着く。2島だけど。
だが、その後、1960年、日本とアメリカのあいだで、新安全保障条約が結ばれる。そうするとソ連としては、北方4島にアメリカ軍基地ができたらとんでもない!!ということで、ふたたびかたくなな姿勢に、、、。
という、歴史があるなか、、、しばしの凍結。。。
そして、ソ連崩壊、プーチン政権、、、で今に至る、、、と。

 

国際情勢といっても、日常生活に直接かかわりがない限り、なかなか、注視することがない。北方4島に親族がいれば、日常だろうけれど、普段は何か変化があってニュースにでもならないと、なかなか気に掛けることがない。北朝鮮拉致被害者だってそうだ。ニュースを聞けば、そんなとんでもないこと、、。絶対に解決すべきだ!と思うけれど、自分がなにか行動をとるわけではない。。。。どちらも、関係する親族の高齢化は進み、家族と再会できないままに亡くなってしまう方が、これからも増えてしまうかもしれない。
無力だなぁ、、、と思う。

その分、自分や自分の周りの人を大切にしないとね。
大切にしたい人が近くにいるというのは幸せなことだ。

 

第6章 不透明な時代を読む技法 の中で、佐藤さんは、三つの時間軸ポストモダン」「モダン」「プレモダン」とあるが、その三つが混ざり合っているのが現在の国際情勢を読む難しさだといっている。
ポストモダン」の時代は、人・物・金の移動が自由になった。でも、「プレモダン」と言えるナショナルなものの傾向も強くなっている。日本と韓国、日本と中国の国家関係がそうだ。文化、観光も含めて貿易相手としては重要だけど、「プレモダン」を考えると反日が台頭する。中東やロシアでいえば、「宗教」という「プレモダン」なものが問題の根幹にある。人々は、グローバルに交流可能な時代になったにも関わらず。


だから、「プレモダン」を学ぶのは非常に重要だ、という。宗教とか、中世的なものの考え。小保方さんのSTAP細胞騒動は、いってみれば錬金術であり、研究室の人はそれを信じたのだろう、と。不可解なことでも、錬金術みたいな思想と思えば、理屈をつけることができる。
また、論理的な能力。言語的な論理と非言語的(数学的)な論理。双方から、解析できる力をつけると、ぐっと強くなる、と。
加えて、外国語の力英語は当然として、別の外国語能力。その国のことを本当に理解できるのは、その国の言葉で、、、ということだろう。
よくわかる。日本のことを表現するには、日本語が適している。
ロシアのことを表現するならロシア語であり、中国のことを表現するなら中国語なのだろう。
いまのところ、、、英語以外の外国語を必要とはおもっていないから、手は出さないと思うけれど、、やっぱり、言葉は大事だ。
せめて、英語の勉強を続けようと思う。

 

地政学というのは、横(空間)にも縦(時間)にも広くって、だから複雑なものなのだと気が付かされた。さきに、もっと歴史を学ばないとダメかなぁ、、、。歴史だけみて、現代を見なくてもダメだろうし、、、。

ま、パラレルに、色々と読んでみよう。

そのうち、点と点がつながることがある。

それが、知るという事の楽しさ。

 

難しくても、簡単でも、読書は楽しい。

 

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