『激動 日本左翼史  学生運動と過激派 1960—1972』by 池上彰、佐藤優

『激動 日本左翼史  学生運動と過激派 1960—1972』
池上彰佐藤優
講談社現代新書

2021年12月20日 第一刷発行

 

本屋さんで、インパクトのある二人の顔写真の表紙で、平積みされていた。池上さんと佐藤さんの本だし、買ってみた。

本書は前作があったらしい。『真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945~1960』の続きという位置付け。

 

左翼というものに、興味があるわけでもなく、、、、。買ってしばらく積読だったのだけど、読み始めた。
おどろおどろしく、、、、、へぇ、、、、、っと。

 

対談形式の著書だが、最後は、
「次に出る第3巻では、その後の日本の左翼運動の動向、あるいは社会党の没落について見ていきましょう」という、池上さんの言葉で締めくくられる。

まだ、続きがあるらしい。本書が1960~1972なので、1973~という本になるのだろう。

 

目次
はじめに
序章 「60年代」前史
第1章 60年安保と社会党共産党の対立(1960~1965年)
第2章 学生運動の高揚(1965~1969年)
第3章 新左翼の理論家たち
第4章 激化する新左翼 
おわりに

 

章ごとに、細かな項も記載されているのだが、 なんというか、毒々しいというか、あまり目にしたくないというか、、、過去のものとして葬りさってしまいたいような、、、そんな文字が並ぶ。

それを、あえて二人が対談し、著書として残す意図は、やはり、間違った歴史を繰り返してはいけない、ということを伝えたいからなのだろう。
日本の資本主義の体制には、たしかに貧困、格差など、様々な問題がある。でも、共産党への全面忠誠を強いたり、信仰を要請するようなスターリン主義は、あってはならないと言っている。だから、いまここで、新左翼を振り返る、ということ。

 

章ごとに、年表もついていて、歴史の勉強という感じ。左翼の動きから、歴史を振り返る、と言った感じ。

そもそも、左翼って何???

 

広辞苑によれば、
【左翼】
①左の翼
②隊列の左側の部分
フランス革命後、議会で議長席から見て左側の席を急進派ジャコバンが占めたことから、急進派・社会主義共産主義などの立場左党。左派。
④野球で本塁から見て左側の外野

と、、、、。 
本書でいう左翼は、もちろん③のこと。


フランス革命のあとのジャコバン派と言えば、ばらまき政治のジロンド派を追放したあとに議会を握った急進派。反対派を多数処刑し恐怖政治をおこなった政党だ。佐藤さん曰く、ナチスに似ているとも言っている。
それが、左翼・・・。

 

そして、
新左翼
イギリスで既成の左翼に対する失望から1950年代に起こった左翼の政治運動。マルクス主義の新解釈(ネオ‐マルキシズム)やトロッキー主義など種々の傾向を含む。雑誌「ニューレフト レビュー」を発行。同様の運動がフランス・ドイツ・アメリカ・日本など各国で起こった。

と。

トロッキー主義とは、、、と深ぼっていくときりがないのだが、端的に言えば、スターリンのロシア一国社会主義論を否定して、他の諸国と一緒に社会主義革命を起こすべきだという考え。激しいスターリン主義にたいして、少し弱腰だ、、という批判的な意味でも使われた言葉。ロシアについては、まだまだ理解が足りないので、また、別の機会に覚書としたいと思う。

 

本書の最初には、新左翼セクトの組織系図というものが載っている。これまた、複雑で、、、文章で説明できない、、、から、図になっているのだろう。

日本の新左翼と言われる源流は、当時の日本社会党日本共産党にあった。
労農派マルクス主義が、日本社会党寄り。
講座派マルクス主義が、日本共産党寄り。

著名なところで言うと、
宇野弘蔵柄谷行人が、労農派
丸山眞男が、講座派

1960年代に学生運動があったことは知っている。ベトナム反戦運動や、安保理への反対などなど、、、、。

本書では、その活動がいつの間にか「内ゲバ」となり、対立する党派のメンバーを襲撃する、内部でリンチするなど、、、、明らかに間違った方向へ進んでしまった経緯が話されている。
構造としては、社会党新左翼が、共産党に対する不信となり、対立が激化していった。

革マル派全学連中核派全学連の対立。

共産同から派生した赤軍派による数々の事件。
よど号ハイジャック事件、山岳ベース事件、あさま山荘事件、テルアビブ空港乱射事件。

名前は聞いたことがあるけれど、その中身はよくわかっていなかった。

とにかく、ちょっと過激な若者が起こした、悲惨かつお粗末な事件、、、とおもっていたのだけれど、そんな簡単なことではない、ということらしい。だから、本書を発行したのだろう。

 

年表によると、あさま山荘事件が起きたのは、1972年2月16日。私は3歳だったわけだが、もちろん、そんな事件はライブ記憶としてはない。あとから、TV番組や、新聞などメディアで映像としてみて知っているだけ。


あさま山荘事件で人質を取って立ちこもる前に、29名いた連合赤軍メンバーは、12名が山岳ベースで殺害されて(仲間内のリンチ)、4名が脱走、8名が逮捕されて、この時には5名しか残っていなかった。その5人が、軽井沢レイクニュータウンにあった山荘に侵入し、建物内にいた管理人の妻を人質にとって立て籠った。それが、あさま山荘事件
立て籠る連合赤軍と機動隊の攻防は約10日間続き、最後は巨大な鉄球が山荘の屋根と壁を破壊、そこに催涙弾が投げ込まれるとともに機動隊が突入。銃撃戦。
この時に、作戦を指揮していた当時の後藤田正晴警察庁長官(のちに衆議院議員)が、連合赤軍メンバーが革命に殉じた英雄とされないように、全員を生け捕りにするように厳命した。機動隊員2名が被弾で殉職。人質は無事に救出され、連合赤軍5人も死傷することなく逮捕。
この一連の突入劇は、テレビで生中継された。
国民はテレビの前にくぎ付けになり、瞬間視聴率は89.7%だったそうだ。。。。


と、本書の主題は、なぜ、このような事件が起こるに至ったのか、ということなのだが、それは、文字に起こすのもおどろおどろしいので、、、覚書はやめておく。

でも、思い込み、相手への不信、不寛容、リンチ、、、。
と、日本人がそんなことをしたのかと、、、信じがたい理不尽な犯罪が繰り返された

池上さんは、まさに大学生の時代だし、佐藤さんも記憶にあるという。

何かを信じすぎるあまりの不寛容。
洗脳といえばそうかもしれないけれど、怖いな、、、と思う。

濃い本だった。。。。 

 

ほんの50年前のことだ。

明るい未来はどこへ行った?!?!という感じ。

 

でも、史実をしらないって、怖いな、と思った。

学校でならう歴史は、全然頭にのこらなかった。

特に、宗教や政治が絡むと、その背景にある重要なストーリーは、教科書には書かれていないような気がする。

歴史は、それが今につながっている意味を考えられる年齢になって、初めて理解できるのかもしれない。

だから、大人になってから歴史の本を読むのは、学び直しになるし、楽しいのだ。

 

歴史を振り返るのは、未来のため。

歴史は繰り返される。

でも、決して繰り返してはいけない歴史もある。

だから、なぜ、そうなったのか、そのストーリーを理解するのが大切。

 

う~~ん、重い本だったけど、、、勉強になった。

次作がでたら、また買うかもしれない。

 

読書は楽しい。

 

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『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972』 池上彰佐藤優