『ミミズと土』 by  チャールズ・ダーウィン

ミミズと土
チャールズ・ダーウィン
渡辺弘之訳
平凡社
1994年6月15日 初版第1刷 

 

森田真生さんの『僕たちはどう生きるか  言葉と思考のエコロジカルな転回』で出てきた本。

megureca.hatenablog.com



図書館で借りてみた。

文庫本。

 

進化論のダーウィンの最後の著書。
The Formation of Vegetable Mould, Through the Action of Worms, With Observation on Their Habis. 
直訳すれば、「ミミズの生態観察に基づく、ミミズ活動を通じた植物性腐葉土の形成について」という論文、という感じだろうか。

 

表紙には、
「土壌を改良し、景観を形作るミミズの働き・生態を初めて明らかにしたダーウィンの古典的名著。本書には『小さな動物に託された大きなテーマ』(スティーヴン・J・グールド)が隠されている 。」
と。

 

まさに、ミミズの生態観察記録。地味に興味深い。ミミズの糞が土壌を作っているということ。目のないミミズは、どうやって食べ物をたべて、どうやって巣穴をつくり、どうやって生きているのか。。。そんな観察日記と考察。

 

目次
まえがき
第1章 ミミズの習性
第2章 ミミズの習性(つづき)
第3種 ミミズによって地表に運び出される細かい土の量
第4章 古代の建造物の埋没に果たしたミミズの役割
第5章 土壌の浸食へのミミズの活動
第6章 土壌の浸食(つづき)
第7章 結論

 

ミミズに、色々な餌をやって嗜好をしらべたり、地面につくる巣穴からどんな時に出てくるかとか、巣穴の入り口をどうやって蓋をするかとか、、、、。

ミミズは、雑食で、ホントに何でも食べるらしい。キャベツやら、腐ったキャベツ、、、生肉、仲間の死骸、、、色々与えてみて、食べるかどうかを観察している。この観察だけなら、夏休みの自由研究にできそうだ。

いや、、、最近、ミミズをみかけないな、、、、。昔は雨上がりのアスファルトでよく干からびていたものだけど、、、、。


ちゃんと、実験をしている。そして、観察をしている。
その一つ一つも、面白いと言えば面白い。

科学の基本だ。
こんなことを、真面目に観察したのか、、、、と思うような。
光はどう感じているか、震動はどうか、音はどうか、、、、、。

 

原文がダーウィンによって書かれたのは、1881年最後の著書ということ。そして、本書は、1982年にダーウィン没後百年の記念行事の際に、 スティーヴン・J・グールド(アメリカの古生物学者、進化生物学者科学史家)がよせた序文を解説として付け足した一冊。底本は、1904年刊のマレー社版だそうだ。
古すぎて、原書は絶版で手に入らなかったらしい。

 

ダーウィン自身は、まえがきで、
この主題は取るに足りないものに思えるかもしれないが、やがてわかるように、かなり興味深い問題を含んでいる。〈法は些細なことに関わらず〉という格言は科学には通用しないのである。
と、書いている。

つまり、科学は些細なことにこだわるべき、ということか。

たしかに、ただのミミズの本である。でも、執拗に色々実験、観察を重ねている。。。そこにどんな壮大な主題があるのか??私にはよくわからなかったので、解説に頼ってみる。

 

 スティーヴン・J・グールドによれば、
「 この本は実は彼の推論の原理の密かな要約なのである。彼は生涯を賭けてこの原理を見つけ出し、それを用いて一人の人間としてはこれまで誰もなし得なかったような最大級の自然観の変革を成し遂げたのである。ダーウィンのミミズへの関心を分析することによって、彼がおさめた全般的な成功の根源を理解することができるかもしれない。 」
ダーウィンの最大の業績は、歴史を復元しようとする科学(進化論のような)のために有効な推論の原理を確立したことにある」

 

たしかに、進化論というのは、過去を遡って考える科学だ。目の前で実験できることではない。残っている、今ある事実から観察し、推論するしかない。

この本は、ミミズの習性に関する論考である。そして、その論考を導くために、いかに科学的な方法で正しく観察し、歴史を考察するにいたるか、ということ。

 

いきなり、ミミズから歴史???と思うだろう。

そうなのだ、「第4章 古代の建造物の埋没に果たしたミミズの役割」というところからは、ミミズの働きによって、土壌が掘り起こされ、緩んだ地表はたわみ、建物は傾斜、さらには埋没していく、という考察をしているのだ。ミミズが古代の建物を大事に埋葬してくれた、とでもいおうか。

ミミズは土を食べる。ミミズが糞をする。ミミズの糞が、土を作る。それは、地球上の表土を掘り返すこと。

たしかに、壮大な話なのだ。


最初、読み始めて、変な本、、、、と思った。でも、観察日記として面白いな、と思った。
そして、話が古代建設物の話に及んだ時、はぁぁ???まじか??と思う。で、読み進むと、ははん、そういう論拠か!とちょっと膝を打ちたくなる感じ。

 

解説を読んで、はじめて、その深さというのか、話の展開の意味が分かった気がする。

面白い本。


最初に解説を読んでから、本文を読んだ方が楽しめるかもしれない。
あるいは、解説をよんだら、もう一度読み直す。

そんな楽しみ方のできる一冊。 
古典は、深いなぁ、、、。

 

のどかな休みの日に、緑の公園で読むと、もっと楽しめる一冊、って感じ。

観察。

見る。考える。

すべての思考はそこから始まる。

だから、旅に出るべきなのだ。

見るべきなのだ。

 

変な本、とおもったけど、けっこう、すごい本なのかもしれない。

ダーウィンって、やっぱり偉人であり、変人だ。

 

たまには、こういう古典もいい。

読書は楽しい。

 

f:id:Megureca:20220222084205j:plain

『ミミズと土』 チャールズ・ダーウィン