『近代の終わり 秩序なき世界の現実』 by  大野和基 インタビュー・編

近代の終わり 秩序なき世界の現実
大野和基 インタビュー・編
PHP新書
2021年12月28日 第一版第一刷

 

図書館で「ジョージ・フリードマン」で検索をかけてきて出てきた本。日本人ジャーナリストの大野さんが、様々な外国人の専門家にインタビューしている。
比較的新しい本だし、さらっとよめる。なかなか面白かった。

 

インタビューの相手は、8人。それぞれの専門分野のインタビューなので、8種類の話題。

著者の大野さんは、国際ジャーナリスト。1955年兵庫県生まれ。東京外国語大学英米学科卒業。1979~1997年渡米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学基礎医学を学ぶ。その後、現地でのジャーナリストとしての活動を開始。国際情勢の裏側から経済まで幅広い分野の取材執筆を行う。 

私は、多分、大野さんの本は初めて。インタビューなので、大野さん自身の考え方は全面に出てきていないけれど、選んだトピックが、彼の興味ということなのだろう。

 

目次
1 ブライアン・レヴィン  アジア人への暴力と憎悪の民主化
2 カート・アンダーセン 「ファンタジーランド」と化すアメリ
3 ジョージ・フリードマン  北朝鮮の核攻撃に弱い国はどこか
4 イワン・クラステフ  不自由主義的覇権は幻想だった
5 アダム・トゥーズ  パンデミックが加速させた米欧の分断
6 ヴァレリー・ハンセン  外国貿易反対派の抗議の歴史
7 ジョージ・エストライク  健常者優位主義を乗り越えられるか
8 ディビット・ファリアー  地球の大都市が化石になる日 

どのトピックも、それなりに興味深い。


コロナが始まって以来、アメリカのヘイトクライム、中年のアジア人への無差別の攻撃は、増えている。アメリカでは2021年5月に、ヘイトクライム防止のための法案が出来たらしいが、やはり予防が大切なのだろう。弱そうに見える人を攻撃するなんて、、、残念だ。まことに遺憾。まだまだ、解決への道のりは長い、、、という話。

 

ジョージ・フリードマンへのインタビューのテーマは地政学
海に囲まれた日本は、やはり、海上交通の確保が重要な課題で、軍事力の強化も必要だろう、という話。北朝鮮が核保有国である以上、核の保有も検討にいれるべきだろうが、他国にくらべて核保有への道ははるかに困難だろう、と。。。そんなの、わかっとるわい!って感じ。ないでしょ。核保有
「核」と聞くだけで拒否反応してしまう。。。やはり・・・・。核保有なんて、、、、。思考停止。。。やっぱり、核兵器のない世界にしたいと思う。

今、ロシアがウクライナ原発施設を攻撃していることは、世界中の人たちにとって脅威のはず。核兵器も、原発もなくせればいいと思う。
また、アメリカにおける政治上の分断の話。経済成長の波からこぼれ落ちてしまった衰退階級がトランプを支持し、テクノクラシーと言われる支配階級(今も儲かっている人たち)と反発しあう構造は、バイデン政権になってもしばらく続くだろう、と。そりゃそうだ。皆の生活が改善しない限りは、、、。改善したら改善したで、また次の欲望がわいてくるのだろうけれど、、。

 

他、興味を持ったのは、
6 ヴァレリー・ハンセン  外国貿易反対派の抗議の歴史
7 ジョージ・エストライク  健常者優位主義を乗り越えられるか


ヴァレリー・ハンセンは、インタビューの中で唯一の女性。グローバリゼーションを歴史の視点から見ると、1000年前から始まった、という自説を展開。面白い。
歴史の段階でみれば、1970年代になって、だれもが自由に海外に行くようになってグローバリゼーションが拡大した、というのは誰もが認めるところ。それより以前というと、大航海時代15世紀~17世紀、という見方が多い中、彼女は、1000年前、という自説を説く。宋の時代。バイキングの時代。なかなか面白い。
確かに、1000年前から人々は自国以外に領土や物資を求めて旅していたのだ。それがグローバリゼーションの始まり、という説に、ちょっと共感。1000年前というと、鎌倉時代、って感じ。日本には仏教が入ってきた。たしかに、日本も海外の文化で変わっていった時代だ。

 

ジョージ・エストライクは、詩人で、ダウン症の娘を持つ。娘が生まれたことで、健常者、障害者、という枠へのモノの見方が大きく変わった、という。
そして、出生前診断の是非の話へ。
私は、以前、産婦人科の医師による出生前診断についての講演を聞いたことがある。彼は、出生前診断は技術の問題ではなく、倫理の問題だ、というようなことを言っていた。高齢出産で出生前診断をする妊婦は多いが、やはり優勢思想につながるところもあり、親にその結果をどう受け止めるのか、熟考できないのであればすすめられない、というようなことを言っていた。
そもそも、新しい技術によって可能になったNIPT(新型出生前診断は、羊水検査と違って染色体異常があると必ずわかるわけではない。それも、日本ではNIPTで染色体異常の可能性が高いと言われた妊婦の80%は、羊水検査をせずに中絶を選んでいるそうだ。さらに確定診断で染色体異常が判断すれば、90%の確立で中絶を選んでいると。日本は他国に比べて中絶を選ぶ確率が高いのだそうだ。日本の社会が、いかにダウン症の子供を持つことに否定的か、ということが指摘されている。
このインタビューでも、2016年相模原市「やまゆり園事件」でおきた知的障害者施設殺傷事件のことが、触れられている。人の命を、勝手な価値観で軽視する。あってはならないことだ。

 

だいたい、障害も含めて、人はそれぞれに個性がある。それだけのことじゃないか。。。たしかに、常に介護が必要な重篤な障害をもつことは、大変かもしれないけれど、それと命の重さに何の関係があるのか。命は、命だ。

 

そして、障害を理解することの一番の近道は、その人と一緒に過ごす時間を持つことだという。だから、障がい者を分けて分離教育をするのではなく、一緒に学んだ方がいい。それは、本当にそう思う。共感。

大人になってからも、障害のある人が身近にいると、その障害に対する理解が深まるきっかけになる。

全盲の弁護士、大胡田誠さん(ドラマにもなった『全盲の僕が弁護士になった理由(わけ)』の著者)と、実際に会ってお話をしたことがあるのだけれど、普通に話して、食事していても、本当にこの人はみえていないのだろうか???と思うくらい、普通に、本当に普通なのだ・・・。もちろん、他の人の何倍も苦労したことも、努力したこともあるだろうけれど、彼は彼の人生を楽しんでいる。結婚もして、子供もいて。

特別かもしれないけど、特別ではない。

あるいは、だれもが特別っていうことだ。

障害とは関係なく、育ってきた文化の違いみたいなものだって、一緒に働くことで初めてわかることもある。

自分の常識は、誰かの非常識。逆もまた然り。

 

社会とか、世界とか、、、全ての最小単位は一人の人間

その構成単位を尊重せずに、社会が成り立つわけがないと思う。

 

誰もが生きやすい世界にしたいな、と思う。

世界大戦で、みんな殺戮はいやだと学んだはずなのに、ロシアの蛮行。これを蛮行と呼ばずして、なんて言えようか。

 

近代の終わり。

近代の次は、現代?

私たちにできるのは、今、そしてこれからに向けて行動すること。

昨日は、もう取り返せない。

「今ここ」を大切にしよう。

 

春の気配も、もうそこにある。

こんな季節も、大事に楽しもう。

 

人がどんな愚かなことを犯そうと、季節はちゃんと回ってくる。

今日一日を、大切にしよう。

明日があるさ

 

 

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『近代の終わり 秩序なき世界の現実』