『夢を見るとき脳は』 by  アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド

夢を見るとき脳は
睡眠と夢の謎に迫る科学
アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド
藤井留美 訳
紀伊国屋書店
2021年9月10日第1刷発行 
(WHEN BRAINS DREAM:2021)

 

睡眠の大切さの話の中で、紹介されていた本。

面白そうだったので図書館で借りてみた。

 

著者のアントニオ・ザドラはモントリオール大学教授(心理学)。同大学睡眠医学先端研究センター研究員。睡眠時随伴症(睡眠時遊行症、夜驚症など)、トラウマ、悪夢などを専門に研究している。
もう一人、ロバート・スティックゴールドは、ハーバード大学医学部教授(精神医学)。同大学睡眠認知科学センター長。睡眠研究の第一人者、 J・アラン・ホブソン に長年師事し、認知精神科学の観点から、睡眠と夢の性質や機能、記憶の定着と統合などについて研究している 。

 

感想。面白いと言えば面白いのだけれど、読んでみて、私は睡眠の機能には興味があるけれど、夢にはそんなに興味がない、、、ということが分かった。

夢に興味がある人には、とても面白いと思う。

 

夢の研究は、夢を見た人の主観的報告をもとにするのだから、研究とはいえ、なんともいえないもどかしさ、、、みたいなものを感じる。
記憶の定着には睡眠が重要であるということは、様々な本でも言われていることだけれど、そこに夢が機能しているといわれると、、、はて???ほんと???なんて、おもったりもする。

でも、そういうことらしい。夢をみながら、記憶の整理、統合をしている、と。

 

目次

第1章 夢について考えてみる
第2章 夢をつかむ
第3章 夢の秘密を発見した とフロイトは思った
第4章 新しい夢科学の誕生 睡眠中の精神をのぞく窓が開いた
第5章 睡眠 それは眠気を解消するだけのもの?
第6章 犬は夢を見るのか?
第7章 私たちはなぜ夢を見るのか
第8章  NEXTUP
第9章 夢の中身はひと癖もふた癖もある
第10章 その夢はなぜ見たのか
第11章 夢と内なる創造性
第12章 夢の活用法 その発想と手法、および注意点
第13章 夜中に大きな音がする  PTSD 、悪夢、その他夢に関する障害
第14章 意識する心、眠り続ける脳 明晰夢の手法と科学
第15章 テレパシー夢と予知夢 
エピローグ わかっていること、いないこと


最初に、「夢というのは、睡眠中に出現する一連の思考、心象、情動である。」と定義されている。
では、起きているときのそれと、どう違って、なぜ夢を見るのか?という疑問を取り上げているのが本書。でも、結局のところ、フロイトアドラーユングなど、様々な人が様々な説をあげているけれど、絶対の正解はないようだ。著者らの様々な実験(聴き取り)の努力はすごいのだけれど、(協力する人もすごいと思う)、明確に、これだ!!というものがあるわけではない。

夢は、客観的に観察できるものではないから、研究の方法としても聴き取ることで情報を集めることしかできない。報告者の夢の記憶があいまいだったら、あるいは嘘をつくつもりはなくても、自分にとって都合のよいことだけど報告していたら???なんて、疑えばきりがなくなってしまう。

犬は夢をみるのか?これも、犬に訊かないとわからない、、、、と。
私にとっては、読み終わって、そんなにすっきり感のある本ではなかったように思う。

 

読み終わってから、そうか、私は夢に対してあまり疑問をもっていない、、ということが分かった、というのが収穫か?!


夢は、主にレム睡眠の時に見ているというのは、間違いないようだが、ノンレム睡眠の時にはみないということではないという。眠りが深い分、覚えていないということらしい。ここにも、夢研究の難しさがある。。覚えていないことを研究のしようがない。


レム睡眠というのは、1953年に発見された、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)が観察される睡眠。浅い眠りの時間と言われてる。
レム睡眠は、生理学的に定義された睡眠段階であって、夢をみているというのは主観的なので、レム睡眠の時だけ、夢を見るということではないらしい。

 

では、なぜ夢を見るのか?
夢は、何かの問題を直接に解決してくれるわけではないけれど、睡眠依存性の記憶をするために不可欠だ、というのが著者らの説。
そして、著者らは、その理由を説明する新しいモデルとして、
NEXTUP (Network Exploration To Understand Possibilities:可能性理解のためのネットワーク対策)を提唱している。

NEXTUPモデルでは、関係性が強くない物事についても、ネットワークを探って関係性の可能性を探そうとする、という。
眠っているときの脳の方が、起きているときよりも広範囲を検索するから、思いもよらない連想が起きる。
夢を見ている間に、脳は連想を発見して、調査して、評価しているのだ、と。

そうやって、起きているときに経験した様々な記憶を、睡眠中に関連付けようとしている時にみるのが夢なのではないか、と。


たしかに、夢では、同時に存在するはずの無い人物が、一緒に出てきたりすることがある。そこに何の意味があるのかはわからないけれど、あまりにも突飛で、起きてから何だったんだいまの夢は?!と思うことがある。

脳がかってに関連付けようとしている、ということのようだ。

寝る前に勉強したことは、寝ている間に記憶に定着する、というのも睡眠中に物事を関連付けることと関係しているのかもしれないという。

 

本の中では、トラウマや悪夢への対処法もでてくる。睡眠中のノルアドレナリンをコントロールする薬物の投与で、PTSDによる悪夢を軽減することもできるらしい。
とはいえ、ストレスのもと、ストレッサーを無くすことが一番だけれど。

 

ナルコレプシーの患者の話も出てくる。日中にも突如として眠ってしまう病気。ナルコレプシーの患者は、夢と現実の区別がつかなくなることが多いとのこと。夢でのできごとを現実だと思い込んで人を恨んだり、、ということもあるようだ。ちょっと怖い。

私は、部下に、ナルコレプシーの20代の女性がいたことがある。本人は、ナルコレプシーといっているのだけれど、単に居眠り癖なのか、、、分からなかった。時々、何のことを言っているのかな??ということがあり、もしかすると、夢と現実の区別がつかなくなっていたのかもしれない、と思った。

 

私は、ずーーと何十年もほとんど夢をみていないとおもっていた。見ていたとしても記憶に残っていなかった。それが、会社を辞めてから、睡眠8時間の生活をするようになって、夢を見るようになった。たいして中身は覚えていない。
でも、疲労困憊で5,6時間の睡眠で過ごしていた時代に比べれば、コロナでステイホームで身体を動かすことも減り、睡眠をゆっくり取れるようになったいま、無駄に?!夢を見ている気がする。

 

睡眠が健康に重要であることは、ここでも語られている。認知症の原因と言われるβアミロイドだって、充分な睡眠によって沈着を防ぐことができる。睡眠不足は、様々な事故の原因にもなる。居眠り運転、医療ミス、、、集中力の欠如はあらゆるトラブルのもとになる。チェルノブイリ原発事故も、睡眠不足が関係していたと言われている。深刻な不眠症は、死に至ることもある。様々な精神疾患の最初の症状も、眠れない、、、という形であらわれるといわれる。寝るって大切。

 

そして、面白いと思ったのは、なかなか眠れない、という不眠症の悩み。これは、脳が眠ってから様々なことを関連付けるための準備をしているのだという。懸案事項がたくさんあると眠れないのは、関連付けの準備に時間が必要なのだと。

なるほど。一理あるかも。


でも、結局、夢って、どんな夢にどんな意味があるかとかいうことも含めて、客観的にいうことができないから、ちょっとサイエンスとしては心もとない。再現性が無いものはサイエンスというにはこころもとない。
ただ、夢の聴き取りをしてみると、どんな夢をみたか、という傾向は万国共通らしい。

 

日米の学生の夢調査によると、トップ5種は同じだったという。

・攻撃される、あるいは追いかけられる夢
・落下する夢
・何度も試みるがうまくいかない夢
・学校/教師/勉強の夢
・性的経験の夢

若者らしい、、ともいえるのかも。

でも、どれもあるある、、、って感じ。

 

脳は、寝ている間に関連付けをする。
実は、寝ている時間が脳にとって働いている時間、ということのようだ。
だとすれば、睡眠不足は、脳が働く時間がすくなくなるということ。

どうりで、寝不足だと、起きていても頭の回転が鈍くなるわけだ、、。

良く寝よう!!
寝るって、大切。

 

一日24時間のうち8時間寝るとすれば人生の1/3。
寝ることには、お金をぜいたくに使おう!
快適な寝具は、人生を豊かにしてくれる!

 

そういえば、愛子さんの

「どこでも寝られること」が長所っていうの、かわいい。

 

寝る子は育つ。

睡眠にまさる健康法はなし!

良く寝よう!

 

 

 

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『夢を見るとき脳は 睡眠と夢の謎に迫る科学』