いい緊張は能力を2倍にする
樺沢紫苑
文響社
2018年6月5日
図書館で、心理学の棚あたりで見つけた本。樺沢さんの本だから、借りてみた。
樺沢さんは、1965年、札幌生まれ。精神科医。札幌医科大医学部卒。精神医学や心理学、脳科学の知識、情報などを分かりやすく発信されている。私が最初に樺沢さんにであったのは、本だったか、You tubeだったか、どちらが先だかもう忘れてしまったけれど、説明がサイエンスに基づいていて、かつ分かりやすく説明できていて、この人頭いい!!、と思ったことだった。You tubeの樺チャンネルは、精神疾患について、様々な情報を提供してくれている。
朝散歩でセロトニンを分泌させることが大切、というはなしをよくされているのだけれど、本書も、緊張と様々なホルモンの関係を脳科学の視点から説明してくれているので、なかなか、分かりやすいし、納得の一冊。
なかなか、良い本だと思う。
もう、たいして緊張する場面がなくなってきた50代の私より、20代、30代の若者に参考になるかも?!
緊張したらどうするか、という話ではなく、緊張とはどういう心身の変化で、どういう風に起こり、どうすればコントロールできるのか、ということが書いてある。
いまでは相当図太くなった私だが、人生を振り返れば、私だって緊張のあまり頭が真っ白になったこともあるし、何をしたかも覚えていない本番、みたいなこともあった。
でも、個人的な経験から言わせてもらうと、どんなに緊張して心臓がバクバクしても、私の心臓は止まったことがない。心臓が破裂しちゃうんじゃないかと思うくらい、ドキドキしたこともあるけれど、、、今なお、私の心臓は動いている。
緊張したくらいじゃ死なない、とおもえば、今をのりきれば!と思えば何とかなる、と思えるようになってきた。命をかけた綱渡りの本番でもない限り、緊張では死なない。
本書で樺沢さんが繰り返し主張されているのは、「緊張は敵ではなく味方」ということ。
ほどよい緊張は、私たち人間の力になる、ということ。
目次
第1章 まずは「緊張」を避けずに正体を知る
第2章 緊張を味方にする第1戦略 副交感神経を優位にする
第3章 緊張を味方にする第2戦略 セロトニンを活性化する
第4章 緊張を味方にする第3戦略 ノルアドレナリンをコントロールする
第5章 緊張に負けないメンタルを手に入れる
第6章 シチュエーション別対処法
緊張とは、まさに、テンションがかかっている状態。でも、テンションは緩みすぎていればボーっとしちゃうし、行き過ぎれば過緊張になってしまう。
縦軸にパフォーマンスをとって、横軸に緊張度をとってグラフにしてみると、逆U字になる、という。真ん中にピークが来る。
まさに、「ゾーンにはいった」のが真ん中のピーク。
たしかに、それは分かりやすい。本番だ!というときに緊張感が無さ過ぎれば失敗するし、緊張しすぎれば、カチコチになって失敗しちゃう。ほどよい、ドキドキというのは、いい感じにパフォーマンスをあげてくれるものだ、ということ。
テスト本番に強い!やった!というのは、よい緊張が保てた感じだろう。テスト終了後、腑抜けになるくらい、がー--っと集中して、すごい実力が発揮できる感じ、ちょっとわかる。
第2章では、副交感神経を優位にすることで、過緊張をほどく方法。多くは交感神経と逆の作用をする、落ち着き、のんびりモードになるのが副交感神経。
具体的な副交感神経優位への切り替え術は、以下の通り。
1.深呼吸。 5秒吸って、25秒で吐く、くらいのゆっくりとした深呼吸をする。
2.ゆっくり話す。
3.筋肉をほぐす。首をまわす、手首をブラブラふる、肩をギュッとあげてストンとおとす、ツボ押し(合谷・神門)など。
4.笑顔。作り笑いでもいいから、口角をあげてみる。
5.良く寝る。8時間睡眠。
6.好きな飲み物、好きな食べ物をとる。
7.片鼻呼吸。親指と人差し指で交互に左鼻、右鼻をおさえながら、左からすったら右から吐く、右から吸ったら左から吐く、を繰り返す。
どれも、簡単にできそうなこと。
ゆっくり話すのは、特に、出だしにゆっくり話し始めることを意識するといいような気がする。私も、プレゼンの時には気を付けるようにしている。なんせ、意識しないとすぐに早口になっちゃうので。
第3章では、セロトニンの活性化の仕方。セロトニンは、落ち着きと平常心をもたらすホルモン。足りなくなるとうつ病になるともいう。セロトニンをたくさんだそう!という話。
具体的方法は、以下の通り。
1.朝日を浴びる。樺沢さんが朝散歩を一番に薦める理由が、朝、太陽の陽をあびるとセロトニンがドバっとでるようになるから。曇りでもいいらしい。
2.リズム運動をする。散歩など。
3.朝食をとる。ちゃんと噛む食事をする。
4.トリプトファンとビタミンB6を摂取する。バナナとか。
5.3か月は続ける。
6.ガムをかむ
7.姿勢を正す
3か月は続ける、というのは、人間の身体は恒常性を保とうとするので、シーソー反応を起こす。だから、じっくりと続けるのが大事、ということ。
ちなみに、セロトニンは午前中に分泌されるので、午後に外の陽をあびても、たいして効果がないそうだ。朝散歩。朝、太陽にあびるのがいいらしい。コロナによる自粛で、朝、外に出なくなったことが不眠の原因になった人って、結構いるのではないだろうか。寝つきが悪い、寝れない、とおもうなら、朝散歩がお薦め。これは、私も実践して体感している。朝、陽をあびる。経験からすると、10分の散歩でもいいと思う。
姿勢を正す、なんて、これもただでできる。これ、結構大事。気分が落ち込んだ時も、姿勢をただして坐る、歩く、などを心がけるだけで、ちょっと、気が晴れる気がする。
電車で座ったときも、だらっとすわるのではなく、一瞬でも、ぐっと背筋をのばして、しゃんと座ると、よし、がんばるか、という気持ちになれる。だらっとすわると、だらっとした気分になりがち。
姿勢のはなしは、よく、ゴルフ選手の例でも言われている。タイガーウッズも、宮里藍ちゃんも、ボギーでもダブルボギーでも、ホールから次のTグラウンドへ向かうときは、背筋をしゃんと伸ばして歩く、って話。タイガーウッズと藍ちゃんを例に出すあたりが、私も年寄りだけど、、、。とぼとぼを猫背で歩く彼らは想像できない。
第4章は、ノルアドレナリンのコントロール
ノルアドレナリンとアドレナリン、というホルモンがある。アドレナリンは、興奮しているときに「アドレナリンでてる!」というくらい一般用語?だとおもうが、ノルアドレナリンも実は作用としては似ている。ただ、アドレナリンが心肺機能を高めるように心臓や筋肉に受容体を持つのに比べ、ノルアドレナリンは集中力を高めて瞬時に正しい判断ができるように脳内に受容体がある。つまり、作用する組織が違うということ。
ノルアドレナリンもアドレナリンと同じように興奮を引き起こすホルモンなので、ノルアドレナリンが出すぎないようにコントロールすることが大事。
では、その方法は?
1.徹底的に準備する
2.ポジティブに自分自身にフィードバックする。
3.イメージトレーニングする。脳は現実とイメージを区別できない。
4.安心できる、正しい情報を集める
5.ポジティブワードをつぶやく。「大丈夫!」「できる!」
6.その緊張を楽しむ
7.自分からすすんでやる。「アムロ、いきます!」(ガンダム)
8.前頭前野を活性化させる。思考トレーニング。
9.ルーティンを決めて実行する。イチローや五郎丸みたいに。
10.音楽を活用する。
11.マインドフルネス
どの対処法も、たいしてお金がかかるようなものではない。自分でやろうと思えばできること。緊張しすぎるのが怖いのなら、徹底的に準備する。ほんと、じぶんで「大丈夫」と思える状況に、自分でするというのが、一番。
だいたい、緊張する条件というは、基本4つだという。
① 衆人環視:大勢の前で何かをする。
② 自分をよく見せたい、という気持ち。
③ 白黒はっきり結果が出る勝負事。受験。採用。
④ 人生の一大イベント。重要度の高いイベント。
そして、緊張を引き起こすのが、「交感神経が優位で副交感神経が低くなってしまっている」「セロトニンが低い」「ノルアドレナリンが高い」。
緊張するかもしれないイベントの前に、これらを自分でコントロール方法をしって、それを実践すればいい。
その、実践方法の本とういことだ。
緊張は味方、そう思えるだけで、過緊張は防げるかもしれない。
これから、大事な面接がある、発表の場がある、人生の一大事を控えている、そんな人に助けになる一冊だと思う。
サラーっと読めるので、忙しい人にもお薦め。
緊張ということだけでなく、日々を快適に過ごすヒントにもなっていると思う。
樺沢さんの本は、結構、色々と背中を押してくれる。
たまたま手に取った本だったけど、よかった。
樺ちゃん、ありがとう。
ちなみに、樺沢さんの本で、『脳を活性化すれば、能力は2倍になる』(2016)もおすすめ。セロトニン、ノルアドレナリンをはじめ、脳内物質の機能が色々と説明されていて、わかりやすい。
読書は楽しい。