『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』 by  佐藤航陽

世界2.0 メタバースの歩き方と創り方
佐藤航陽
幻冬舎
2022年3月30日 第一刷発行

 

新聞広告で見かけて、気になった。先に、著者の『お金2.0』(幻冬舎 2017)を読んでみて面白かったので、買ってみた。

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1500円(税抜き)

なかなか派手な装丁。ネオンがキランキランしていて、ピンクの帯。。。


帯には、
メタバース、Web 3、 NFT、 AI、 宇宙開発・・・。
「新しい世界」を私たちはどう生きるか!
 メタバース事業の最先端を行く起業家が、全てを書き尽くした決定版。
インターネット以来の大改革。
 メタバース とは「神の」民主化だ。
産業革命、インターネット、そして メタバース
 人類はいよいよ最終局面を迎える。”
とある。

 

感想。

面白い。

けど、新しい世界をつくるなら、仮想空間ではなくてやっぱり現実社会じゃないの?とおもってしまった。昭和の発想なのかしらん?

メタバースの世界を作るための技術の話もあるけれど、技術よりは思想の話がメインな感じ。

 


目次
序章 メタバースとは何か
第1章 メタバースの衝撃
第2章 世界の作り方Ⅰ【視空間】
第3章 世界の作り方Ⅱ【生態系】
第4章 競争から創造の世紀へ
第5章 ポストメタバースの新世界
終章 世界の真実は自分の目で確かめるべき

 

著者の佐藤さんは、1986年生まれの起業家。『お金 2.0』と、論調?口調?が似ている。
2.0というのは、Society5.0みたいに、次の時代へ、ということ。後進にむけて、新しい世界を作ろう!と叱咤激励している感じ。

 

そもそも、メタバースって何???
定義としては、「インターネット上に作られた3 D (三次元)の仮想空間」のこと。
それくらいは、分かっている。よく、映画『マトリックス』の世界、っていうけど、『ヴィーナス・シティ』(柾五郎 早川書房 1992)の世界ってことだ。

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最初に、メタバースという言葉を使ったのは、アメリカの作家ニール・スティーブンスが『スノークラッシュ』という SF 小説を発表した時だったと言う。「メタ」(meta=概念を超える)+「ユニバース」(universe=宇宙)を組み合わせた造語

最近、Facebookが社名をMetaに変えたことからも、一気に一般の人にも注目が集まってきた技術世界だ。

 

佐藤さん曰く、こういったバズワードに対して、シニア層は「こんなチャラチャラしたもんはけしからん」と否定しがちだという。 たしかに、そうかもしれないね。
だから、彼は若者に期待する。そして若者に呼びかける。
「新しい流れに乗って活かしてみよう!」と。

 

たしかに、年を取るほど、新しい技術への適応能力が衰えていく、、、。そうならないように気を付けたいな、と思う。ついていけなくなるというのか、興味をもてなくなってくるというのが適切な表現かもしれない。否定するつもりはないけれど、興味がもてなくなると、使わなくなって、ついていけなくなる、、、。私は、ポケモンGoが流行り始めた時、やってみたものの3日で飽きた。技術はすごいと思ったけど、収集癖もなければ、誰かと競う気もない私には、こんなものかと知るだけで十分だった。
メタバースも、どうせゲームの世界のことでしょ?とおもっていたのだけれど、そうではないみたい。であれば、興味をもって覗いてみようと思う。

でも、まだ、どう使えるのかはぼんやりしている。

新しいものを、なんだかわけのわからないもの、として切り捨てるのではなく、少なくとも世界の多くの起業家が先行投資してきている技術なんだから、きっと、なにか役に立つのだろう、と思う。

最近のニュースだと、学校にメタバースで遠隔授業参加できるようにする、とかの取り組みも出てきているらしい。

 

佐藤さんは、メタバースの技術をつかって、日本を従来の製造業依存の経済ではなく、新産業で発展させよう!と主張している。
そりゃ、使えるものは、どんどん使おう!新技術を使える人材を増やそう!というのは、賛成。

そして、彼が、メタバースを「神の民主化」と言っている意味は、メタバースが新しい世界をつくるから。メタバースを作るのは人間だから。だから、「神の民主化」だそうだ。
「神」は、世界をつくっただけじゃないんだけどね、、、と、ちょっと突っ込みたくなるけれど、まぁ、たしかに、新しい価値観を人間が作った世界で築く、という点では、、分からなくもない。


メタバースによる革命の本質は、インターネットの3次元化。動画配信ですらそれなりの時間がかかるのを、それを3Dでやるのだから、通信速度、コンピューターそのもの性能も同時に乗り越えなくてはいけない壁、ということだ。

3Dの世界に没入するためには、VR末端技術も必要なのだけれど、それは、これから進むだろう、と。

 

私は以前、VRゴーグルで、「認知症の人が見えている世界」を体験したことがある。認知症の方への理解を深める活動をしている人のセッションだった。電車に乗っていて自分の降りるべき駅がわからなくなって降りられず、周囲の乗客が次々と降りていくので異常に不安になってしまう、とか、ワゴン車やバスから降りる高さが、ビルの屋上から降りるくらいの高さに感じられて怖くて足がすくむとか、、、。
VRゴーグルをしている間は、まさにその世界を体験できたのだけど、外した後、めちゃくちゃ酔った。。。いわゆるVRゴーグル酔いらしい。

彼曰く、これから生まれてくる子供たちは、生まれた時からVRゴーグルの世界で育つから、きっとVRゴーグル酔いなんて次の世代は克服している、、と。
たしかに、そうかもしれない。
そして、その時代には、デジタルネイティブですら老害になっているだろう、、、と。
技術の進歩のスピードからすると、たしかに、、、。

 

で、神に代わって人間が作り出す世界は、視空間と生態系に分けられるという。
視空間は、その通りビジュアルとしての空間。生態系は、社会的機能と役割のこと。それを3Dで作り出すということ。

視空間は、人間のアバターと、周囲の風景を3Dにすればいい。完全に技術の世界だ。一方で、生態系は、仕組みなので、メタバースに参加するそれぞれの人がそれぞれの役割を果たしていかなくてはいけない。ルール作りみたいなものだろうか。
その社会は、現実世界の会社のようなヒエラルキーのある世界ではなく、それぞれが相互に影響し合う、自律分散的な世界だろう、と。ビットコインと同じだ。自律分散の新しい生態系を3Dの世界につくりだし、世界2.0をつくるのだという。

現実の世界の生態系を変えるのは、老害が闊歩している世界ではまどろっこしいから、メタバースという新しい世界2.0のなかで新しい生態系を創ろう、ということのようだ。
べつに、現実の世界で創ればいいじゃない、、とおもわなくもないけど、、。


そして、社会には、三つの基本要素、価値の三分類が必要だと。

基礎要素は、
①自律的
有機
③分散的

価値は、
①実用的価値(儲かる、役立つ)
②感情的価値(共感、ポジティブ)
③社会的価値(世の中全体にプラス)

そして、そこに、生産者と消費者がいる。
それが、社会。
メタバースでそれを作っていくのが革命だ、というのが彼の主張。
(ここでもう一度、現実の世界で作ればいいじゃないと突っ込みたくなる、、、)

 

日本の技術もそこに力を入れるべきだと。

メタバースは、通信、コンピューターの飛躍的性能向上が必要ということは、実は宇宙開発とも同時並行ですすむのだろう、という。
大量の電力消費も課題になるだろう。
コンピューターの速度で言えば、量子コンピュータとの融合も相性がよさそうだ。

デジタル化と省エネと宇宙開発、どれも関係しあう複雑系が世界だ。

新しい世界に技術革新が必須なのは間違いない。

あとは、自分自身がそこにどう関与していくのか、ということの気がする。


3Dの世界で、教育もビジネスも、すべてが完結する時代になるのだろうか。
ちょっと味気ない気もする。。。
でも、今の大人のネットコミュニケーションに対する感覚と、将来の子供たちの3Dコミュニケーションに対する感覚は、変わっていくのかもしれない。
だれもが、現実の社会と、メタバースの社会と、二つの顔を持つ???
やっぱり、なんか、ピンとこないなぁという気がする。
まぁ、現実の世界と、SNSの世界で人格がかわる(表現が変わる)人はいるのは事実だし、それが3Dになるだけのことか??


郵便から、電話へ。
電話からネットへ。
ネットから3Dへ。。。
人間同士が直接接触する機会は、この先どうなっていくのだろう???
3Dでバーチャルに旅して、満足できるのだろうか??
ネット越しに3Dでチャットすることで、会わずにいても満足できるのだろうか?

電子媒体によるビジネスは、間違いなく広がっているし、確かに日々の生活も変わってきている。キャッシュレス決済しかできない店舗も増えている。お財布を忘れて出かけても、携帯電話さえあれば忘れたことにも気が付かないこともある。でも、一応、実体のある現場に行って決済しているわけだけど、3Dのメタバースの世界だけで様々なことが出来る日は遠くないのかもしれない。
洋服の試着は、すでに2Dで似たようなのサービスがあるし。

先日、ベイスターズがNFTデータで試合の名場面集などを販売し、利用者間でもデータ売買も可能にするという発表があった。(NFT:非代替性トークン)
拡張性がデジタルのメリットの一つだけれど、そのデータを販売する側としては海賊版で次から次へと拡張されてしまっては、儲けにならない。そこで、NFTデータに加工するという。

なるほどねぇ。。。
でも、映画の著作権じゃなくて、プロ野球名場面集、そこまでして売買する人いるのかなぁ、、なんて思ったけど、熱狂ファンにとっては大事なことなのね、きっと。

世の中、デジタル関係は、どんどん新しい言葉が増えていく。 

 

少なくとも、新しい世界を拒絶するのでななく、自分はどうかかわっていくのかを考える余裕を持ちたいものだと思う。

 

『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』