『カーボンニュートラルの経済学 2050年への戦略と予測』 by  小林光・岩田一政

カーボンニュートラルの経済学 2050年への戦略と予測
小林光・岩田一政
日本経済研究センター 編著
日本経済新聞出版
2021年11月25日 1版1刷

 

何故、読もうと思ったのか、わすれてしまった、、、。が、図書館で予約していたものが回ってきたので、読んでみた。

 

日本がこれまで、どのようにカーボンニュートラル(CN)に取り組んできたのか、どんな問題があったのか、そして、今後どうしていくべきなのか、そんなことが、環境庁内閣府で働いてきた二人によって語られている。日本経済研究センターが編集した一冊。

 

表紙の裏には、
”排出量ゼロへの挑戦は歴史的ビジネスチャンス

温暖化問題への対応は、世界の指導層の間では「待ったなし」と考えられています。
米巨大 IT 企業は、サプライチェーン全体を脱炭素にしようとしています。
脱炭素を目指さなければ、彼らとビジネスができなくなります。
本書は DX(経済社会のデジタル化)を加速することで
脱炭素を実現する変革のシナリオを描いています。
デジタル経済への移行は、生産性向上につながるだけでなく、
温室効果ガス削減にも貢献し、歴史的ビジネスチャンスにつながる可能性があるのです。 ”

と。

ここでいうDXの定義が、ビジネス界で使うトランスフォーメーションに主軸をおいた解釈と、ちょっと違う気もするけれど、まぁ、、、細かなことは気にせず、読んでみることにした。

 

感想。
これまでの日本政府が、いかにふがいなかったか、自分も現場にいたけれど忸怩たる思いでいた、自分は頑張ったけど政府がダメだった、、、、という吐露に聞こえなくもない。
過去のことは、さておき、未来に向けてどうしていくべきか、そっちの話がメインだともっと面白い本だったような気がする。あと、図表が残念。文字が小さすぎたり、一般的なグラフの使い方ルールを逸脱しているなぁ、と感じるバーグラフとドットグラフの重ねグラフとか、、、、本質でないところで気になることが多かった。。。。本質じゃないから、いいのだけれど。本として出版するなら、もうちょっと、、、、と。。。。思わなくもない。


目次

序章 2050年
第1章 展望 「実質ゼロ」への道
第2章 構造 産業地図 様変わり
第3章 戦略 エネルギー供給の現実と未来
第4章 制度 カーボンプライシング(CP)なくして脱炭素なし
第5章 変容 企業、消費者の役割が変わる
第6章 政策 地球環境で各種規制の統合を
第7章 協調 世界的協力の必要性と可能性
第8章 21世紀における生命と地球の安全保障
CN キーワード

いちばん、役に立つのは、最後のCNキーワードかも、、、。

覚書

カーボンニュートラル
温室効果ガスの排出をネットゼロにすること。ネットゼロというのは、排出と吸収が相殺される状態、ということ。再生可能エネルギーへの転換や省エネなどで排出を削減するとともに、森林拡大や地球にCO2を埋めるCCS等を組み合わせることで達成をめざす。
国連の気候変動に関する政府間パネルIPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の発表によれば、今世紀中の気温上昇(対産業革命以前)を1.5℃以内に抑える必要がある。それにむけての取り組み。


外部不経済
ある個人や企業の経済行動が市場以外の経路で他者にマイナスの影響を及ぼすこと。
公害などの場合、「外部不経済」ではなく、「社会的費用」という概念でとらえられることもある。マイナスの影響がでてから対応するのではなく、影響がでないように対策をうつことが必要。温暖化問題も同じ。各国で続く洪水や山火事などの自然災害は温暖化によって、悪化していると言われている。一つの原因を特定することは難しいけれど、時間的にも、空間的にも、発生原因を作った社会と被害を受ける社会が異なっている。まさに、外部不経済


限界費用均等化(限界削減費用)
限界削減費用(減らすのに必要な費用)と限界損害費用(損害で発生する費用)が一致する削減量をめざすこと。


将来に向けての取り組みとして重要なのは、やはり、将来に負の遺産をのこさないで経済活動を継続できる仕組みにしていくことだろう。
そのためには、バックキャストの政策が必要であり、菅さんがグラスコーで宣言した「2050年までにCNをめざす」というのは、最初の一歩としては正しい、と著者らは言っている。あれができない、これができない、、と積み上げのフォアキャストで計画を作れば、2050年CN達成など、とても無理だろうと。
あるべき姿に向けて、取り組んでいく。

また、”外部不経済”の問題に陥りがちなのは、国による取り組みの差だろう。それをなくすためにも、カーボンプライシング、炭素税、国境炭素税など、国際間での協調もかかせない。

日本は、まだまだ、他国に比べると、CNへの取り組みはすすんでいないという。
国として変容していかなくてはいけない。
企業は、技術革新によって新しい技術、取り組みを社会実装として具現化していくこと。
消費者である国民は、省エネにつながる生活を心がけること。省エネハウス(空調に必要なエネルギー源の削減)の選択、脱車(節ガソリン)、食品ロス削減(製造過程、廃棄処理過程での無駄エネルギーの削減)など、身近にも出来ることがあるという。

働き方も、そうかもしれない。
Web会議の導入は、移動のエネルギー消費削減になるかもしれない。電車通勤だと、あんまり関係ない気もするけど、、、。あと、家庭の光熱費が上がったのは事実。

経済学の本なので、データに基づいて話が展開されるので、なるほど、と思う。
地球温暖化への取り組みは、国際協調が不可欠だ。

 

ロシアのウクライナへの侵攻で、西側諸国がロシアからのエネルギー輸入禁止措置をとり、再生エネルギー活用は弾みが付いている一方で、EU諸国はアメリカからのエネルギー輸入を増やす見込みだ。たしかに、再生エネルギーでいますぐ賄えるくらい実装がすすんでいるなら、とっくにそうしている。まだ、化石燃料に依存している所が大きいということだろう。
バイデン大統領は、アメリカからの輸出拡大を表明している。シェールガス、オイルの生産地、テキサス州などでは若者や環境保護団体が、反対の声をあげている。
シェール生産者は、ここぞチャンス!と、輸出を増やしたがっている。

経済とは、常にミクロとマクロが混ざり合っているわけで、どこか1点の変容でマクロにすべてが変わるわけではない。
でも、やはり、一つ一つ、小さな積み上げで変えていくしかないのだろう。
気候変動については、どれくらい、「まったなし!」なのか、どれくらい「自分ごと」なのか、その感覚が個人(世代)や国単位で様々。

それでも、やっぱり、自分が出来ることをちょっとずつでも、やっていこう。

 

ちなみに、我が家では、生ごみコンポストに入れている。
先日、NHKのニュースでも取り上げられていた、LFCコンポスト

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生ごみ焼却に使用されているエネルギーを削減できる、家庭で出来る小さな一歩。
ちょこっとでも、自分にできることをやろうと思う。
ちなみに、できたコンポストをつかって、野菜を育てるのも楽しい。

 

核融合とか、潮力発電とか、地熱発電とか、、、、実装研究してみたいこともたくさんあるけど、、、。
とりあえずは、この辺りは世の中の動きを注視していきたいな、と思う。

 

カーボンニュートラル
日本の目標2050年まで、あと28年。
今できることは、今やろう。 

カーボンニュートラルの経済学』