『声のサイエンス あの人の声はなぜ心を揺さぶるのか』 by  山崎広子

声のサイエンス
あの人の声はなぜ心を揺さぶるのか 
山崎広子
 NHK出版新書
2018年4月10日第1刷発行

 

とあるところで「直感」を話題にしていた時に、人間は見た目だけでなくその人の声でその人がどんな人かを直感的に判断している、という話が出てきて本書『声のサイエンス』が言及されていた。通訳修行中の身である私には、直観でおもしろそうと思って、すぐに図書館で借りてみた。

 

感想。
面白かった。
通訳として声で仕事をして行くのなら、もっとちゃんと自分の声を録音して聞いてみようと思った。
声で人生を変えられる”と本書は言っている。

 

著者の山崎さんは、音楽・音声ジャーナリスト。国立音楽大学卒業後、複数の大学で心理学および声音楽を学び、認知心理学をベースに人間の心身への音声の影響を研究している。学校教材の執筆も多く手掛け、 NPO 法人「ミュージックソムリエ協会」では音楽心理学の講師を務める。2017年に NHKラジオ第2放送「こころを読む 人生を変える声の力」に講師として出演、とのこと。
そもそも、音声ジャーナリスト、という業種があるのね。面白い。

声については、通訳の先生にもよく自分の声を録音して聞いてみなさい、と言われるのだがあまり自分の録音声が好きではないから、なかなかやらなかった。正直言えば、自分の声を聞くのが嫌というより、その発話の下手くそさが恥ずかしい、、、というのもあるのだけれど。
誰でもそうだと思うけれど、自分が自分で出してると思ってる声と録音されたものを聞いた時に、その声の違いにびっくりすることがあるのでは?それは脳の仕組みなのだという話も出てきた。

自分の身体の中を通じて聞こえる音と、外から外耳を通って聞こえる音は、違っていて当たり前なのが、聴覚の仕組み。
だからこそ、外からの音として聴くために、録音した自分の声を聴いてみることで、自分の理想の発声ができるようになるのだと。声に自信がつくと、人前で話すことそのものにも自信がもてるのだ、と。

普段の声も、録音してみると、子供をしかっている時と甘やかしているとき、遅く酔っぱらって帰ってきた旦那にとげとげしくお帰り、、、というとき、、、自分の声のトーンの違いにおどろくものだ、と。
きゃぁ、おそろしい。

何かを頼まれて、えぇ~今いそがしいんだけど、、と、家族に冷たく言い放つときとか、きっと、いじわるな声になっているのだろう。

そして声というのは、10代だろうと50代だろうと70代だろうと自分の思ったように変えることができるのだと。自分自身の声に向き合うことで今まで気づかなかった自分と向き合うことができ、自分に対する感覚の扉を新たに開くことができると。

面白いなあ。

自分の声を自覚することが、自分自身への自信につながる。
確かにあるかもしれない。

 

声というのは自分に対する影響だけでなく他者に対する影響にも大きく関係する。キリスト教の教会の礼拝堂の天井が高いのは声が響くようにできている。ムハンマドが神のお告げを聞いたのも洞窟の中で音の反響も良いところだった。人は人が話す言葉そのものよりも声に魅力を感じるのだという。

政治家の声もその支持率に影響を与える。山崎さんが最近の政治家で最も魅力的な声なのはラクオバマだと。確かにWe can do it!は、言葉もいいけれど、あのオバマさんの声のトーンとしてすごく脳に残る。ドナルドトランプもハスキーではあるが悪い声ではないという。だから人を惹きつけるものもあった。まさに内容よりも声?!?!
日本人なら、ダントツ田中角栄だそうだ。さすがに田中角栄が現役の時は私はまだ小学生だったので何を言ってるおじさんだか分からなかったけれど、なんとなく彼が話すと人が魅了されているのは分かる気がした。田中真紀子さんの声だって、まるでおじさんのような声だったけれど、なんだか力強く説得されてしまう声だ。

そういう意味だとバイデンさんも菅さんも、声に魅力がある人ではない気がする。。。岸田さんになって、菅さんが落とした支持率をぐっとあげたのは、声の張りの違いもあるかもしれない。

確かに声って大事だ。

 

面白いことに声を出すためだけの器官というのは人間の体にはないと言う。呼吸をするための気道を使って息を吐くわけだし、声帯だってそもそも外と中とを隔てるためにあるもの。そして、体形そのものによっても声の質も変わるという。背が高い人は低めの声になるし、背が低い人は高めの声になるという。それは声帯や気道の長さや太さに関係するのだそうだ。 また、年を取ると声に張りがなくなるのは、姿勢も含めて全体にハリがなくなるから、、と。つまり張りのある声を出そうと思ったら、姿勢を正すことが重要。そしてもっと面白いことに、眉毛を上げることでハリのある声になるそうだ。

思わず、実際にやってみた。
あーと言いながら、眉毛を上下にピクピクさせてみると、声が変わる!!!
なるほどぉぉ!!

顎を上にあげて出した声と、顎を引っ込めてうつ向いて出した声と、全然変わる。
うつ向けば、声帯がつぶれるし、声はくぐもったトーンになる。

あまり、意識したことは無かったけど、姿勢って大事だ。
それから、眉毛が影響するのだから、口角が上がっているか下がっているかだって、大きく影響する。
声を出しているのは、声帯ではなく、身体全体、ってことだ。

ははぁぁ。面白いねぇ。

声が印象的な歌手が何人かあげられている。なるほど、確かに、声が魅力なんだって思わず納得しちゃう。
ユーミン、B’zの稲葉浩志吉田美和甲本ヒロト、、、、。
それぞれが、どうして魅力的なのかも説明してくれている。みんな完璧な声ではないところがあってこそ、いい声なのだそうだ。
たしかに、声楽のソプラノの魅力とは全く異なる。
ちなみに、私は吉田美和の声がすご~~~~~~~く好きだ。
パワフルであり、セツナイような、歌も含めて、全部好き。
ユーミンは、別にファンではないけれど、時々聞きたくなる。

自分の声と向き合う、って、これまであまり考えてこなかったけれど、ちょっと、向き合ってみようという気になった。

通訳の先生には、時々、私の英語の発話を、”ぐれた不良少女みたい”といわれる、、、まったくもって、とほほほ、、、なんだけれど、、、。なげやりな声になっていると。
日本語だとそれはないんだけれど、、、要するに、私の英語の発話はまだまだ子供レベルだっていうことなのだ。
日本語は、最近は随分直されなくなった。でも、まだまだ、、、、。

通訳で大事なのは、「誠実」に話すこと、という。
本書で、「誠実さは声にあわられる」と言っている。誠実な政治家と、嘘つきな政治家は、声でわかる、と。

ちなみに、政治家に必要な声の要素は、
① 聞き手を惹きつける
② 主張を納得させる
③ 脳に信頼と誠実と言ったイメージを残す
だそうだ。

声って、なかなか深いねぇ。
面白い本だった。

図書館で借りてから、カフェで1時間ちょっとで一気読み。

人前で話すのが仕事の人にお薦め
プレゼンだけでなく、会議で話をする機会が多いとか、お客さんとの会話が多いとか、声を意識するだけで、自分がかわれるかもしれない、そんな気になってくる。

とても安上がりな自己投資だ。 

ちょっと、おすすめ。

 

あー面白かった。

あとは、やっぱり、Do it!だね。

やってみないと。

 

読書は楽しい!

 

『声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』