『ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯』 by  原田マハ

ゴッホのあしあと
日本に憧れ続けた画家の生涯
原田マハ
幻冬舎新書
2018年5月30日

 

図書館で見つけた本。借りてみた。
原田さんのゴッホに関する本。
2018年の本なので、『たゆたえども沈まず』(幻冬舎 2017年)出版の後の本。

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ゴッホに関する、エトセトラ。物語風な伝記のよう。そして、ゆかりの地がいくつも出てきて、モンパルナス、アルルへいって、ゴッホと同じ風景を見てみたくなる。

 

裏の説明文には、
”生涯一枚しか絵が売れず、37歳で自殺したフィンセント・ファン・ゴッホ。映画『炎の人ゴッホ』の影響もあり、不遇をかこった狂気の天才という印象が強く、死後高騰し続ける作品は、今では時に100億円を超える金額で取引されセンセーショナルに語られることが多い。だが真実の姿は写実絵画から浮世絵、空想画と新しい描法を研究し独自の様式を追い続けた努力の人。またラテン語とフランス語を巧みに操る語学の才能を持ち、弟宛の膨大な書簡は「告白文学の傑作」として読み継がれている。新たな人間ゴッホ像に迫る。”
とある。

ムンクもそうだっだけれど、画家の多くは手紙も良く描いていて、文才もあるようだ。

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目次
プロローグ 私とゴッホの出会い
第一章 ゴッホの日本への愛、日本のゴッホへの愛
第二章 パリと林忠正
第三章 ゴッホの夢
第四章 小説『たゆたえども沈まず』について
第五章 ゴッホのあしあとを巡る旅

 

私のゴッホの人生についての知識と言えば、原田さんの『たゆたえども沈まず』だ。史実に基づいたフィクションなので、どこまでがほんとで、どこからが原田さんのフィクションなのかわからないでいたのだけれど、本書をよんで、史実の範囲が見えてきた。少なくとも、小説の中でゴッホがたどった道筋はほぼ、史実。

 

ざっと、生涯の軌跡をたどると、

1853年3月30日 オランダ ズンデルトに生まれる
1869~1876 ハーグ、ロンドン、パリ、グーピル画廊で働く
~1880 イギリス、オランダ、ベルギー、伝道師をめざす
1880 (27歳)美術に人生を捧げる決心をする
~1886 オランダ、ベルギー、画作を続ける
~1888 パリ → アルル
1889 サン=レミ=ド=プロヴァンス
1890 パリ、オーヴェル=シュル=オワーズ
1890年7月29日 オーヴェル=シュル=オワーズ、拳銃にて自殺

最初は、自分が画家になるつもりはなく、画廊で絵を売る商売をしていたのだ。そして、その後、イギリスの寄宿学校で教師として働き、オランダで書店で働いているうちに、牧師になることを志す。社会全体を等しく受け止め、諸処の問題を解決したいという願望をもち、聖書の教えを説く道を目指し始めた。しかし、アムステルダム大学神学部への入学試験に失敗、宣教師学校も受講中に挫折してしまう、、、。

そして、とうとう、画家として生きていくことに目覚める。27歳の時だ

結局、絵は売れなかったので、生涯ずっと貧乏だった。それでも、描くための様々な実験を重ね、沢山の絵を書き続けた。

パリに憧れて、パリで描いてみたものの、売れない。。
恋焦がれたパリに、失恋したかのようになって、アルルへ移っていく。

 

アルルでは、かの有名な、耳切り事件が起きる。
ゴッホの耳切り事件、繃帯を巻いた自画像、とても正気の人とは思えない、とおもっていたのだが、実は、耳切り事件というのも、片耳を全部切り落としたわけではないのだ。耳たぶをちょっぴり。。。まぁ、それを知り合いの娼婦に送り付けたというのだからやっぱり、普通ではないけれど。。。
耳切り事件のころは、ゴッホはもうパリを離れてアルルへいっていて、ゴーギャンとともに新しい絵画の研究もかねて、一緒にくらしていた。でも、ゴーギャンとはすぐにケンカ別れのようになってしまい、ゴーギャンへのあてつけのように耳たぶをちょっぴり切った。耳だったので、血がたくさん出て大騒ぎになった。。。
ということらしい。

 

たまたま、私の家のリビングのカレンダー(頂き物のオルセー美術館カレンダー)は、今月はゴッホの『ローヌ川の星月夜』。

ローヌ川の月星夜



その隣に、先月オルセー美術館で買ってきた

『ファン・ゴッホの寝室』


の絵葉書が飾ってある。

 

ゴッホは、努力の人だったのだなぁ、ということがしみじみ伝わってくる一冊だった。

最後は悲劇だし、死んでから作品がこれほどまでに評価されるというの皮肉なことだけれど、高く売れる作品を描いたのではなく、あくまでも自分が描きたいものを描き続けた結果がこうなったのだろう。

 

何事も、成果が現れたり、人から評価されるまでには時間がかかるもの。新しい試みであればあるほどそうだ。でも、自分の道を信じて描き続けたゴッホ。すごい人なのだな。。。

浮世絵の時代と重なっていたというのも、運命なのだろう。

西洋画は、つい時代を忘れがちだけれど、レンブラントダヴィンチとも違う。新しい時代を生きたゴッホピカソ、モネ、マティス、ルター。。。

作品の裏には、それぞれの人生があるのだ。

 

絵画だけではなく、世の中、人の作り出したもののすべてにはその人の人生がかかっているのだ。小説も、農作物も、織物も、、、。
目に見えているのは、その表面でしかない。
でも、その中にあるストーリーを知ると、より、愛しく思えるかもしれない。

 

ゴッホへの愛に目覚める?!一冊。
ゴッホの絵が、なぜこんなに高く売れるのか、一枚、50億円、100億円。。。
疑問に思っている人にも面白い本かもしれない。

 

さらっと読めるので、ちょっと気分転換にお薦め。

読書は楽しい。

ゴッホのあしあと 日本に憧れ続けた画家の生涯』