『奇跡』by 林真理子

奇跡
林真理子
講談社
2022年2月14日 第1刷発行 

 

38年ぶりの林さんの「書き下ろし」。しかも、実名を出した梨園の妻の不倫の物語ということで話題になった。人の不倫なんてどうでもいいし、でも林さんが書いたものがどんなものなのか気になったので、図書館で予約していた。半年くらい順番を待ったことになるだろうか。出かけている最中に、「予約本確保できました」の連絡メールが来たので、そのまま図書館によって、借りてきた。電車の移動中、ドトールコーヒーに入ってコーヒーを飲みつつ、1時間半くらいで読了。

 

感想。
なんじゃこりゃ。。。。
くだらなすぎる。。。。。

林さん、、、こんな仕事、引き受けなければよかったのに、、、と思った。

 

いつもなら、面白くなかった本は、ブログにも書き残さないのだが、、、。なんだか、なにか言わずにはいられない、不快な感じが残った。

 

本書は、林さんが、ストーリーの主人公である元歌舞伎俳優の妻の話をインタビューし、報告するような形をとっている。小説風になっているわけではなく、林さんの語り、のような感じ。主人公に、林さんに書いてもらいたいと懇願されたのだそうだ。

 

プロローグは、
”本来であれば、決して世に出ることのなかったはずの物語を、私はいま、綴ろうとしている。”
とはじまる。

私とは、林さんのこと。

 

ママ友だった主人公・田原博子が、林さんに是非書いてほしいと依頼し、本となったのが本書。特にすごく親しいママ友だった、ということでもなさそう。

 

自分たちの愛は、本物だったのだと、、、本にして世の中に訴えたい、、、という感じだろうか?私には、理解不能

 

ただの男と女の話だ。。。これが、フィクションの小説だったら楽しく読めたかもしれない。感動物語になったかもしれない。しらけるのは、なんでわざわざ実名で本にして、世に発表する必要があるの?!?!と思ってしまうから。


登場人物は、
田原博子:不倫相手の田原佳一と結婚して、田原姓。元、歌舞伎俳優片岡孝太郎の妻。
田原佳一:博子の不倫相手。著名な写真家であり、建築家。
貴博:博子の息子。初代清之助。
清十郎:博子の元夫、片岡孝太郎
清左衛門:博子の元舅、片岡仁左衛門

 

博子33歳、田原52歳で出会っている。貴博が3歳の時に田原と出会い、そこから延々と不倫が続く。で、元夫は女癖も悪いし、いじわるな言葉も博子に投げる。それでも、梨園の妻として舅のために頑張り、息子貴博を立派な歌舞伎役者にするために頑張った。
で、最後は、元夫との離婚が成立し、田原と結婚する。ただ、結婚の前に田原の肺がんが見つかり、闘病の末、田原は他界する。

ただ、それだけのこと。

 

なんじゃそりゃ、と思うのは、博子は田原と会うときに貴博を連れて行き、貴博も「おじちゃん」といってパパとは異なる大人の人として、なついていた、ということ。

なんじゃそりゃ。

なにがどう奇跡なのか?
なんで、こんなものを林さんは書いたのか???


そう思いつつも、最後まで読んだのは、やっぱり林さんの文章のせいなのか。たんに、この女、最後はどうなるんだ、と見届けたい、のぞき見根性なのか。。。

なんだかなぁ。

もともと、「書き下ろし」というので、結構立派な単行本を想像していたのだが、ソフトカバーの薄めの本。
内容も、薄かったけど、、、、。

 

ノンフィクションとして書くのではなく、この話を材料に小説を書いてほしかったなぁ、、、と思う。で、実はほぼ実話に基づいていて、、、ということなら、もっと楽しく読めた。

 

ただ、一人の女が、自分がどれだけ愛されたかを世間に知ってほしかった、顕示欲の塊のような一冊、、、、。そんな感じが、ちょっと不快感。
でも、最後まで読んでしまう自分自身が、、、残念でもある・・・。

そして、不快に思うのは、いってみれば嫉妬もあるんだろうなぁ、と認めざるをえない。なんだかんだ、セレブの世界で、いい思いして、最後は愛する人が病に倒れて、悲劇のヒロインをきどってんでしょ、っていう、、いじわるな思い。

ま、私も所詮、ちっちゃいやつだ。

 

なんというのか、世の中には色々な人がいるもんだ。
これを読んで感動した、と言う人だっているだろう。
私も、こんな燃えるような恋愛がしたい、とか思う人だっているだろう。

でもって、博子は、いったい、どうしてこんなもんを世の中に出したいと思ったのか?
やっぱり、解せない。

ほんと、世の中って色々な人がいるもんだ。

 

田原だって、自分が死んだ後に、こんな風に世の中に暴露されるなんて、思っていなかっただろう。片岡家だって、大迷惑ではないだろうか。。。

元夫のことは、博子にとって嫌だったことしか書かれてない。元夫の書かれようが不憫だ・・・。一度は好きになった男をこんな風に書いて世の中にさらせる気が知れない。

 

と、批判しようと思ったら、突っ込みどころ満載。

 

活字は、コワイ。 

 

博子や貴博が林さんに話したことが、活字になっている。

死人に口なし。。。

 

へんなもん、読んじゃった。。。。って感じ。

ちょっと、まともな小説で心を浄化したくなった。。。

活字で乱れた心は、活字でなおす、、、か。

 

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