読むだけですっきりわかる やり直しの日本地理
後藤武士
宝島社
2019年2月26日 第一刷発行
図書館の「地理」の棚で見つけた本。
カラーのイラストの表紙が読みやすそうだったので、借りてみた。
うん、北海道から沖縄まで、いい感じにポイントが抑えられている。なかなか面白い。
日本全国をざー-っと眺められる感じ。
それぞれの地方ごとに、ポイントがまとめられていて、地図、写真、数字情報なども、見やすい。
目次の一例をとると、
北海道地方
北海道地方の概要・気候
北海道地方の地形
北海道地方の水産業
北海道地方の工業
北海道地方の観光
北海道地方の歴史
北海道地方の農業
北海道地方の工業と重化学工業
北海道地方の交通
って感じ。概要はどこの地方についても記載されているにしても、次に来るのがその地方のポイントとなることで、それは気候だったり、地形だったり、また産業についてもその地域に特徴的なことが抜粋されている。
これは、このまま英語にしたら、日本に興味のある外国人にもうけがよさそう、って感じ。
出版も2019年なので、比較的新しい情報がはいっていて、 とても参考になった。
時々はさまれる、「コラム」も面白い。
例えば、「政治に翻弄される世界遺産」というコラムでは、2019年当時の暫定一覧で紹介されている「金を中心とする佐渡金山の遺跡群」の話。当時、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」とならんで、世界遺産候補だったのだけれど、結果的に2022年の今、縄文遺跡群は2021年に世界遺産に登録されたけれど、佐渡金山は登録されていない。
政治的な思惑で、佐渡金山の登録は伸ばし伸ばしになっているという。「軍艦島」の全例があるからだ。「軍艦島」や「佐渡金山」は、朝鮮半島から徴用された労働者が働いていた。だから「軍艦島」(世界遺産:「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」に含まれる)の時のような韓国からの抗議を受けたくないという配慮。
なるほどね。
ちなみに世界遺産は世界遺産一覧表に記載する前に暫定登録される。そして、その中から準備が整ったものを推薦し正式に記載となる。ただし、世界遺産の数は膨大になり、ユネスコとしては毎年記載できるのは各国一つとしている。
「彦根城」も、世界遺産登録をめざしているけれど、なかなか推薦の一つにならないようだ。彦根所は、結構好きなお城の一つ。天守閣だけでなく、全体に美しい。
地域としては、世界遺産に登録されることで地域の活性化、観光産業の拡大の機会になるのだから、待ちわびているだろうけれど。ただ、一時のブームが過ぎると、観光客の数も減ってしまう、、、ということも問題になっているそうだ。ブームは、ブームでって、長続きさせるのはなかなか難しい。。。そういえば、いまでも富岡製糸場って観光客集まるのかしら??
本題に戻って、各地方について。
改めて、北から順におっていくと、よく知っていることと、あらためてそうだっけね、って思うことがある。茨木・栃木・群馬とか、近い県のことが意外とコンタミして記憶されていたり、あれ?中山道の宿場町、長野県だっけ?岐阜県だっけ?って思ったり。長野なんだよね。
各地方、トピックスだけ、ちょっと覚書。
北海道:なんといっても水産業。米の生産量も、新潟と並んでトップクラス。
夕張、室蘭、苫小牧は、石炭、製鉄、石油コンビナート。
東北地方:青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島。昔は京都が都だったので、東北はとっても遠かった。「道の奥」がなまって「みちのく」とよばれるようになったとも言われている。背骨は、奥羽山脈。全長約500kmにも及ぶ。東京から四国までの距離と同じくらい。火山活動によって生まれた十和田湖、田沢湖といったカルデラ湖がたくさんある。
言わずと知れた、米どころ。日本の全国の1/4を生産。
関東地方:茨木・栃木・群馬・千葉・埼玉・東京・神奈川。重要機関、情報、人員があつまる首都圏。広大な関東平野が、関東を日本一にした。家康の江戸幕府創設を契機に日本の中心地域となった。日光は栃木。尾瀬は群馬。
中部地方:新潟・富山・石川・福井・長野・山梨・静岡・愛知・岐阜。内陸の海なし県は、岐阜・長野・山梨。新潟は、北陸ではなくて中部地方に分類される。越後山脈と日本アルプス(飛騨山脈、木曽山脈、赤石山脈)が、地形をつくる。日本一の河川と言えば、信濃川。中部地方は日本一の工業地帯。太平洋側は、トヨタ、ヤマハ、ホンダなどの自動車産業。日本海側は、福井のメガネフレーム、新潟の刃物・洋食器。
近畿地方:滋賀・京都・兵庫・三重・奈良・大坂・和歌山。伊勢・熊野がある三重・和歌山は、都をかこむ国々だった。京都・奈良と言えばかつての都。忍者の街、甲賀は滋賀、伊賀は三重。近江牛・松坂牛・神戸牛、と美味しい和牛のふるさと。どのブランドも、但馬牛をルーツとする。
中国地方:鳥取・島根・山口・広島・岡山。萩は山口、津和野は島根。萩・津和野、といっしょに言われることが多いので、山口県の観光地とおもいがちだけど、津和野は島根。鳥取と言えば、鳥取砂丘。砂丘は砂漠とは違って、乾燥によるものではない。風によって運ばれ長い年月を経て堆積したもの。実は、日本一の砂丘は鳥取砂丘ではなく、青森の猿ヶ森砂丘、だそうだ。なぜ日本一の猿ヶ森砂丘があまり知られていないのかというと、人が入ることができないから。自衛隊の訓練場で、砲弾の着弾試験場だから、危険につき一般人立ち入り禁止、ということだそうだ。知らなかった。出雲大社は島根、厳島神社は広島。
四国地方:香川・徳島・高知・愛媛。四国山地があって、実は西日本で一番高い山は愛媛にある石鎚山(標高1982m)。現存天守閣がある12のお城のうち、4つも残っているのが四国。丸亀城・宇和島城・松山城・高知城。ただし、四か所を一度に回るのは結構たいへん。四国の大きさ、侮れない。
九州・沖縄地方:大分・福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島・宮崎・沖縄。九州には7つしか県がないのに、なんで九州??旧国名だと、9個あったから。備前とか筑前とか、、、。「あんたがたどこさ」の肥後とか。屋久島・種子島は鹿児島県。雲仙普賢岳・阿蘇山・桜島・新燃岳と、火山がたくさん。おかげで温泉もたくさん。
沖縄は、1872年に明治政府が琉球王国を支配下にした。1945年、太平洋戦争で米軍が占領。1972年に日本に返還された。今年は、返還150年だった。
と、ほんとに、ちょっとだけ覚書にしたけれど、やはり地理を頭に入れておくことは、基本の基本かもしれない。地図が頭に入っていると、歴史であれ、新聞の記事であれ、場所が思い浮かぶ。場所が思いうかんで、その土地の気候風土・歴史などと繋げることができると、出来事をより身近に考えることができる。
国際ニュースを聞いたときに、都市の名前や国の名前がピンとくるのは、やはり世界地図ともリンクしているときだろう。
地味だけど、やっぱり、地理って大事なんだな、なんて思った。
そういえば、むかし、実家の子供部屋の入り口に、大きな日本地図をはっていたような気がする。あと、日本地図のパズルもあった。県がバラバラのピースになっているパズル。裏返しにして、形から何県か当てる、って遊んだ記憶がある。大きな地図って、今でも売っているんだろうか。世界地図も日本地図も、壁に貼ったら便利だろうな。色気ないけど。
とても分かりやすく書かれていて、図も多いので、さ~っと読める。
まさに、学び直しにお薦め。
ちなみに、著者の後藤さんは、『読むだけですっきりわかる日本史』と言う著書もあるそうだ。ちょっと、気になる。。。
大人の学び直しに良い一冊。日本史も、読んでみようかな。
やっぱり、読書は、楽しい。