推しのエコノミー
仮想一等地が変えるエンタメの未来
中山淳雄
日経BP
2021年10月18日 第一版第1刷発行
新聞の書評か、広告か?忘れてしまったのだけれど、面白そうだったので図書館で借りてみた。
なんて、派手な装丁、、、、。
著者の中山さんは、1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了、社会学専攻。カナダの MC Gill大学 MBA 修了。リクルートスタッフィング、 DeNA、 デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ・マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を設立。
エンタメ業界の方らしい。
はじめにで、「私は『エンタメ経済圏』に関する研究者であり、コンサルタントである。」と書いている。自分で言うのだから、そうなんだろう。 そして、いきなり、「グレート・コンジャンクション」(偉大なる接合)と言う言葉が飛び出す。木星と土星が重なる20年ごとの時代の節目のことで、これまでの「土の時代」=金銭・物質・権威が重視される時代から、「風の時代」=知性・コミュニケーション・個人が重視される時代に変わる、っていうこと。2020年12月22日が、その境目だったそうだ。
はぁ???なに?スピリチュアル??
と、なんだかよくわからないけれど、読んでみることにした。
目次
はじめに エンタメ経済圏のグレート・ミューテーション
第1章 メガヒットの裏側で進む地殻変動
第2章 「萌か」から「推し」へ、ファンの変化から見る「風の時代」
第3章 エンタメの地政学
第4章 推しエコノミーの確立へ
「推し」と言う言葉に興味を持ったのは、年下の友人が韓国の俳優に夢中になっていて「推し活楽しいよ」と言っていたのを聞いて、なんじゃそりゃ?とおもったのがきっかけだった。 エンタメの世界で、楽しみ方、お金の使い方が「推し活」によって変化してきている、ということらしい。
本書の表紙裏に抜粋された文章によれば、
”「推す」は貴重な時間資源の投下によって行われる。基本的には未来永劫それが続く前提で有限な時間資源を投じて行きたい。
『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』というアニメがあるが、実は推しが武道館に行くことを避けたいと思うファン真理も同時に存在する。
安パイなコンテンツを求める人が増えると、新奇なものが展開されづらくなる。ある程度ブランドがあり、約束されたコンテンツに人々は群がるようになる。
大ヒットがさらに大 ヒット するという現象は、今後さらに強くなるだろう。
浮動ユーザーを味方につけるためにファンが必要であり、インフルエンサーが必要になる。「このコンテンツは安パイだよ。時間を費やしてもその体験は無駄にならないよ」と言う信号をブランドとして送る必要がある。」
はぁ、、、なるほど?
『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』なんて、アニメ知らないけど、、、。そういう、世界があるのね、
感想。
う~~~ん。いわゆるエンタメにあまり興味のない私には、なんだかエンタメ業界の解説本のようでいて、ふ~~~~ん、って感じだった。ま、ちょっと勉強になった。
さら~~っと読み。
「推し」と言う言葉は、「萌え」から変化してきたらしいが、「萌え」が廃れて、「推し」が勃興してきたのだという。
「萌え」は、対象への内的な感情のありよう、姿勢であるけれど、「推し」はキャラ・タレントに活動として何かを与える、一緒に何かをしていく事を重視しているのだそうだ。
へぇ、、、、、。
もともと、宝塚やジャニーズファンの女性ファンがやっていたようなことを、乃木坂46やNiziUに男性ファンがやるようになってきた、それが「推し」なのだそうだ。
へぇ、、。
内的「萌え」から外的な「推し」への、変化。それがここ数年で起きているという。
著者によれば、この変化には、「家族」との関係が大いに関係しているのだ、と。
50年前の日本社会には恋愛→結婚→出産という大きな物語が共通認識として存在していた。サラリーマンの夫・専業主婦の妻と子供という典型的な近代家族像が、幸せの形だった。ところが、1980~90年代の緩やかな自由化の中で、必ずしも結婚をゴールとしない恋愛も当たり前になってきた。恋人と、結婚相手は、違うの、、、ってやつだ。そして、独身で恋愛にはあまり興味がなく、でも自分のことは愛している趣味や好きなことにはお金も時間も使うという人々がこの2020年代の「推し」のブームの一番ボリュームゾーンとして育っているのだそうだ。
なるほどねぇ。。。
確かに、恋人でも友達でもない人に、時間もお金も費やすのが「推し」だとすれば、その余裕が或るゾーンがそれなりのボリュームで存在しないと、市場としてなりたたない。いやぁ、日本経済は停滞しているといわれるけれど、そこに費やすお金があるのなら、まだまだ娯楽に費やせる余裕があるということじゃないか。はたして、それが持続可能な成長なのかは疑問だけれど、、、。
しかし、なぜ、キャラ・ブランド、にそこまでお金や時間を費やせるのだろう。。
私には、ちょっと、理解できない。。。
好きなミュージシャンのコンサートに行くっていうのはわかるけれど。推し活というのは、そんなレベルじゃないらしい。まぁ、握手券のためにCDを何枚も買う、って一昔前の行動も、いってみれば「推し」の始まりだったのだろう。
まぁ、夢中になれる対象があるというのは幸せなことだけど。
第3章のエンタメの地政学、というのは、タイトルが面白い。エンタメにも地政学があるのだそうだ。いきなり、クラウゼヴィッツの『戦争論』から「戦争をどういう状態で終結指せるかという結末構想がなく、戦争を開始するものはいない」という言葉が引用されている。飛躍しているなぁ、とおもうけれど、「成長・拡大思考には、ゴールが必要」ということだ。ビジネスの競争を、戦争と重ねるか、、、。
エンタメの世界も、グローバル化の流れがあり、それによってエンタメの地政学が重要になってきたのだ、と。なるほど。
そして、著者によれば、日本による世界戦の終着駅は「オタク経済圏」だそうだ。ニッチで高品質な商品・サービス・プラットフォームを作って運営すること、それが日本エンタメの目指す道なのだ、と。
日本発で世界に広がったエンタメは、沢山ある。鬼滅の刃、ポケモン、古くはキティーちゃんやドラえもんも。それらもグローバル化の波の中でサバイバルしていくには、ニッチで高品質が求められるのだと。
エンタメも、製造業も、おんなじ何だね。
いつの時代もどこの業界も、ニッチ対応ができること、高品質であることというのは、競争力強化につながるということだ。
いつの時代も、品質はいいほうが良いに決まっている。
日本のエンタメは、品質高いんだろうな、と思うけれど、私はそこに「推し活」をしたいという欲望は沸いてこない。
なんだか、違う世界のことのように、第三者的視線で読んでしまった。
ふぅぅぅん、こういうことを研究している人もいるんだね。
ま、面白いと言えば面白かった。
でも、やっぱり、エンタメにはそんなに興味ないかなぁ。。。
ま、頑張れ!日本のエンタメ!
ちなみ、私もキティちゃんは嫌いじゃない・・・。
ポケモンGoは、3日で飽きた。
鬼滅の刃は、映画も漫画も面白かったけど、、、それどまり。
アイドルは全く興味なし。
お金の使い道は、人それぞれ。
経済活性化のためにも、お金は正しく使おう!!
推し活する人は、頑張って!
私は、違うところにお金を使う・・・。
なんとも、日経BPっぽい一冊だった。
この装丁も、もうちょっとなんとかならんのかね、、、なんてね。
図書館で借りて読むなら、いいかも。
それにしても、「風の時代」って、コロナになってから、たまに耳にすることがあったけれど、こうして文字で出てきたものを読んだのは初めて。
「風の時代」= 知性・コミュニケーション・個人が重視される。
なるほどね。たしかに、高度成長の時代、バブルから、景気停滞。物の価値観が変わってきていると思う。それが、星のはなしになるのか。地球も、所詮、星の一つってことか。そういう、流れには、抗わない方がいいかもな、なんて思う。
時代の流れに乗ろう。
でも、流れに流されるな。