『誰にも負けない努力』 by 稲盛和夫

誰にも負けない努力
仕事を伸ばすリーダーシップ
Strive Harder than Anyone Else
稲盛和夫
稲盛ライブラリー編 
PHP
 2019年2月26日 第一版第1刷発行


図書館の棚で目に入ったので、借りてみた。
PHPの発行で、さら~~~っと読める。

どのような本かと言うと、本書の説明から抜粋しよう。

”本書は PHP 研究所経営理念研究本部と京セラ稲盛ライブラリーによる「共同研究会」のたまものである。 PHP 研究所は、松下幸之助氏の講話録を元にした書籍を数多く世に送り出して来られた。稲盛ライブラリーのメンバーがその経験と知見に学ぶことを目的に研究会が開催され本種はその活動から生まれた。”

とのこと。 

本来は出版を企図しないものだったけれど、PHP研究所から「昨今のリーダーの未熟さが引き起こす企業や組織の不祥事を見るにつけ、これからの日本を背負う若い世代のリーダーに向け、述べられている哲学をきちんと伝えるべきではないか」と言われ、悩める世のリーダーの役に立つならと出版をすることにしたという。

 

感想。
まさに組織のリーダーのための本。
脱サラ後の私には直接関係ないかな?と思わなくもないのだが、タイトルにあるように努力ということで言えば、万人に共通だろう。

2019年の本であり、また講演そのものも1980年代のものも含まれ、やや、今の時代にはそぐわなくなった表現もあるように感じるが、おっしゃっていることは、一貫している。

謙虚に、真摯に、努力すべし。

この一言につきるかもしれない。
これは、リーダーでなくても、だれでも共通だ。

一方で、組織という点で言えば、リーダーに必須の教訓があり、場合によっては不協和を起こすものを排除すべし、という強い意思も語られている。 

 

目次
第1章 思いを実現する
第2章 努力を重ねる
第3章 強い意志を持つ
第4章 人格を高める
第5章 人を育てる
第6章 組織を生かす
第7章 創造する
第8章 挑戦する

各章に、稲盛さんの講演での言葉の抜粋が記載され、そこに稲盛さんの解説がついている。まさに、研究会に参加した人たちと同じように学べる一冊。PHPらしい、一冊。

全てが、誰にも当てはまるものではないと思うけれど、うん、そういう原理原則があって、具体的にどうするのかは、自分で考えればいいんだな、と思う。

 

覚書として、目次にもなっているトピックスを列挙しておく。

1 潜在意識に到達するほどの強く持続した願望を持つ
2 強い思いを持つ
3 大きな夢を描く
4 ど真剣に考える
5 純粋な心で願う
6 美しい心で着地する
7 神の加護を受ける

8 誰にも負けない努力をする
9 仕事を好きになる
10 さらに努力を重ねる

11 自らの道は自ら切りひらく
12 まっすぐに目標をめざす
13 困難に正面から取り組む
14 もうだめだというときが、仕事の始まり
15 感性的な悩みをしない
16 闘争心を燃やす

17 心を高める
18 人格を高め、維持する
19 反省ある毎日を送る
20 謙虚にして驕らず

21 大善小善
22 部下への愛情を持つ
23 厳しく叱り、笑顔で励ます
24 部下を見抜いて、登用し、育てる
25 「鉄力場」を踏ませる
26 やらせてみる

27 ビジョンとミッションを確立する
28 自分に惚れさせる
29 仕事の意義を説く
30 仕事への誇りを持たせる
31 エネルギーを注入する
32 率先垂範する
33 私心をなくす

34 人間の無限の可能性を追求する
35 楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
36 心のままになる
37 今日よりは明日、明日よりは明後日

38 チャレンジ精神を持つ
39 能力を未来進行形でとらえる
40 飛び石は打たない
41 「見えてくる」まで考える
42 必ず成功させる
43 リーダーが得るもの 

 

精神論的なものが多い。でも、自分が誰より努力しないと、社長はできない。社長は仕事しているときだけでなく、24時間会社のことを考えているものだ、とおっしゃっている。
1980年代だと、まさにそういう時代だったのだろう。
今もそうすべきということより、そのようにしてきた時代があったのは事実だし、それだけのことをしてきた稲盛さんの言葉だから、重みがあるともいえる。

 

働き方は、時代で変わってきたと思うけれど、私心をなくす、驕らない、努力する、世のため人のためを思う、、というのは、やっぱり経営の哲学として常に土台になるものだと思う。

 

先日、以前の職場の営業機密を持ち出したとして、すしチェーンの社長が逮捕された。なんと、なさけないことか。。。まぁ、世の中にはニュースになっていないだけで、残念ながら同様のことは沢山起きているのだと思う。

サラリーマンをしていた時代は、私も部下に、「退職後も社内機密は他言しません」という誓約書に署名してもらっていたし、私自身も退職するさいに署名している。署名させるというのはただの儀式であって、人間として当然のことだとおもうのだが、、、。
会社に恨みつらみがあって意図的に情報を漏洩させるケース、本人が自覚なく漏洩につながるケース、、、色々あるとおもうけれど、やっぱり、人間としての倫理観というのか、、、。意図していなかったとしても、それはそれで、思慮が浅すぎる、、、。

 

色々と、心に響く言葉が続くのだけれど、中でも今の私に響いたのは、

27 やらせてみる

の中で語られていた、

真のリーダーは教育によってつくるものではなく、「探す」ものなのかもしれない。まだ、未熟と思えるような人でもいいから、マネージャーやリーダーをやらせてみる。どんどん交代させていく。敗者復活も十分ある。そうすると、今まで見えなかった潜在的な才能を開花させる人が出てくるはずだ。”

という話。

 

メーカーでサラリーマンをしていた私は、「モノ作りは、人づくり」なんて、偉そうに言っていた時期があるのだが、人なんか、他人には作れない。人は、自ら育っていくしかない。だから、その可能性を「探して」成長をサポートする、ただそれだけなのだろう、、、という気がしている。

 

そして、その会社の中での適正があるかどうかは、会社の中での問題でしかない。世の中で活躍できるということと、会社の中で活躍できるということは、まったくもって次元が違う。

 

会社の中でしか活躍できない人をつくるのは、罪だ。。。そんな気さえする。でも、組織というのは、そういう人を作り出す可能性が高い。。。というか、そう育ってしまう可能性が高い。

 

もう一つ、どういうことかな?と思ったのは、

15 感性的な悩みをしない

ということ。

稲盛さん曰く、

”済んだことに対して反省はしても、感情や感性のレベルで心労を重ねるのではなく、理性で考え、新たな行動に移るべきなのです。そうすることが、人生を素晴らしいものにしていくのです。”

と。反省した後は、ケロッとわすれて、くよくよ悩むな、と。確かに。反省はすべきだけれど、いつまでもくよくよしていると前に進めない。何かあっても、「命まで取られないだろう。生きているだけでもまだマシではないか」と自分に言い聞かせて、その苦労を克服していくことが大事、だと。

 

なるほど。

私は、感性的な悩みはしていいと思う。逆に感性的に悩めないようでは人間がつまらない。ただ、いつまでも引きずるな、っていうのは大事だ。悩むときは大いに悩めばいい。でも、切り替える。それが大事なんだと思う。

 

そう、生きているだけで儲けもん、ってね。

 

30代で海外赴任をしてからだろうか、私の口癖の一つに、

「死にゃーせん」

というのができた。

電車に乗り遅れたって、飛行機が飛ばなくたって、数日間物を食べなくたって、、死にゃーせん。

大丈夫、なんとかなる、ってね。

 

稲盛さんの言葉がつまった一冊。

リーダーでなくても、背中を押される気がする。

根性だけではなく、理性で考える。

そして、前に進む。

 

いま、前に進みたいだれもにお薦めの本かな。

 

たまたま目に入って読んだ本だけど、PHPの本はそれをどうとらえるかによって、楽しめる。説教と思わず、いいもん拾った!くらいの気持ちで読むといいかもしれない。

『誰にも負けない努力』は、簡単ではないけれど、してみようかな、という気持ちになること、そして、一歩だけでも踏み出すこと、それを後押ししてくれる一冊。

 

やっぱり、読書は楽しい。