『硝子の塔の殺人』 by  知念実希人

硝子の塔の殺人
知念実希人
実業之日本社
2021年8月10日 初版第1刷発行 

 

先日の、目黒のBarつながり。
マスターに、『再雇用警察』は、そんなに楽しめなかったんだよねぇ、という話をしたら、本書『硝子の塔の殺人』はすごいから読んでみて、と。

megureca.hatenablog.com

なんでも本屋大賞に推薦されているらしい。

図書館で借りようと思ったら、すごい予約者の数。まだ文庫本になっていないので、単行本で1980円。税別。買おうかと思ったけど、やっぱり推理小説に2000円は高いなぁ、、、と思って、メルカリで800円で購入。即日送ってもらって、読んでみた。

帯には、おびただし宣伝の文字。

”作家デビュー10年、実業之日本社創業125年 記念作品
ミステリを愛するすべてのひと人へ
読みたい本ランキング第一位

当作の完成度は、一世を風靡したわが「新本格」時代のクライマックスであり、フィナーレを感じさせる。今後このフィールドから、これを越える作が現れることはないだろう(島田荘司

ああびっくりした、としか云いようがない。これは僕の、多分に特権的な驚きでもあって、そのぶん戸惑いも禁じえないのだが、、ともあれ皆様、怪しい「館」にはご用心!(綾辻行人)”

”500ページ、一気読み!
知念実希人の新たな代表作誕生

作家デビュー10年 実業之日本社創業125年 記念作品

雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、
ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!”

 

正直、島田荘司さんも、綾辻行人さんも読んだことがないので、よくわからないのだけれど。。。本書の登場人物たちが、ミステリーおタク達という設定で、会話の中に、数々のミステリー作家、作品が織り込まれている。その中に、彼等の名前や作品も引用されている。

 

感想。
面白いけど、盛り込みすぎで、やりすぎ感が、、、、。
まぁ、ミステリーというのは、このくらいの方が面白いのかなぁ。
様々なトリック、暗号にサイエンスが織り込まれているのだけれど、分子生物学専門家の私から見ると、いやいやそれは詰めが甘い、、、と言いたくなるところがあったり。。
ま、でも、これだけたくさんのアイディアが織り込まれているのはすごい。
ミステリー作家、作品が色々とトリックの解明にも織り込まれているので、ミステリー好きな人には、最高に面白い作品なのかもしれない。面白かった。
でも、私にとっては、蔵書にしたい本ではないから、だれかにあげちゃうか、さらに転売するか?!単行本は、場所をとってしまうので。。。

 

著者の知念さんは、1978年沖縄県生まれ。東京慈恵医科大学卒、日本内科学会認定医。2011年島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を『レゾン・デートル』で受賞。最注目のミステリー作家、だそうだ。

 

なるほど、内科医であれば、遺伝子関係については詳しいわけだ。本作品では、遺伝子治療、DNA、ALSが一つのキーワードになっている。

 

トリック、ネタバレなしで、ちょっとだけ内容覚書。

【目次】
プロローグ
一日目
二日目
三日目
最終日
エピローグ

事件が起きるのは、本のタイトルの通り、硝子の塔。
塔の主人、神津島は元生命工学教授で企業との間に様々な特許契約をむすび、大金持ち。その神津島の主治医として雇われているのが主人公ともいえる一条医師。
ある日一条は、診察ではなく、神津島が主催するパーティーのために硝子の塔を訪れる。一条はその日を、神津島を殺害する絶好のチャンスとして、毒殺を思いつく。一条の妹は、ALSの難病を抱えており、そのための新薬が開発されたのに神津島が特許訴訟を起こしたために薬が使えなくなってしまったのだった。

パーティーの当日、よばれたのは次の6人。

・一条遊馬:神津島の主治医で、妹の介護のために務めていた病院を退職。
・加々見剛:地元の刑事。
・碧月夜:20代。自称、名探偵。事実、警察にたのまれて難事件を解決した経験あり。異常なまでのミステリー好きで、難事件解決が何よりの愉しみ。
・夢読水晶:TVでも活躍する霊能力者。全身ピンクに包んだ、厚化粧の中年女性。うそかほんとか、霊感はあるらしい。
・久流間行進:73歳。もと一級建築士だが、今はミステリー作家。館の主人、神津島は久流間のミステリー講座をうけたことがある。ただし、神津島の作家の才能は無し、、と判断。
・左京公介:久流間の作品ふくめ、ミステリーを得意とする編集者。

 

そして、館にもともといたのが4人。
神津島太郎:館の主人。大金持ち。一度、発作で倒れてからは、仕事は引退して悠々自適な硝子の塔くらし。
・酒泉大樹:茶髪の兄ちゃん。館にやとわれた料理人。料理は天下一品。
・巴円香:20代後半の可愛いメイド。酒泉は円香のことが好き。
・老田真三:老齢の執事

と、雪のふる或る夜、パーティーのために館に集まった客と従業員たちは、いきなり主人、神津島の死体を見ることになる。
そして、警察に電話をしたものの館への一本道は雪崩で通行止めに。その後、電話もつながらなくなり、、、

雪深い山に閉じ込められた客人たち。そして、館の人々が次々と殺されていく。

神津島は、毒殺らしい。
翌日には、老田が胸を刺されて。
その翌日には、巴も胸を刺され、、、。

と、密室殺人事件が続く。

これこそ、私の出番とばかりに事件解決をしきろうとする碧。神津島を毒殺したのが自分だとばれないように画策する一条。。。

だがしかし、、、、。

 

ネタバレになっちゃうので、ここまでにしておこう。

 

伏線&伏線。。。

正直、前にもどって読み返さないと、そのトリックというか、根拠がわからない。

と、そんな長編ミステリー。
単行本で、498ページ。
分厚いけれど、一気に読んでしまう面白さがある。 

 

でもって、あれ?これはもしかして続編を書くつもりなのかな?という最後のどんでん返し。

 

ファンには、たまらない面白さなんだろうな。

 

ま、時間つぶしに良いかな。

仕事がひと段落して、ホントにしばらく余暇だわ、って時に一気に読むといいかも。

細切れによんだのでは、前とのつながりがわからなくなって、難しいばかりかもしれない。

だから、ミステリーって読みだすと止まらなくなるのだろう。

 

本書は、最初に塔の構造見取り図がついているのだけれど、それをじっくりみながら読み進めると、次に起こりそうなことがわからなくもない。ミステリーは、時間軸と空間軸を両方頭の中に描きながら事件を紐解いていくと、なるほど、、、だからこんな凝ったつくりなわけね、となる。

 

頭の体操、気晴らしに、ミステリーは面白いのかもね。

ま、こういう本も、面白い。

しかし、私にとっては満足感にはやや欠ける。。。

私は、いったい何を求めているのだろう???

 

まぁ、いっか。

色々読んでいると、そのうち満足できる本に出合えるのだろう。

とはいえ、時間は限られている。

やはり、これは違う、と思ったら読まない勇気も大切。

時期を変えて読んでみると、また違うかもしれないから、その時が来るまでそっとしておくっていうのも大事。