『ハックルベリ・ーフィンの冒険』のあらすじ。
昨日の(上)のストーリーの続きから。
村を飛び出して川を下り続けるハックとジム。
次に出会ったのは難破船。そこにいたのは、仲間を撃ち殺そうとしている悪党どもだった。悪党の難からも逃れたハック。次は、ハックが連れをかくまっていることがばれて、引き合わせろといわるピンチ。連れがホントに父親で白人だというなら合わせろと。ハックとはとっさに、「天然痘なんで、誰も助けてくれないんだ」という。あわてて、ハックから逃げ去る悪党たち。
再び、漕ぎ出そうとしたとき、今度は、走ってハックたちを追いかけてくる怪しい男二人に出会う。ジムを追っているのかと慌てて逃げようとしたけれど、「かくまってくれ!」の声に、ハックは思わず、二人をカヌーに乗せてしまう。
こいつらが、本当にとんでもないペテン師で、そのペテンイベントに巻き込まれていくハック。
自分たちは、王様と侯爵なのだといって、町の人をだます。ハックには、二人があやしいってすぐわかった。
「この二人の嘘つきどもが王様や公爵どころか最低のイカサマ師とペテン師だってことぐらいおいらにはすぐわかった。けどおいら何も言わなかったし、素振りにも見せずに胸の中にしまっといた。それが一番いいんだ。そうしときゃ喧嘩にもなんねぇし、トラブルにもなんねー。王様だの公爵たの呼んでほしいなら、そうしてやるよ。それで筏の上が平和なら。それとジムには言ってもしょうがねえから言わなかった。父ちゃんからはろくすっぽ何も教わらなかったけど、父ちゃんみたいな連中とうまくやっていくには、好きなようにさせておくのが一番だってことだけは教わったから。」
イカサマ師とペテン師は、様々な形で訪れる村の人をだましてお金を巻き上げる。とんでもない悪党から、はやく離れたいと思うハックだったけれど、なかなかうまくいかない。
(上)は、ここまで。
(下)に続く。
ハックルベリー・フィンの冒険(下)
マーク・トウェイン Mark Twain
土屋京子 訳
光文社 古典新訳文庫
2014年6月20日 初版第1刷発行
2018年8月20日 第2刷発行
本の裏の紹介には、
”ジムとの筏の度には危険がいっぱい。さらに途中で道連れとなった詐欺師どもは厄介事ばかり引き起こす。だが、ハックを本当に悩ませていたのは、お尋ね者の逃亡奴隷ジムをどうするかという問題だった。そして彼は重大な決断を下すアメリカの魂といえる名作決定役で登場。”
イカサマ師とペテン師のろくでもない詐欺に耐えられないハックは、とっととこの二人をおいて、ジムと二人で川を下りたいと思うのだが、なかなか逃げ出す機会がない。
ある村では、遺産相続人のイギリス人の振りをして、村中の人をだまして、相続人の娘たちの財産まで巻き上げようとするイカサマ師とペテン師。二人の召使の振りをさせられていたハックだったが、二人の非人道ぶりに我慢がならなっくなったハックは、娘のひとりメアリに、あの二人は偽物だ、と本当のことを話してしまう。激怒したメアリ。でも、ここでハックが二人を裏切ったことがばれると、ハックとジムに危険が迫る。メアリにしばらくだまされたままの振りをするように頼むハック。
二人のことを怪しいと思っていた人は村人の中にもいた。そして、とうとう、二人が偽物だとばれる時、ハックは用意周到にジムといっしょに逃げ出す。ところがどっこい、二人も村人からの吊るし上げから逃げ出し、筏に飛び乗ってきた。
結局、逃れられないハック。
「おまえ、俺たちをおいて逃げようとしたな!」と迫る二人に、「速く逃げられる準備をしただけだ」と言い訳をするハック。。。
そしてまた、別の村で同じようなペテンを働く二人だったが、こんどは、なんと、ハックが気が付かない間に、ジムを逃亡奴隷として売ってしまったのだ!!!必死になってジムを探していたハックは、どうやら、ジムが二人によってフェルプスという農場に売られたらしいことを村人に教えてもらって知る。
大変だ!どうしよう!!どうしよう!!
本当にジムが誰かに売られたのだとすると、自分もジムをかくまっていた罪が・・・。
自分の罪を隠すために、ハックは、ミス・ワトスンに「ジムはミスター・フェルプスがつかまえて、お金をくれればかえしてくれるます」と手紙を書いた。
書いてみて、ちょっと気持ちが楽なったはずのハックだったが、いつも、おいらのためにずっと見張り番を続けてくれたり、迷子になりかけた時に再会したら大喜びしてくれたジムのことを思った。おいらが筏に天然痘の人間が乗っているっていって、男たちを追っ払ってジムを助けた時のことを思い出した。あんとき、ジムはすげえ感謝して、おいらのことを、ジムの一生でいちばんの友達だって言った。
今書いた手紙が目に入る。
「どうしよう? おいら、手紙を拾い上げて、手に持った。からだがプルプル震えた。ここでどっちかに決めたらそれっきりだってわかってたから。おいらは1分ぐらい息を止めて考えて、それから自分に言った。
”いいや、おいら、地獄に行く”
そんで、おいらは手紙を破った」
ハックは、地獄に行ったとしてもジムの自由を守ることを決めたのだ。
多分、物語のクライマックスは、ここだろう。
ハックが、自分の意思で、ジムの心は白人男子の心と何も変わらないということを悟り、ジムを守ることを決める。
そして、ペテン師の二人の前では、「おいらの黒ん坊をかえせ!!」といって泣きわめいてみせる。ペテン師は、だったら、かってに取り戻しに行ってこい。フォスターってやつのところだ、と、ハックに嘘を教える。どこまでも悪党な二人。ハックはダマされたふりをして、とうとう、二人から離れることに成功する。もちろん、フォスターなんてやつのところにはいかない。ハックがめざしたのは、村人が教えてくれた「フェルプス農場」だった。
無事にフェルプス農場にたどり着いたハックは、どうやって農場のひとに話そうかと悩んでいたのだが、訳が分からない間に、どうやら一家の「待ち人」と勘違いされて、大いに歓迎されてしまう。なんとか話をつくろって、一家の待ち人の振りをしていたハックだったが、話をよくよく聞いていると、なんと、その待ち人は「トム・ソーヤ」だったのだ!!
「トム・ソーヤ」の振りなら、朝飯前!!ハックは、トム・ソーヤとして一家に歓待される。しかし、いや、まてよ、ということは、じきにトム・ソーヤがここにやってくる。そこで、トム・ソーヤが「やぁ、ハック!」なんていったら大変だ!!
ということで、ハックは自らトム・ソーヤが到着しそうな場所へ出向いて、一家のみんなより先に、トム・ソーヤと再会する。そして、訳を話すと、トム・ソーヤも得意の冒険話で、ジム救出作戦におおのりに。
その後、トム・ソーヤの考える壮大な救出作戦による数々のドタバタの後、ジムは結局解放されることになる。しかも、トムの命を救ったよい黒人として。また、同時に、ジムの所有者だったミス・ワトスンが亡くなったことが知らされ、ジムはほんとの自由を手にする。
めでたし、めでたし。
と、そんなお話。
ハックのべらんめぇ口調で語られる冒険物語。とことん根性悪な大人たちの中をしっかり切り抜けていくハック。
きっと、ハッピーエンドなんだろうと安心していながらも、はらはらして読んでしまう。
物語としても、面白い。黒人奴隷をかくまうということが、どういうことを意味したのかが肌感覚でわかっていないと、ハックの史上最大の決意!は、わからないかもしれないけれど、とにかく、自分の逃亡の旅が、ジムの解放のための旅に変わっていったのだ。
(上)の「警告」をおもいだせば、語ってはいけないのかもしれないけれど、やっぱり、深いお話だ。
自由意志とは、なんだろうか。
自由の権利とは、なんだろうか。
こんな時代をへて人々が手に入れてきた自由とは何なんだろうか。
黒人奴隷だったジムが手に入れた自由。
『トム・ソーヤの冒険』では学校にもいかせてもらえない貧乏だったハックが手に入れた自由、。
手に入れた後、自由はどう変化するのか。手に入れたのは本当に自分が望んだ自由だったのか。
自由、権利、当たり前と思っていることも、かつての人々の努力によって手に入れられてきた。
私たちはだれもが歴史の延長の中で生きているのだ。
たまには、そんなことに思いをはせてもいい。
面白かった。
やっぱり、古典って濃いな、と思う。
読書は、楽しい!