『歴史新書 なぜ地形と地理がわかると幕末史がこんなに面白くなるのか』  監修:大石学

歴史新書 なぜ地形と地理がわかると幕末史がこんなに面白くなるのか
大石学 監修
株式会社洋泉社
2017年10月19日 初版発行

 

図書館の「本日返却された本」の棚で見つけた。『夜明け前』を読んで、幕末~明治維新って、まだまだよく理解できていないなぁ、と思っていたので、借りてみた。

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表紙には
”ペリー来航から西南戦争まで
「なぜその場所だったのか?」から見直すと、
幕末維新期の複雑な人間関係がよくわかる

政治・経済・文化・社会
新しい歴史の楽しみ方 ”
とある。

確かに、地理の勉強と歴史の勉強はセットのようなモノで、位置関係がわからないと、歴史の出来事が物語として頭に入ってこない。本書は、第1章~第3章まで、全部で50の質問に応える形で歴史が綴られている。質問&回答になっているので、とても分かりやすい。
すらすらと読める。そして、なるほどなるほど、と思うマニアックなものから、考えたことがなかったけど、なるほどそういうことか、という気付きまで。

 

監修者の大石さんは、1953年東京生まれ。東京学芸大学卒業、同大学院修士課程修了、筑波大学大学院博士課程単位取得。現在、東京学芸大学教授。NHK大河ドラマ新選組!』『篤姫』『龍馬伝』『八重の桜』『花燃ゆ』『西郷どん』などの時代考証を担当。2009年に時代考証学会を設立し、同会会長を務める、とのこと。

なかなか、楽しい一冊だった。
幕末を勉強するなら、お薦め。他に、古代史や戦国時代のバージョンもあるようなので、いつか読んでみようと思う。

 

目次
第1章 激動の幕末動乱  1853~67
第2章 揺れる明治新政府  1868~77
第3章 大名・志士をめぐる謎

 

第1章と2章が、歴史の物事の検証で、3章が人の検証、という感じだろうか。本書を読んで、ようやく尊王攘夷」と「公武合体」の派閥がどう変遷してきたのかが分かった気がする。会津、薩摩、長州、土佐といった藩としての物語。函館、横浜、神戸といった港町を中心にした物語。たしかに、なぜその土地でその事柄が発生したのかということを頭に入れて考えると、歴史の物語として理解しやすく、歴史興味が深まる一冊だった。

とくに、へぇぇぇ!って思ったことを覚え書き。

 

Q1: なぜ、ペリーは江戸に直接来なかったか
→ 幕府将軍宛ての書簡を携えながら江戸には来航しなかったのは、当時の国際法では江戸湾は内海に相当し、それは日本固有の領土とみなされていたから。

 

Q5: なぜ、海軍伝習所は長崎に築かれたのか
→ ペリーの黒船が来る前から、オランダ商館長ヤン・ドンケル・クルティウスは、幕府にアメリカが開国強要にくることを警告していた。実際に、黒船が現れて、初めて幕府はクルティウスの助言に耳を傾けるようになる。そして、クルティウスの助言で海軍関連の教育機関をつくることになった。当時、唯一日本と国交を持っていたオランダですら、日本国内を自由に移動することはできず、教育機関の先生となれるオランダがいたのが長崎だったので、海軍伝習所は長崎につくられた。

 

Q8: なぜ、井伊直弼桜田門外で暗殺されたのか
→ 井伊直弼が暗殺されたのは、1860年安政7年)3月3日。上巳の節句(現在のひな祭り)のために、江戸在勤の大名は全員江戸城での祝賀に参加する決まりだった。桜田門は、登場する大名が出退勤時の通用門だった。井伊直弼桜田門を通過するのは間違いない。かつ、井伊家の江戸藩邸桜田門が大変近い位置関係にあった。徒歩でも10分ほどで移動可能な距離で、この近距離で襲われることは想定していなかった。かつ、当日は雪が降っていたために、直弼の護衛たちは刀の柄に防水用の袋をかぶせていて、とっさに反撃できなかった。
ということで、ものの15分ほどで、直弼の首はとられた。

 

Q9: なぜ、和宮降嫁の一行は中山道を通ったのか
まさに、『夜明け前』にでてきた場面だ。半蔵たちが、馬籠で一行をむかえていた。
→ 京都から江戸に向かうのに、東海道という選択肢もあったけれど、一行は中山道を通った。それは、東海道が江戸方面を守る防備の都合から架橋を禁じられており、雨で氾濫しやすい大井川や安倍川で足止めされる可能性があったから。さらに、道の狭い中山道のほうが、不審者を発見しやすいという利点もあった。

 

Q18: なぜ、長州は薩摩と手を結んだのか
→ 長州は、幕府に引き取引を禁じられてしまった。龍馬が、薩摩藩名義で武器・軍艦をイギリスから購入して長州藩へ転売する、ということを提案した。長州は武器が手に入るし、薩摩は貿易により資金が調達できる。そして、龍馬の仲介により、犬猿の仲だった両藩はついに手をむすぶ。
武器購入の取引や輸送は、龍馬が所属する「亀山社中」が担当した。のちの「海援隊」。

 

Q32: なぜ、淡路島は兵庫県編入されたのか。
→ 廃藩置県前、淡路島は徳島藩主の蜂須賀氏の封土だった。しかし、内輪モメをして事件を起こしていたので、明治政府は1876年の再編で淡路島を兵庫県編入した。

 

なるほどねぇ、ということがたくさん。

これを読んでから、『夜明け前』を読めばよかった、、、と思うくらい、目からウロコがあった。

 

やっぱり、日本史は、まだまだ勉強が足りないなぁ、と思う。

2023年は、日本の歴史と地理に注目しつつ、読書を楽しもう、と思う。

 

やっぱり読書は楽しい!

 

 

ちなみに、本書に出てきた出来事を日本地図にすると、、、こんな感じ。

地図は、もちろん、本書から写し取ったモノで、私がフリーハンドでかけるわけがない・・・・。