陰謀論とは何か
権力者共同謀議のすべて
副島隆彦
幻冬舎新書
2012年9月30日 第1刷発行
先日、秦正樹の『陰謀論』を読んだとき、そもそも「陰謀論」って何なんだろうという事を疑問に思ったので、図書館で「陰謀論」を検索して出てきた本書を読んでみた。副島さんといえば、先日佐藤さんとの共著の本を読んだけれど確かに発言がなかなか過激な人だなぁとは思ったけれどこれまであまり認識したことの無い人だった。
本の裏には、
”「陰謀論」は日本では「一般的によく知られた事件や歴史の背後に別の策略があったとする、信憑性に乏しい説」とされるだが元のconspiracy theory(コンスピラシー・セオリー)を正しく訳せば、「権力者共同謀議理論」。1963年ノケネディ大統領暗殺をきっかけに米国のデモクラシー(民主政治)が特殊な権力者達に操られているのではないかという疑念と怒りから広まった理論である。
陰謀論者の烙印を押された著者が、陰謀論の誕生と歴史、フリーメイソンに始まる代表的陰謀論の心理を解き明かす。日本一わかりやすい全貌究明本。”
とある。
本書の紹介欄によれば、副島さんは1953年福岡市生まれ。早稲田大学法学部卒業。外資系銀行員、予備校教師、常盤学園大学教授などを歴任。副島国家戦略研究所を主宰し、日本人初の「民間人国家戦略家」として講演・執筆活動を続けている、とのこと。
「はじめに」で、編集部との対談がでてくるのだが、副島さんは、陰謀論者だったらしい。。。。つまり世間で信じられていることと違うことを主張する人。本書の中では彼が主張するいくつかの「陰謀論」が紹介されている。
確かに、記憶に残るものとして、「人類は月面着陸していない」という話がある。この説が副島さんが言い出した説というのは認識していなかったかが、確かに、一時世間を盛り上がらせた。2004年徳間書店から発行された『人類の月面着陸は無かったろう論』という書籍は、「日本トンデモ本大賞」(2005年)、さらに「ベスト・オブ・ベスト」(2011年)も選ばれているらしい。。。
H3ロケットの成功を心から願っていた私としては、、、、月に行ってないなんて話は信じたくない・・・・けど、ちょっと、どんな本なのか読んでみたい気はする。。。。
それにしても、H3ロケット、、、残念・・・。
目次
第1章 陰謀論とは何か
第2章 1980年代に日本で広まった陰謀論
第3章 今もある「権力者共同謀議」
第4章 イルミナティ=フリーメイソンの歴史からわかること
第5章 月面着陸は有ったか、無かったか論、再び
感想。
いやぁ、、、どこまで本当なんだか、よくわからなくなる。。。。本気で言っているのか、、、面白がって言っているのか、、、いや、本人は真面目に語っている。でも、型破りすぎて、陰謀論、と言われてしまうのだろう。
本書のなかで、2012.9.5現在のウィキペディアが引用されていたので、再度、2023年3月現在のウィキから引用すると、
”陰謀論(いんぼうろん、英: conspiracy theory)とは、なんらかの有名な出来事や状況に関する説明で、根拠の有無にかかわらず「邪悪で強力な集団(組織)による陰謀が関与している」と断定したり信じたりしようとするものである。この言葉は、偏見や不十分な証拠に基づいて陰謀の存在を訴えているという、否定的な意味合いを持って使われることが多い。”
とある。
ようするに、ちゃんとした証拠が有るとは言えないけど、強固に主張される個人的主張、って感じか。
フリーメイソンが世界を牛耳っているという話は、物語好きな人の話としてよく聞くけれど、中には、「爬虫類型異星人が秘密結社の正体」とか、どう考えてもギャグだろう、、、っていうのもある。流石に、副島さんも爬虫類型異星人説は、否定している。
副島さんは、「陰謀」と「権力者共同謀議」は意味が違うと言う。日本人にとって陰謀といえば悪巧みのような謀。日本史の中では12世紀平家打倒計画して発覚した「鹿ケ谷の陰謀(1177年)」が代表的といって紹介されていた。
ついでに、日本史のおさらいをしておくと、鹿ケ谷の陰謀は、 後白河法皇の近臣の藤原成親・藤原成経・西光・僧俊寛らが中心となって、平氏を倒そうとした計画。密告により発覚し、西光は死罪、成親は備前国に配流後殺害され、ほかは薩摩国鬼界ケ島に流された。そうそう、先日の井上靖『後白河院』にでてきた。
陰謀といえば、陰でこそこそと動いて、大きな権力者を倒そうとする悪だくみ、、って感じか。そして、悪質なやり方で何かをやらかそうとする小物悪たちで、結局はつかまって犯罪者にされてしまうのが日本人の考える陰謀。それは、コンスピラシーと言われる大きな悪とは違うのだ、と副島さんは言う。
う~~ん、まぁ、どっちでもいい気もするが、、、。もっと大物がやらかすのが、コンスピラシー、というのが副島さんの説。
私にとっての、コンスピラシ―は、2021年1月6日にアメリカ合衆国で起きたトランプ支持者による議会襲撃事件、、、みたいな感じだけれど。この事件が起きた時、アメリカのニュースでは、毎日のように、conspiracyが連呼されていた。
ま、いずれにしても、本書の中での陰謀論は、証拠がよくわからない主義主張。。。
たとえば、東北の震災とそれによる福島第一発電所の事故は、テロだとか。。。。
当時のウィキに掲載されていた陰謀論について、副島さんの解説が紹介されている。
1.ユダヤ人陰謀論説
2.新世界秩序陰謀論
3.財閥陰謀論、王室陰謀論
4.アポロ計画陰謀論
5.地震兵器
6.中央銀行陰謀説
7.ノーベル賞陰謀説
8.冷戦やらせ説
9.日露戦争陰謀論
10.ホロコースト捏造陰謀説
11.真珠湾攻撃についての陰謀説
12.イラク戦争陰謀説
13.ジョン F ケネディ暗殺についての陰謀説
14.ダイアナ元英国皇太子妃暗殺疑惑
15.エイズウイルス陰謀説
16.新型肺炎 SARS 鳥インフルエンザ陰謀説
まぁ、、、どれも、、なんだかなぁ、、、、。
副島さんも、別に陰謀論というまでもなく、解釈の一つだろう、、、ということも言っている。しかし全面否定しているわけでもない。ただ、「5.地震兵器」、「10.ホロコースト捏造陰謀説」は、ありえない、と断定している。
また、 副島さんは、福島原発事故については、「あれくらいの微量の放射能では誰も死ない」と明言している。こういうと、陰謀論者といわれるのだけれど、といいつつ。。。
そりゃそうだ。
フリーメイソンについては、今でも世界を牛耳っているという話があるけれど、、、実際に重要な役割をする集団であるというのは変わりないのかもしれない。
フリーメイソンは、もともとは、石工の集まり。むかし、フランスに長く住む人から教えてもらったのは、かつて城を建設するときに働いた石工は、秘密の避難路などを知ってしまうので、城の建設後には殺されていたという話。それでは、腕のいい石工がどんどんいなくなってしまうので、組織として秘密を守るという約束を交わすことで、石工が建設の後に殺されるしきたりをなくすことにした、という。だから、フリーメイソンは、「城の秘密を守る人」の集団として始まったのだ。そして、片目のあのマーク。そりゃ、なんだか、怪しげだ。。。。日本でも、結構フリーメイソンのマークを見かけることがある。数年前に訪れた、長崎のグラバー邸の中でも見かけた。
副島さんは、今でもフリーメイソンの影響力があることは否定していない。
ほか、否定していない影響力としては、イルミナティ、ロックフェラー財団、ロスチャイルド、ダボス会議、、、。ダボス会議の始まりは、アメリカとヨーロッパの談合会議だったのだそうだ。ま、談合って、言い方をかえれば陰謀ともいえる。。。
結局、陰謀うんぬんというより、「金」「権力」の話ではないのだろうか。。。
金を動かすところに、何らかの戦略があるのは当たり前だし、そこに、表にはでてこない思惑がるのだって、当たり前だろう・・・。
副島さんも、そのようなことを言っている。
まぁ、全体的に、いろんな説があるんだなぁ、、、という感じで、へぇ!すごい!って思うような内容は、、なかった。
ひとつ興味深いのは、ケネディ暗殺に関する調査書は2039年に公開される予定だそうだ。まだ、16年先だけど、どんな文書がでてくるのか、、、、。
まぁ、陰謀論だろうが、マスコミが報道するニュースだろうが、なんでも鵜呑みにするよりは自分の頭で考える習慣が大事なのだと思う。
フェイクニュースなのか、本当のニュースなのか、陰謀論だって紙一重だ。
自分の頭で考えるための基礎知識を蓄えておく。それが一番。
そして、自分の生活にはあまりにもかけ離れた世界の話は、時に無視していいこともある、、、。
世の中、色々な人がいるなぁ、、、と思った一冊だった。