お金の未来
山本康正
ジェリー・チー
講談社現代新書
2022年5月20日 第一刷発行
広告で見かけて気になったので、図書館で予約して借りてみた。
著者の山本さんは、1981年大阪府生まれ。東京大学大学院で修士号を取得後、三菱東京UFJ銀行米州本部に就職。その後、ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。卒業後 Google Japanに入社。大企業の幹部に対し、テクノロジーを活用したビジネスモデル変革等のデジタルトランスフォーメーションを支援する。現在はベンチャー投資家として活躍。
もう一人のジェリー・チーさんは、シリコンバレー育ちの台湾系アメリカ人。1984年アメリカ生まれ。米スタンフォード大学工学部経営工学科卒業。在学中に日本留学を経験し、日本に魅了される。卒業後はバークレイズキャピタル証券に就職し、東京勤務。その後、中国北京にて証券自己勘定取引会社を設立・経営。 Google Japanでも勤務。
Google Japan の同僚が共著で出版した本、ってことらしい。
裏表紙説明には、
”実は私たちにとっての「当たり前」が変化しつつあります。普段使っているお金は果たして最適な形なのか、手数料って必要なのだろうか、給料はなぜ電子マネーではなく毎月現金か振込で処理されるように法律で決められているのか。。。
こうした問いを真剣に考えるべきタイミングが到来しているのです。普通に生活してる中ではわざわざ立ち止まって考えることがなかったお金を巡る常識や仕組みが根底から覆されようとしているわけです。 ”とある。
要するに、ブロックチェーンを使った暗号資産などが開発され、国の管理するお金とは別の流れがどのように起こり、どう変化していくのか、という話。
究極をいってしまえば、ビットコインでも、NFTでも、買ってみればわかる、、、って話だった。
目次
第1章 お金に何が起きているのか?
第2章 ビットコインとブロックチェーンの革命
第3章 大きく盛り上がる 「NFT」 の世界
第4章 お金の未来
なるほど、政府発行通貨とは異なる仕組みのブロックチェーンで新しい取引が出来るようになった、ということはわかる。確かに、中央集権化していない暗号資産は、新しい世界をつくる。 果たして、それが便利なのか???それは、読み終わっても、まだしっくりこなかった。
暗号資産であろうと、政府の発行する通貨であろうと、物の価値を代替する物でしかない。交換の手段の一つでしかない。そんなに大きく変わるのか??便利になるのか?
というのが、感想。
結局のところ、通貨であろうと、暗号資産であろうと、その交換手段をつかって、欲しいものがある人には便利だけれど、そうでない人には、ただの「モノ」でしかないのだ、、ということに気が付く。
海外にいて、10000円紙幣をいくら持っていても、両替しない限りは価値がないように、ビットコインだって、換金しない限りは、価値を持つ世界が限られる。中央集権化していない暗号資産を便利だと感じるのは、政府管理の外で資産を動かしたい人だけなのではないだろうか???
投資としてビットコインを買うというのは、ビットコインの活用の一つかもしれないけれど、それは、為替で儲けようというのとたいして変わらないのでは???
ビットコインをつかって、物を交換できる世界が広がれば、一般の人にも身近になるのかもしれない。
暗号資産ではないけれど、電子マネーだって、似たようなものだ。友人との会話でも、「PayPayで払っていい?」というのが増えた。PayPayを使用していない人には、交換手段にはならない。。。。
著者らによれば、暗号資産のメリットは、
・決算が一瞬でできること
・銀行などを介さずに自分で管理できる
・国内外を問わず同じやり方で送金できる
・匿名で取引を行うことができる
一方で、デメリットとしては、
・1度送金したらもう取り戻せない
うっかり、ポチっても、キャンセルできるクレジットカード払いとは違う。
これらのメリットは、果たして誰にとってメリットなのか???という気がしてしまうのだ。
たしかに、海外送金が簡単にできるのはいい。先日、仕事の支払いがアメリカからの送金だったのだけれど、手数料だけでもかなり取られるし、送金されて、受け取るまでも日にちがかかる。。。手数料はともかく、送金にかかる時間は、銀行取引でも技術革新で速くなる気がするけど、、、。
手数料がかからないというのは、確かにありがたい。でも、手数料で儲けている事業がたくさんある現実、暗号資産だけが交換手段になる未来は、まだまだずっと先だろう、、、という気がする。
匿名で送金できるのも、マネーロンダリングや詐欺、犯罪、、、、といったあやしい響きが、、、。
中央集権管理ではなく、分散型管理だから改竄が困難というのは、たしかに、信頼性が高い。でも、匿名っていうのが、、、。
「NFT」については、たしかにデジタル世代には便利でよい手段なのかもしれない。
NFTとは、Non-Fungible-Tokenのこと。デジタルの何らかの資産(動画とかイラストとか)が代替不可能な唯一無二のものであることを証明するデジタル書類。NFTもブロックチェーンの技術の上で可能になっている。
デジタルコンテンツを保有したい人にとっては、暗号資産でその代替不可能が保障されたり、暗号資産で売買できるということが大きなメリットなのだろう。そういう人にとっては、たしかに暗号資産が使えるということは、便利な世界になっているのだろう。
著者らは、ビットコインの普及が、NFTといった技術の普及にも貢献した、という。ビットコインは、当初は送金する事しかできなかったけれど、ブロックチェーンの技術をつかって、様々なプログラムを実行できるようになり、身分を保証したり、ゲームで遊ぶこともできるようになっているという。
そして、いまではゲームをすることで稼ぐ世界もあるのだという。ここで著者らがいっているゲームというのは、コンピューターゲームでネットの世界で遊ぶことをいっているのだろう。まぁ、従来のアナログの仕事で稼ぐのだって、ある意味ゲームみたいなものなんだけどなぁ、、、と、思う。
デジタル世代が考えるゲームというのは、コンピュータゲームかもしれないけれど、昭和世代にとっては、アナログな世界のゲームが中心だ。そして、アナログ世界の好きが高じて、仕事になって稼ぐ、ってことは結構ありえる。
研究開発だって、いってみれば新しいものを探すゲームみたいなものだし、ものづくりだってゲームに例えることだってできる。目標達成したらポイントをもらえるのがゲームなら、目標達成してお給料がもらえるのだって、ゲームともいえる。ゲーミフィケーションという言葉があるくらいだ。
何というか、面白い本だったけれど、今、目の前にあるものばかりに目がいっているなぁ、という感じがある。貨幣の発生と比較して暗号通貨を論じてもらえると、もっと経済学・社会学として面白くなりそうな気がする。暗号通貨、ブロックチェーンについてはすごく詳しいお二人なのだと思う。その新しい技術について知りたいのであれば、ちょっと、おすすめの一冊。
最後の章では、では、どうやって何から暗号資産を始めるの??という話がでてくる。ま、自分で買ってみることだ、と。
そりゃそうだ。それは大いに共感する。
何事も、自分でやってみないことには、体感しないことには、ね。
そして、私も、ビットコインみたいな投機的なことはやらない!と思っていたのだけれど、試しに、ちょっとだけ買ってみたら面白いかもな、と思った。
デジタルアートにはあまり興味はないのだけれど、食べず嫌いかもしれないな、と、、、。
そして、最後にでて来る「イノベーター理論」は、大いに参考になる。別に、暗号資産に限った話ではなく、なにか新しいものが市場に出た時、初期市場がメインストリームになるまでには、大きな溝がある、、という話。
初期市場は、新技術の市場導入により、イノベーター、アーリーアダプターを育てる。そして、導入された新技術がメインストリームになっても、イッキに普及が進むのではなく、アーリーマジョリティーが更に市場を高め、普及はピークに達する。そして、人気がピークに達した後に追随するレイトマジョリティーで市場は維持され、さいごに遅滞者がついていく。。。。
市場初期がメインストリームになっていくには、暗号資産のようなものであれば法整備が必要になる。つまり、ある程度の人が使うようになって、初めて国が動くような規模になっていく。
どんな技術であれ、最初はイノベーターたちが細々と使用を開始するのだ。PayPayだって、使用者が増えなければ価値が無かった。メルカリだって、メルカリ使用者が増えなければメルカリペイの価値は無かった。
イノベーターやアーリーアダプターがいて、世界は変化する。しかも、成功の裏には多くの失敗、、、いや「うまくいかない方法を見つけた」経験がある。
ビットコイン、ちょっと、買ってみようかな。。。株でも投資信託でも、自分で保有すると日々の経済動向を見るのが習慣になる。調べてみると、暗号通貨は、楽天ウォレットなら、1000円から買えるらしい。でもって、楽天ポイントとの交換も可能。楽天での買い物に使える。。
う~~~ん、でも手数料は???
もうちょっと、調べてからにしよう・・・。
って、思っていたら、2023年3月10日日経新聞に、メルカリが一円からビットコインを売買できるサービスを開始したって。やっぱり、すでにレイトマジョリティーかもしれないけれど、ちょっと、保有してみようかな・・・。
さら~~~っと、羽田~福岡の飛行機でほぼ読み終わった。
簡単に読める本なので、ビットコイン、NFTなどに興味があれば・・・。
少なくとも、政府の発行する通貨が暗号資産にとってかわられる日は、私が生きている間には来ないだろう・・・。それは、通貨の堕落の世界であり、政府が衰退する世界だろうし、、、ね。