美しい本 湯川書房の書物と版画 @神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

美しい本 湯川書房の書物と版画
@神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

 

「面白い企画をやっているよ」、と本づくりのプロに教えていただいたので、みにいってきた。鎌倉、鶴岡八幡宮から北鎌倉駅方面に歩いてすぐの、神奈川県立近代美術館

『美しい本 湯川書房の書物と版画』 という企画展。

 

パンフレットの説明よれば、
湯川書房は、湯川成一(1937‐2008)によって、1969年に大阪市で設立。1998年より京都市に事務所を構えた。辻邦生『北の岬』を皮切りに、作品選定から装幀、造本に至るすべての工程を一人でになう限定品を専門に出版を行う。独自の審美眼で作家の才能を見出し辻邦生『安土往還記』、望月通陽『出埃及記』、村上春樹『中国行きのスロウボート』など次々と刊行。書房には文学者や美術家が集い、日夜文学談義が行われたという。俳句や書画、骨董にも造詣が深く、俳人永田耕衣からグラフィックデザイナーの渡邊かをるの本まで、幅広く手がけた。”

と。

 

展示場にあった年表によると、最後は胆蔵を患って亡くなったそうだ。そして、湯川書房の活動は終わってしまった。本展は公立美術館として初めて湯川書房の全貌を紹介する回顧展とのこと。

 

鎌倉駅から、小町通りを散歩しながら歩いて行った。3月のぽかぽか陽気。平日の真昼間だというのに、小町通りはすごい人だった。しかも、学生?高校生?、制服は遠足か?!?!なぜか、若者がたくさんでごった返していた。

小町通りで、りっぱなミモザの木を発見。参道の桜はまだ固いつぼみだったけれど、ミモザは満開で綺麗だった。

 

美術館は、小町通りを抜けて、鶴岡八幡宮を左手に見ながら、八幡宮裏をぬけるとすぐ。北鎌倉へ向かう道のちょうどカーブの曲がり角のところにある。
入場料、大人250円。運動不足だという母を誘っていったのだが、65歳以上は100円
コンパクトな美術館ではあるけれど、安い・・・。

入り口で、「大人1枚とシニアを1枚」というと、「シニアの方は、お年を証明できるものをなにか」と言われた。80歳を過ぎてる母は、どうみても65歳以上に見えると思うのだが、、、ま、さすが公立施設の窓口さん・・・。母は、シニアパスとやらを見せていた。二人分350円を小銭で払おうと思ったら、母と私の小銭を合わせても、340円、、、10円足りない、、、あと、母のお財布に5円玉一個。実は私のお財布にも5円玉一個。でもなぜか、こういう窓口で5円玉を出してはいけないような気がした…。5円玉、ごめん。そして、現金支払いは断念して電子マネーで支払った。

チケットを買って、中に入ると、入場券は2階で、といわれて、すぐに階段を登る。展示会場への入り口は、普通にガラスの自動ドア。100円コインロッカーに荷物を預けて、展示会場へ。コインロッカーは、100円戻ってくるタイプ。

常設展のような施設はなく、いきなり企画展場。学校の教室2.5個分ってくらいの広さだろうか。クルっと見てまわって、30分くらいかな。駆け足の人なら、10分でみちゃうだろう。

展示されていたのは、数々の本。装幀が布でできていたり、和紙のような感じだったり。そうだそうだ、こういう布の表紙で函に入った本って、むかしはあった。たしかに、本そのものが美術作品になっていた。思わず、じっくりと見入ってしまった。こんな本、、、欲しい、、、。


村上春樹の『中国行きのスロウボート』は、真っ赤な表紙に金の文字。美しかった。他にも、背表紙のタイトルが刺繍で書かれていたり、ページそのものが布の版画だったり、綴じるのに、美しい紐が使われていたり。言葉ではうまく説明できないのだけれど、本そのものが美しい。

そして、「本は文字を読むだけのものではない」という解説文に、思わずうなずいてしまう。湯川書房で使用した紙は、本物の和紙。ページをめくるごとに、その指が和紙の厚みと柔らかさを感じたはずだ。たしかに、限定本。一冊くらい、本棚にあったらどんなに豊かな気持ちになれるだろう。。。と思った。

本の他には、挿絵に使われたイラスト、シルクスクリーン木版画などなど。版画家・柄澤齊の作品が多く飾られていた。柄澤齊って、しらなかったけれど、これが版画なの?って思うような繊細な線で描かれた肖像画が印象的だった。フランツ・カフカ肖像画は、その顔の中に、、もう一つの顔が隠れていて、、、ドキッとする。『クロノスの盃』という作品は、絵の中に宇宙が閉じ込められたような、、、


作品のいくつかは、HPで紹介されているので、興味があったらこちらから。

美しい本―湯川書房の書物と版画 | 神奈川県立近代美術館

 

本って、やっぱり紙がいいなぁ、とおもった企画展だった。

帰宅してから、自宅の本棚に函にはいった本なんてあるかな?っておもって探してみたら、あったのは、学術書ばかりだった。
昔は、函に入ったハードカバ―の本ってあったよなぁ。。。

 

本の物理的な興味と言えば、『広辞苑をつくるひと』、『本を味方につける本』が面白い。

megureca.hatenablog.com

 

本は、芸術品だ。

文字とイラストの組み合わせも芸術だ。

ちょうど、そんなアートの物語を読んだところだったので、つくづく思った。

 

地味だけど、素敵な企画展だった。教えていただかなかなったら、気が付かなかっただろう。こういうことを教えてくれる知人がいるというのも、素敵なことだ。

 

ちなみに、帰りに今年初めての鶴岡八幡宮にお参りしてきた。いつも、初詣にいくのだけれど、今年は機会を逸していた。近代美術館&鶴岡八幡宮。なかなか良い散歩コース。段葛(だんかずら)の桜が咲くのは、4月かな。。。ちらりとも咲いていなかった。また、来月に鎌倉に来た時には、寄ってみるかな・・・。

 

そう、そして、先ほどの5円玉は、お賽銭にちゃんと役立った。

”ごえん”がありますように、、、と。

 

鎌倉散歩は、楽しい。