『じゃむパンの日』 by 赤染晶子

じゃむパンの日
赤染晶子(あかぞめあきこ)
Palmbooks
2022年12月1日 発行

 

2023年1月21日の日経新聞の書評に出ていて、気になった。図書館で借りて読んでみた。書評の中では、”日常を描きながら、不思議でおかしな世界へと読者をいざなう。”とあって、なんだかほんわかしてのんびりと読めそうな感じだった。
加えて、タイトルがなんとなく、気になった。
『じゃむパンの日』アンパンじゃなくて、ジャムパンでなくて、じゃむパン。なんだか昭和の香りがして、気になった。

著者の赤染さんは、1974年京都府舞鶴市生まれ。2010年『アンネの日記』の作者と現代の女子外語大生を結びつけた『乙女の密告』で2010年に芥川賞を受賞。書評のなかでは、その「7年後に早世した作家の初のエッセー集」、と紹介されていた。

しかし、図書館で予約して待っている間に、そんなことはすっかり忘れていた。私は、『乙女の密告』を読んだことがないし、赤染さんのこと自体をよく知らない。

そして、読んでみて、なんだこりゃ!?
なんて、肩の力の抜けた、柔らかというのか、、、本当に日常であり、日常の些末などうでもよさそうなことが、面白おかしく、楽しく綴られている。
読んでいて、脱力感がすごい・・・。
一時はやった、たれぱんだ的な・・・・。

で、何だこの著者は??とおもって、著者経歴を見直して、早世されたことを認識した。

そうか、この作者は、もう、新たな作品を生み出すことはないのか。。。
そうおもったら、このどうしようもなく力の抜けた、このエッセイが、とてつもなく貴重で、愛すべきものに思えてきた。

感想を一言で言えば、ユルイ、、、、。って感じだ。創作物語なのか、本当に本人が経験したことなのかも、わからなくなるくらい、、、ぽわっとしている。

けど、読んでみてよかった、って感じもある。
すごい感動物語でもなければ、美しい世界が広がるわけではないのだけど。。。

幼稚園の時、金太郎の前掛けをして通園させられていた、とか、近所のニートのおじさんの話とか、、、。
タイトルとなっている「じゃむパンの日」というエッセイは、務めるビルの給湯室の張り紙が剥がれちゃうのをご飯粒で貼り直す日々だったのに、ある日のランチは、大好きなじゃむパンにしてしまった。。。って、、、。
どうでもよいような、、、でも、本人には大問題なような、、、。

こんなにユルイ文章を書く人が、『アンネの日記』をつかったお話を書いていたとは。。

乙女の密告』が、どんな作品なのかが気になった。。。
いつか、読んでみるかも、、な。

200ページ程の単行本だけれど、こんなにゆるく、あっという間に読んだ本はない、、、ってくらいな本だった。

へぇ、、、こういうのね。
装丁も地味だけど。。。なんか、しみいる。

日常でありつつ、不思議な世界に入り込んだ感じ。
ほんと、謎な本だった・・・。 

 

亡くなってしまった著者の本というのは、なんというのか、存在の重みが普通に今生きている人の本とはちょっと違う。

もう、生では聞けない著者の声だからだろうか。

 

なんか、不思議な本だった。