『ワンダーランド急行』 by  荻原浩

ワンダーランド急行
荻原浩
日本経済新聞出版
 2022年12月16日 第1刷

 

日経新聞朝刊の連載だった、らしい・・・。というのも、ずっと日経新聞をとっているけれど、めったに小説をよまず、連載されていることすら、気が付いていなかった。けど、何かで目について、、図書館で予約していた。回ってきたので読んでみた。

 

著者の荻原浩さんは、1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、 広告制作会社勤務を経てフリーのコピーライターに。1997年 『オロロ畑でつかまえて』で、小説すばる新人賞を受賞してデビュー 。2005年 『明日の記憶』で山本周五郎賞。他にも著者多数。

 

読んだことあるような、無いような、、、、。私の記憶の中では、ファンタジー的な物語を書く人、という印象なのだが、何を読んでそう感じていたのかは忘れてしまった。

ま、読んでみた。
新聞連載が、2021年1月4日~12月28日。441ページの厚めの単行本。

 

感想。
長い。。。。

新聞連載だから仕方がないか、、と思うのだけれど、ストーリーが単純な割に、長い、、、、。正直言って、途中で飽きた。半分くらいはフォトリーディングで飛ばし読み。サラリーマンの夢物語。いやいや、悪夢の物語?、自分の別の人生に出会うファンタジーパラレルワールド

 

Amazonの紹介文を引用すると、
”似ているが……ここは私の世界じゃない――
作品初出は、コロナ禍で行動制限中の日経新聞
主人公が迷い込んだ異世界が現実を先取り?

 

ある朝、通勤と反対方向の電車に、魔が差して乗ってしまった。山の中をさまよい、戻ってくると、誰もマスクをしていない!

今朝の会議はユーツ。こんな生活、いつまで続けるんだ……
ぐだぐだ考えているうちに出てしまった下り電車は「急行」。
次々と通過していく駅を見ながら40歳の野崎修作は「ろくでもない毎日からの脱出」とサボりを決める。スーツで山に登り、「日常」に戻ると……
ん? 何かおかしい、街も家も会社も。

どこかで聞いたような疫病が世界を分断していた。新宗教の持つ票があらゆる選挙を左右するらしい。「正義」に縛られた人たちはネット上で……
ここは私のいるべき場所じゃない。
私の世界へ帰るのだ。 ”
と。

 

電車で異次元の世界へ連れていかれる物語。自分の妻が、違う人格になっていたり、はたまた、昔の友人が妻になっていたり。時代も、ワープする。

こういうお話、好きな人は好きなのかな。

ファンタジーといっても、楽しい夢がいっぱいってかんじでもない。

 

主人公が迷い込む異次元の世界の描写には、ジョージ・オーウェルの『1984』を思わせるようなディストピアを感じなくもない。あるいは、戦時中なのか・・・。コロナ禍での作品なので、規制、強制、同調圧力、、、いろんなものにとらわれていた時代が反映されている、ってことかな。

 

読み終わって、なんだか、楽しかったっていうよりは、まぁ、世の中なるようにしかならないよね、、、って感じ。ワクワクする感じではない。でも、これだけ世界をあっちこっちに移動する物語を描くにあたっては、最初にすごく構想したのかな、と途中からは作品に入り込むというより、作者の気持ちになって読んでみた。

 

主人公が、最初に辿りついた下り電車の停車駅には、小さな売店しかなかった。そして、その売店にいた、小さなおばあさんが、実は不思議な世界の主人公でもあるのだ。最後に、おばあさんの正体?!が明らかになる。おばあさんは、主人公にであったことで、ひとつの謎解きが達成できて、明るい未来へ歩き出だすのだ。言ってみれば、現実逃避に走ったサラリーマンが、おばあさんの人生に大きな希望を与えた。逃げた先で、誰かの役に立てこともある、、なんてね。

 

様々なストレスの中にさらされている現役サラリーマン、大切な人を待つことに人生をかけた一人の女性(おばあさん)。どっちの人生が幸せなのか。それは、本人が決めること。待ち人は決して帰ってこなかったとしても、待ち続けたい人がいるおばあさんは、一人でも幸せだったかもしれない。妻にいつもブツブツ文句をいわれる妻帯者よりも?!

 

自分の道は、自分で切り開くしかない。
でも、出会いが、誰かとの出会いが、大きな助けになることもある。
人との出会いを大事にしよう。

そんな、かんじかな。 

 

主人公は、迷い込んだ世界から元の世界に戻るために、自分で行動する。そう、何度も謎の下り電車に乗るのだ。今の世界から抜け出したかったら、自分で行動するしかない、ってこと。

 

まぁ、面白いといえば、面白い。けど、長かった・・・が一番の感想。

ゆるりとした電車の旅のお供にいいかもね。