『老化のプログラムを書き換える』 by ベッカ・レヴィ

『老化のプログラムを書き換える
年齢の固定概念を打ち破り より長く健康で生きる』
ベッカ・レヴィ 著
筒井祥博 監修
大星有美 翻訳
講談社
2024年1月23日 第1刷発行
Breaking the Age Code (2022)

 

2024年5月4日の日経新聞の書評で紹介されていた本。記事では、
”いつまでも若くあり続けるにはどうすればいいか――。タイトルから長生きの秘訣を期待して手にとると裏切られるだろう。

公衆衛生学者で心理学者でもある著者は、米国にはびこる年齢差別主義(エイジズム)を「沈黙の伝染病」と称し、痛烈に批判する。新自由主義の下、尊いはずの「長生き」がいつの間にか商品化された。例えば、アンチエイジング(抗加齢)産業。高齢者自身にレッテルを貼り、気がつけば「アンチ高齢者」社会を作り上げたと考察する。

大学院時代の半年間、日本に留学した経験が老化研究を始めたきっかけだそうだ。「老い」は克服するのでなく向き合うもの。そんな真摯なメッセージが伝わってくる。”
とあった。

 

ほほう、なるほど、単なる、アンチエイジングの本ではないのか、面白そう、と思って、図書館で予約してみた。順番が回ってきたので読んでみた。

 

著者のベッカさんは、疫学者。 イェール大学公衆衛生、 社会および行動学部門の学部長。イェール大学進学部の心理学 教授 でもある。 ハーバード大学で心理学の博士号を取得し ハーバード大学医学部の老化部門及び社会医学部門で国立老化研究所の研究員を務めた。肯定的及び否定的な年齢固定観念が高齢者の健康にどのように影響するかに焦点を当てた 研究分野のリーダーでありパイオニアであり、高齢者の健康に対する年齢差別の影響を調査する WHOの取り組みを主導している。

 

目次
序章 アメリカと日本との間で思いついたこと
第1章 私たちの頭の中にあるイメージ
第2章 シニア・モーメントの真実
第3章 高齢者の優れた運動機能
第4章 たくましい脳:遺伝子が運命ではない 
第5章 晩年も発達し続ける精神 
第6章 7.5歳 長く生きる 
第7章 昼間には見えない星たち:晩年の創造性と感覚 
第8章 エイジズム:有害な複数の触手を持つもの 
第9章 個人が年齢から解放される方法:あなたの心を自由にする方法 
第10章 社会における年齢からの解放:新しい社会運動

 

感想。
ははは。。。面白い。けど、こんな分厚い本にしなくても、、、、って感じが、、、。

 

著者がいうのは、「年齢観」=高齢者が自分の年齢に基づいて このように行動するだろうと予測する あるべき姿(メンタルマップ)が、ネガティブな固定概念であると、高齢者の健康を悪化させる、ということ。そして、ネガティブな年齢観が高齢者を邪魔者扱いすることを「エイジズム」(=年齢に対する偏見)と定義し、エイジズムのない社会を作っていこう!っということ。

それが、数々の実験、研究、統計と共に語られている。


うん、そりゃそうだろ、ってことが多いので、素直に共感する。一方で、序章でアメリカと日本を比較しているように、(著者はアメリカで生活している)、アメリカはエイジズムが酷い国で、日本は高齢者が幸せに暮らしている国として描かれている。

ちょっと、こそばゆい・・・。

著者がみた日本の高齢者は、とても幸せそうにみえたみたい。

 

そりゃね、確かに、日本には「敬老の日」なるものまである。でも、その日しかお年寄りを大切にしないんかい!!って、突っ込みたくなる気もしなくもないし、、、。今の日本には、「老害」という最悪の言葉がある。私が大嫌いな言葉だ。いつ、だれがつくったんだ、そんな言葉!って思う。きっと、著者はそんな日本語はしらないんだろうな、、、って思う。ちなみに、一応、広辞苑 第7版によれば、

老害:老人による害の意。硬直した考え方の高齢者が影響力を持ち続け、組織の活力が失われること。

とある。まぁ、そういう限定した使い方であれば、わからなくはないけど、、、硬直した考え方をするのはなにも高齢者にかぎらない。やっぱり、良くない、、不快な言葉だと思う。

って、ちなみにジーニアス英和辞典には、「老害」はなかった。英語にはならないのだろう。

 

本書の中では、自分は年寄りだから、、、って思うこと自体が自分の健康を損なうって言っている。そして、そう思わせるのは、周囲の偏見なのだと。

たしかにねぇ。。。。

 

本書を読んでいて、どうもひとごとのように感じるのは、私の周りのお年寄りは元気な人が多いからか、、、。祖母のひとりは103歳まで元気だった。会いに行けばいつでも私が元気をもらった。どこから高齢者と言っていいかわからないけれど、今現在でもいっしょに遊んでいただいている諸先輩方には、70代でも現役バリバリで活躍している人が多く、私の中では70代は高齢者の範疇にはいらない、、、、。有志の勉強会では、80代の方もいらっしゃるけれど、彼らの知識量、思考の深さ、そして柔軟性は、本当に勉強になる。

たまたま、私が元気で素敵な高齢者に恵まれているのか?

 

本書は、高齢者に対してネガティブな偏見を強く持っていれば、目からウロコかもしれない。私には、そんなのそりゃそうだろ、、、、っていうことが、結構多かった。

 

ポジティブな年齢観をもつことは、7.5年長生きにつながるらしい。そして、身体機能の向上やストレスホルモンであるコルチゾールレベルにも影響するのだと。

また、創造的な仕事は、人生の晩年にピークを迎える人が多いという事例が多数紹介される。ノーベル賞しかり。。。

うん?なんか、最近、どっかでそんな本読んだぞ?!


アーサー・C・ブルックス人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法』だ。

megureca.hatenablog.com

 

アメリカでは、こういう、高齢者を応援するような本がはやっているのか?!?!

 

第7章の「昼間には見えない星たち」って、どういうことかな?って思ったら、要するに晩年になって花開く人も多い、ってはなしだった。例えば、哲学者のイマニュエル・カントは、50代・60代に最も重要な作品の多くを書いた。画家のターナーも60代で視点が拡がり、あの壮大な絵につながった、と。

 

確かにね、ずっとそこにあるのに、昼の間には見えていないだけ。ってことは、私だってこれから先、何かの才能が花開くかも?!?!とかね。うふふ。

 

年齢に対する偏見、私だってないわけではない。やっぱり、まったくの赤の他人で「70歳女性、交通事故」とかニュースで聞いたら、あぁ、、、お年寄りで車の音に気が付かなかったのかな、とか、とっさに身体がうごかなかったのかな、、、とか、勝手に身体能力の衰えた70歳を想像してしまう。

それはそれで、致し方ないとしても、だ、、、、社会として「高齢者だから〇〇はやめましょう」っていうのも、どうなのかね、、、。

 

確かに、超高齢で車の運転を続けているのは、、、危ないからやめて、、、っておもっちゃうけど、車の運転が危ういのは高齢者に限らないし・・・。

年齢に限らず、「或る母集団」として人をとらえることに問題があるのだろう。日本人、外国人、女性、LGBTQ+、未成年、高齢者、、、、。人のことを固有名詞で呼ばないとき、偏見とか固定概念がむくむくと起き上がる、そんな気がする。

 

あとがきに、エイジズムがない街が実は自分の家の近くにもあった、ってはなしになる。そうなんだよ。日本だから、とか、アメリカだから、とかでもない。あくまでもある社会集団のなかで、どういう文化になっているかってことなんだと思う。
そして、それがネガティブなものであれば、そうでないものに変えていこう!っていうのが、著者の主張。

うん、共感する。
けど、今の私の周辺で、あえて「高齢者に権利を!!」と声高に叫ぶ必要も感じていない、、、ってところかな。いや、私が気が付いていないだけかもしれない・・。

 

さらっと読みで楽しめる一冊。

 

まずは、自分に対して、「もう、年だから、、、」っていうのは辞めよう。って、あんまり思ってないし、言ったことないけどね。

つねに、今が人生のピークです。

 

あ、年齢とは全然関係ない固定概念。私は、著者が女性であるということに途中で気が付いた。

”「これだわ!」と私はさけび・・・・。”という訳がでてきたのだ。。。

なぜ、訳者は「これだ!」ではなく「これだわ!」にしたんだろうか。っておもった自分がいて、「これだわ!」を読んだ時に、女性だわ!って思ったのだ。。。。。でも、ん?なんで?って、思考が別次元にとんだ。

ま、あとから、夫の話がでてきたので、女性だとおもわれるのだが。

 

にしても、なんでわざわざ「これだわ!」っていう訳にしたんだろうか・・・。

”I”をどう訳すっかていうのも、日本語ならではの悩みなんだけどね。「私」「僕」「オレ」「拙者」・・・。ま、ビジネス書なら、「私」でいいけど、小説だとどうなんだろう?とかね。

 

言葉って、深い。

 

ちなみに、日本語の「いきがい(ikigai)」という言葉には、直訳する言葉はなく、コスタリカ人は、「人生プラン(plan de vida)」、アメリカ人は「朝起きる理由」、フランス人は、「存在理由(raison d'être)」というのだと、本書の中で紹介されていた。

それぞれの価値観が見え隠れして、面白い。

 

ちなみに、ジーニアス英和辞典でひくと、「生きがい」は、a reason for living

だった・・・。例文「あなたの生きがいはなんですか?」は、「What keeps you going?」だそうな。

 

読書は、楽しい。