駝鳥 だちょう
筒井康隆 作
福井江太郎 絵
六曜社
2015年9月1日 初版第1刷印刷
2015年9月8日 初版第1刷発行
2015年11月1日 初版第2刷発行
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第七章 命に出会い、命を知る」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。
ダチョウ。 表紙は、 大きな目とくちばし が印象的な、ダチョウの顔。かわいい。
作者の 筒井さんは、 1934年 大阪生まれ。 同志社大学卒。 81年『虚人たち』で 泉鏡花文学賞、87年『夢の木坂分岐点』で 谷崎潤一郎賞。 89年『ヨッパ谷への降下』で川端康成文学賞、92年『朝のガスパール』で日本 SF 大賞を受賞 。97年、 フランスのシュバリエー賞・パゾリーニ 賞受賞。 2000年『私のグランパ』で読売文学賞を受賞。 02年、 紫綬褒章受賞。10年 菊池寛賞受賞。 現代日本文学文芸会の第一人者、鬼才。
と、、 あまりにも作品の数が多くて鬼才、 としか言いようがないのだろうが、 私はあまり読んだことがない。 そしてこのような絵本も作っていたとは知らなかった。
絵の福井さんは、 1969年東京生まれ。 多摩美術大学院修了 現在の日本画壇で国際的に評価され 活躍している若手画家の第一人者。 駝鳥を根幹のテーマとしている。
表紙をめくると、
” ダチョウが初めて口を開いて言ったことは・・・・・?
旅行者が沙漠にふみまよった。
旅行者は一羽のダチョウを連れていた
ダチョウはよく彼になれていた
どこまでもどこまでもついていった
旅行者は食べ物を ダチョウと分けあって食べた
眠くなるとダチョウの羽毛にくるまって 眠った。
旅行者とダチョウは何日も歩き続けた
食料がだんだん 残り少なくなってきた
旅行者は食べ物を ダチョウに与えるのをやめた
ダチョウは自分からねだることはなかった
町はまだまだ見えない
2人の旅は果てしなく続いていく・・・・
フィナーレは そおっと 静かに めくってください”
そして、 人の靴の足跡とダチョウの足跡。
感想。
怖いよぉ・・・・・。
怖いよぉ・・・・。
悲しいよぉ・・・・。
なんてお話でしょう。
絵には、ほとんどダチョウしかでてこない。
旅行者の姿は、始まりのページに小さな後姿があるだけ。
お話の中にでてくるダチョウは、一羽なのだけれど、顔だけのアップだったり、細くながいクビが複数本描かれて、それがダチョウの動きのように見えたり。また、色もほとんど黒の濃淡。くちばしにかろうじてピンク。絵本の紙そのものがクリーム色で、そこに墨でえがいたような、落ち着いたトーン。
物語は、旅行者とダチョウの物語なのだが、最初は、仲良く旅している。食べ物も分け合う。ところが、食べ物が底をつきてくると、旅行者は、 ダチョウに食べるものをやるのをやめてしまう。
” ダチョウがじっと見ているので 気が引けたが、食べるものが早くなくなってしまうと餓死してしまう。 いくら 友達だと言っても、 相手はダチョウ である。 人間である自分の命には代えられないと 旅行者は思った。”
食べものをやらなくなってからも ダチョウは旅行者についていく。 そして とうとう 食べ物がなくなってしまう。
ある朝、 旅行者が ダチョウの羽毛の中で目を覚まして気がつくと、 金ぐさりのついた懐中時計がなくなっていた。
「やっ。 お前だな。 時計を飲み込んだのは。 けしからん。」
ダチョウはきょとんとした目で旅行者を眺めているだけだった。
そして 代わりに と言って、 ダチョウの 片方のもも肉を少し引きちぎって食べた。
ダチョウの もも肉を食べてしまうと、 旅行者は再び 砂漠を歩き始めた。 ダチョウもびっこを引きながら旅行者についてきた。
旅行者とダチョウは砂漠を歩き続けた。
旅行者は ダチョウの もう片方のもも肉も食べた。
あの時計はとても高価なものだったから もも肉だけでは元が取れない。お前の胸肉をもらいたいといって、 旅行者はダチョウの 胸肉を食べた。
さらに お前のお尻の肉ももらいたい、と 貪り食った。
ダチョウは骨になりながらも 旅行者についてきた。
旅行者はとうとう ダチョウの内臓にまで手をつけた。
やがて ダチョウは骸骨に近い姿となって、骨と心臓だけになった。
それでも 旅行者は、
あの時計は とても高価なもので、、、、 だからその心臓ももらっていいはずなんだよ。
と言って心臓を掴み出して食べた。
ダチョウの肋骨の中にはただ一つ、ダチョウの飲み込んだ 金ぐさり付きの時計が コチコチと音を立てて ぶら下がっているだけだった。
旅行者は歩き続けた。 完全に骸骨になってしまったダチョウは、 肋骨の中で コチコチと時を刻み続ける時計をぶら下げながら それでもまだ旅行者の後を追って歩き続けた。
ようやく町が見えてきた。
「 そうだ。 私は一文無しだった。 この時計さえあれば、これを売って金に変え、食べ物を買うことができる。」
旅行者が ダチョウの肋骨から時計を取ろうとすると、 ダチョウが初めて口をきく。
「 お前はその時計を取るのか」
旅行者は、時計と引き換えにダチョウの肉をたべてきたはずだ。。。。
旅行者が肋骨の間から時計を抜き取ると、
「そうか」と、ダチョウはうなずき、
「 それならこの眼球は私のものだ。」といって、旅行者の眼球をくちばしでほじり出し、のみ込んだ。。。。
「 この肩の肉も私のものだ。この尻の肉も私のものだ。」
ダチョウは旅行者の肉をついばんだ。
やがて 町の人たちは砂漠から町に入ってきた一羽のダチョウを見て驚いた。
そのダチョウは1体の骸骨を背中に乗せていたのである。
骸骨は金ぐさりのついた時計を握りしめていた。
THE END
こわいよぉぉぉぉぉ。。。。。
何ちゅうお話を絵本にするんじゃ。。。
約束を破った 旅行者が悪い。
ダチョウ だからって、 嫌と言わないからって、、、 相手のお肉を食べた 旅行者が悪い。 じゃあ一緒に餓死すればよかったのか??
ダチョウのお肉を頂いて、 ちゃんと感謝すれば良かったのか???
読み終わって ゾワゾワってする一冊だった。
筒井康隆、おそるべし。。。。。
駝鳥の絵が、かわいいのと恐ろしいのと、、、、。
ついでに裏表紙の絵をよく見れば、、、無数の骨。。。
福井さんの絵もすごい。
う~~ん。
絵本は深い。