戦いと平和のうずまき
スタシス・エイドリゲーヴィチェス 絵・写真
中川素子 企画・文
㈱解放出版社 エルくらぶ
2023年9月30日 初版 第1刷発行
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第八章 戦争を見つめ、平和を祈る」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。
この絵本は、『世界をひらく60冊の絵本』の著者、中川さんが企画・文の作品で、スタシスの絵や写真に、中川さんが文章をつけて絵本にした、という作り方とのこと。
スタシスは、顔を表現した作品が多いとのことで、本作の表紙も人の顔。涙を流しているような人の顔。そして、鳥が他の鳥の目をくちばしで攻撃している絵、壁の穴が人の顔のように見える絵、、、、戦いを見つめる悲しい目。花の中にある目。人びとが避難した後、子どもたちの帰りを待ち続ける鳥の目。鳥は、いつまでも木にとまっていたので、木の枝と同化してしまう。。爆撃で壊された壁。壁の落書き。。。
なんていう、作品でしょう。。。悲しみと怒りが詰まっているようにも感じる。
絵のスタシス は、 1949年 リトアニア 生まれ。1973年 ヴィリニュース 美術大学 卒業。 1980年 ポーランド ワルシャワ へ移住。 創作活動は、蔵書票、ブック アート、ポスター、 彫刻、 演劇、映画など多岐にわたる。リトアニアは、かつてソ連の体制下に属していて、スタシスは自由を求めてポーランドの市民権を得た。しかし、ポーランドでも戒厳令下と経済危機 という不自由な生活を続けなければならなかった。
本作品は、冷たい、厳しい、悲しい現実をまっすぐに見つめているような作品。
本人の顔写真や、孫のレオ君の写真も、図柄の中に織り込まれている。
パステルと目の前に掲げているスタシスの写真の下には、
”「 私たち人間は、 誰もが 戦闘機鳥の力を跳ね返すような確かで強い目の力を持たなければならない。」”
といって、片眼がパステルを持つ手で隠され、もう一方の目が大きく見開かれている。目力って、こういうのだろう、、っていう感じ。
戦闘機鳥、といっているのは、絵本のなかで、鳥が戦闘機のように鳥を攻撃しているところから、空から攻撃してくる戦闘機と鳥とを合体させた表現なのだろう。
鳥はどこへでも飛んでいく。かなしいかな、戦闘機も・・・・。
使われている絵や写真の中には、1986年のものもあるそうだ。鳥が鳥を攻撃している絵は、大地にうもれるように、鳥がいて、灰色の空、たった一本、遠くでたっている枯れている木、そこに、その鳥を攻撃する大きな鳥。鳥は、どちらも似たような青い色をしていて、まるで、ウクライナとロシアに見える・・・。でも、これこそ、1986年の作品。まだ、ソビエト崩壊前。
本作は、「ブック・アート」と言われるジャンルだったそうだ。でも、絵本といわれても、違和感はない。
絵と文章が、大きなメッセージを伝えてくる。
最後のページは、夜の海に浮かぶ月を人の目に見立てたような暗いコラージュと、中川さんの文章。
” 平和で静かな時間。
戦いが終わって、
この優しい世界がいつまでも続きますように。”
ちょっと、しんみりしちゃう一冊。
そして、今朝の海外ニュースも、ガザとウクライナで始まった。なぜ、人間が人間を攻撃するのか。それがretaliation、報復であったとしても、市民を巻きこむ攻撃は正当化できない。軍への攻撃ならいいのか?いや、軍人だって一人一人、ただの市民だ。政治家ならいいのか?いや、政治家だって一人一人、ただの人だ。
人が人を攻撃していい理由はどこにもない。と思う。
なぜ、戦争が起こるのか。なぜ、内乱が起こるのか。
それを知るために、歴史や政治、経済を学ぶのかもしれない。
人間学かなぁ。
わからないことが多すぎる。
でも、思考放棄してはいけない。
自分の頭で、考えよう。
大事なのは、考え続けることかもしれない。
Learn from yesterday,
live for today,
hope for tomorrow.
The important thing is not to stop questioning.