『暗黒自治区』  by 亀野仁

暗黒自治区
亀野仁
宝島社文庫 
2021年3月18日 第1刷発行

 

知り合いが、面白かったといって本を譲ってくれたので、普段あまり読まないミステリーを読んでみた。

 

著者の亀野さんは、 1973年 兵庫県西宮市生まれ。 1991年に渡米し、大学進学。卒業後も米国にとどまり、ニューヨークにて映画助監督やCM 海外撮影コーディネーター/プロデューサーとして約10年間活躍。 帰国後は、映像制作会社、大手広告代理店勤務を経て、広告映像制作会社を仲間と共同設立。同社取締役。 第19回このミステリーがすごい!」 大賞・文庫 グランプリを受賞し本作でデビュー。

ということで、これがデビュー作品らしい。

 

帯には、
”2021年 第19回 「このミステリーがすごい!」大賞。
文庫グランプリ受賞作。
東京が、横浜が、見たこともない異世界に。果てなき逃走、不断のアクションに鼓動が踊る。気づけば、人の絆に、勇気に、胸熱となっていた。犬童一心(映画監督)推薦!
隣国に侵食された日本で、犯人護送車が謎の武装グループに襲撃される。 骨太のディストピア 警察活劇

選考委員を唸らせた 圧巻のアクション 描写!”
と。

 

本の裏の説明には、
” 隣国に侵食された日本列島で拉致 チームの一員にスカウトされた由佳は、旧東京で〈中央〉政府高官の拉致作戦に参加して失敗、警察に銘柄を拘束されてしまう。ところが 神奈川県公安局から国連警察への護送中、由佳を乗せた車両は高速道路で何者かに襲撃される。襲撃グループの目的とは?護送していた神奈川県公安局の雑賀は、とある事情から由佳を逃すべく、逃避行を開始する。”
とある。

 

感想。
へぇ。
面白い。
けど、舞台はちょっと空しい、ディストピア・・・。


しかも、コロナからそう長くはたっていない近未来のディストピア。日本国はなくなっていて、内地=中国や、ロシアが日本を占拠し、支配権を握っている。。。
その想定が、ちょっと、どよ~~んと、ディストピア。だけど、プロットはたしかに面白い。人間模様が面白い。現実離れした展開ではあるけれど、裏社会と表社会と、仲間と敵と、、、まぁ、ミステリーってこういうものか。

銃に関する記述も詳しい。私はあんまり詳しくない世界だけれど、まぁ、いろんな銃器がでてくる。

 

367ページの文庫本。戦闘シーンや警察の尋問シーンはスプラッターな表現が多いので飛ばし読みすると、、、まぁ、数時間で読める。

 

以下、ネタバレあり。

 

プロローグは、 師走の 東京から始まる。SC11-292号蒸気機関車の前で待ち合わせをしている佐野由佳(さのゆか)。

 

SC11-292号蒸気機関車って、要するに新橋駅前のあの機関車広場

 

由佳は、不織布のマスクをしている。20歳にして、プロの犯罪集団の一員となり、犯罪者デビューをしようとしている。待ち合わせの相手であるチームリーダーの樋本保雄(ひもとやすお)は、由佳の教育係でもある。

チームは、銀座方面へ移動すると、ターゲット= 黄延威(ファンイエンウェイ)の拉致を試みる。銀座は、いまでは 国連暫定統治区となっていて、公用語は日本語ではなく「普通語」で、周囲は国連から派遣されているフランス兵らがFN P90(PDW:個人防衛火器)を携えて警備している。

 

黄延威は、和族(日本人)の女が1人で営むバーで飲んでいるところを由佳のチームに拉致される。が、途中で黄が声をあげたことでフランス兵に追いかけられ、由佳はうっかり銃を落としてしまい、拉致チームは作戦放棄!となる。

それぞれに逃亡したチームメンバーだったが、由佳だけが銀座にはりめぐらされた監視カメラに捉えられ、国連暫定統治区の外でつかまってしまう。

 

場面は、1月の横浜。もう一人の主人公・雑賀充希(さいがみつき)が、劉俊熙リュウ・ジュンシー)とともに、由佳の護送引き渡しのために、横浜勾留所にやってくる。劉は、内地からやってきた若者だが、年上の雑賀と同等の三級警督となっている。

 

横浜は、和族自治区となっているが、実態は内地人に管理されている。また、警視庁と神奈川県警の不仲を引きずっていて、国連暫定統治区を管轄する国連警察と、和族自治区を管轄する民警とは、今でも仲が悪い。雑賀らは、公安民警神奈川県公安局のメンバー。由佳の犯罪は、統治区だが捕まったのが自治区だったので、自治区から統治区へ護送する予定になっていた。

 

雑賀は、由佳がかつての上司・佐野の娘であることから、由佳の護送に自ら名乗りをあげたのだった。その由佳の両親は、すでに事故で亡くなっている。

 

そして、雑賀が運転するクラウンで、由佳は護送される。が、陽がおちて暗くなり始めたころ、雑賀はクラウンを尾行するボルボBMWに気が付く。敵はクラウンに向かってライフルを向け、撃ってきた。

高速道路上での、銃撃戦・・・。雑賀は由佳をつれて命からがら襲撃者から逃れ、逃走を始める。

 

そこからは、雑賀と由佳の逃亡物語。雑賀は警察の電話を破壊し、私物の携帯電話だけを使い始める。雑賀は、いったい何者なのか??

 

街中に張り巡らされた監視カメラをかいくぐり、雑賀が頼りにする闇の兵器密売人、謎の逃亡手助け人、、、、正体不明の敵。

 

正直、中国人の名前がいっぱいでてきて、しまいには誰が誰だかわからなくなってきたけれど、、、他にも不法滞在の外国人だとか・・・。

 

で、二人で逃げている間に、由佳は徐々に雑賀に対して警戒心を解き始める。地下鉄ブルーラインの線路内を逃げる二人。追いかけてくる敵。闘争。。。。二人を探す劉。

新子安で二人を見つけた劉だったが、雑賀と二人で語り合った後、二人を見逃すように解放する。いったいなにが?

 

と、最後は、雑賀が頼りにしていた海外逃亡手配エージェントの裏切り。絶体絶命の雑賀と由佳。

 

ここが、ホントのネタバレ。

由佳は、最後まで知らなかったのだが、実は、由佳は雑賀の本当の娘だったのだ。かつて佐野の部下として働いていた警察時代、逮捕した人間からの逆恨みで、雑賀の自宅は放火され、臨月だった妻は命を失った。ただ、お腹の子どもだけは助かったのだった。それが、由佳だった。佐野は、犯人は次にはおまえの子どもをターゲットにするだろうといって、生まれた子供を佐野家の子どもとして育てることを提案した。そして、子どもの安全のためにそれに同意した雑賀だったのだ。

が、大人になって佐野夫妻と血がつながっていないことを知った由佳は家出。犯罪チームの一員となってしまったのだ。そして、雑賀は、由佳をこの不安定な島国ではなく、シンガポールへ出国させようとたくらみ、由佳をつれて逃亡していたのだった。

 

が、エージェントの裏切りで、雑賀と由佳は、雑居ビルの一室で絶体絶命のピンチを迎える。激しい銃の応戦。雑賀は、なんとか由佳を守ろうとする。由佳は、雑賀を守るために、敵に拳銃を向ける。
そして、撃たれた由佳。同時に、由佳を守ろうと撃たれた雑賀・・・・。

そこへ、劉らが救援にやってくる。

由佳は命を取り留めるが、雑賀は亡くなる。最後まで、由佳をまもった雑賀だった。

それからの後日、、、劉は由佳を国外逃亡させるのを手伝う決心をしている。
劉の心は、内地人としてより、肉親への愛を貫いた和族である雑賀への想いが占めていた。 

 

とまぁ、、、そんなミステリー。

 

誰が誰に手を貸していて、誰が誰を憎んでいるんだか、細部はよくわからなくなってきたけれど、人間としての愛が、憎しみを上回った?って感じか。

 

これが、このミス大賞なのかぁ、、、難しいなぁ。。。

 

描かれるディストピアの世界が、現実離れしていると思うものの、いや、100年後の日本は?と思うと、じわっといや~~な感じがする。

 

読んでいて、読み進みやすいのは、描写が映像的なのかもしれない。

映画にしたらもっとわかりやすいかもなぁって感じ。

 

なるほど、こういうミステリーか。

しかし、私にとっては、スプラッターなシーンが無ければなおいいのに・・・と思ってしまう。

 

このようなわけのわからない統治区管理というのは、フィクションの世界だけにしてもらいたいものだ。。。

ディストピアものは、そういう、ゾクッと感がある。できれば、こんな世界はごめんだ。。。

 

フィクションだから、楽しめる。

それにしても、映画のスプラッターなシーンは苦手だけれど、本も得意ではないなぁ、、、。でも、世の中にはこういうのが好きな人もいるのよね。だから、人気なのだろう。

 

著者の、もうちょっと暴力シーンのないものを読んでみたい。。。