ひとがつくったどうぶつの道
キム・ファン 文
堀川理万子 絵
ほるぶ出版
2015年5月25日 第一刷発行
『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第10章 自然の豊かさを味わう」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。
タイトル通り、人が動物のために作った、動物のための移動手段確保の話。
文のキム・ファンさんは、1960年京都府生まれ。自然科学分野の絵本や読み物を多く手掛ける。日韓で活躍。この本で、第56回韓国出版文化省受賞。
絵の堀川さんは、1965年東京都生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科卒業、同大学院美術研究科修了。絵画作品による個展を開催するほか、絵本作家、イラストレーターとしても幅広く活躍。
絵は、優しいタッチのアクリル絵の具?ベタ塗りと、軽いタッチの細い線と、やさしい。自然を描くのにお似合い、って感じ。
表紙には、ヘッドライトをつけてはしる車と、その道路の上の橋をわたる鹿の姿。そして、木の枝にとまったモモンガ。かわいい。
表紙をめくると袖には、
”山にどうろができ、車がふえて、
どうぶつたちは あぶなくて わたることもできません。
そこで、
「どうぶつたちの道をつくろう」と考える人があらわれました。
ひとと動物の共生を考える絵本”
と。
人が土地を開拓して、道路をつくったために、分断されてしまったあっちの森とこっちの森。モモンガは、木から木へ飛び移ることでしか移動できないのに、人間のつくった道路は、モモンガがとびこえるには大きすぎた・・・。
モモンガは、いつも通っていた恋人のところに通えなくなちゃった・・・・。
道は、モモンガだけでなく、シカも、キツネも、タヌキも、ウサギも、イタチも、テンも、リスも、、、怪物が怖くてわたれない。
怪物、車がビュンビュンはしっていく。
怪物が通る道に入ってしまったシカは、
キィーッ、ドン!
あれ?あそこにネズミがいるぞと近づいたキツネが見つけたのは、車に轢かれて死んだネズミ。
「このままではどうぶつたちが あまりにも かわいそうだ」
そうおもったにんげんは、知恵を出し合い、
「そうだ、どうぶつたちの道を作ろう!」ということになった。
そして、道路の下をくぐるトンネル、上をわたる橋、川にも魚のための道をつくりました。
ところが、モモンガは、やっぱり歩いて渡ることができない。
「ジジジ、なんとかならないかなぁ・・・」
モモンガの鳴き声が人間に届いて、モモンガのための道ができました。
それは、道路の両側に立った、高い、高い、棒。
おかげで、モモンガは、あっちの森まで飛び移ることができるようになりました。
最後は、そらをとんでいるモモンガの姿でおしまい。
そして、実際に造られた野生動物のための道が写真で紹介されている。
なるほどねぇ。
日本だけでなく、アフリカゾウのためにできたケニアのアンダーパス。オーストラリアで作られたカニのためのオーバーパス。
本当は、道路やダムなんてないのが一番なんだろうけれど、、、人びとの生活の便利さのために造られた人工物。。。。共生への努力。
なるほどねぇ・・・。
そして最後、
”動物の道さえつくればいいの?”というコラムがある。
”・・・これらの動物の道は、決して最終的な解決策ではないのです。
そもそも動物たちがつかっていた「自然の道」をかってにうばいとったのは、私たち人間です。そろそろ可能なものから動物たちにかえしてあげないと、手遅れになってしまいます。”
そうだね。
むやみに道路を作っちゃいけないね。
一方で、最近、「後藤新平」に関する本を読んでいたら、関東大震災後の復興事業で、東京で幅広い道を作ることで、延焼を防ぐことをねらった、などという話が出てきた。
人がたくさん住んでいる場所は、避難所となりえる空間の確保も必要だろう。大きな道や公園が役立つときもある。自然の中を横切る道は、人の生活を豊かにするのに必要なのだろう。。。
でも、今年の石川県の地震と大雨による災害をみていると、、、人間が住んでいい場所ってどこなのかな?とも思っちゃう。
自然との共生、人間の暮らしやすさ、、、非常時の安全確保、、、開発計画って複雑系を克服しないといけないんだなぁ、、、と思う。
絵本として、勉強になる。
絵もかわいい。
モモンガ、、会いたいな、と思う。
ほんとに、「ジジジ」って鳴くのかな?聞いてみたい。