『ちきゅうのびんづめ』  by マーティン・スタネフ

ちきゅうのびんづめ
マーティン・スタネフ 作
福本友美子 訳   
小学館
2023年5月15日 初版発行


『世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第11章  地球と宇宙・二つの視点」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

表紙の絵は、青地にびんをかかえるおばあちゃんと、びんと子供達。
THE PLANET IN a PICKLE JAR とある。ピクルスの瓶に入った地球。

 

表紙をめくると、青がつづいていて、
”  おばあちゃんの びんづめには、このちちゅうの めずらしいもの、ふしぎなものがいろいろ はいっていて・・・・”
と、瓶の中に入った、白熊?杉の木?


作者のマーティン・スタネスはイギリスを拠点に活動するイラストレーター。 ブルガリア出身で、イギリスのファルマス大学を卒業した後、湖水地方に住み、 生まれ故郷を思い出せる豊かな自然環境の中創作をする。 本書は 絵本デビュー作で、イギリスの新聞 ガーディアンの2021年 ベスト絵本の1つに選ばれ、 7カ国以上に翻訳されている。

 

訳の福本友美子は、公共図書館勤務の後、児童図書の研究・翻訳に専念する。翻訳絵本の他、創作絵本もある。

 

感想。
かわいい絵。

ものがたりは、おばあちゃんのお家の中から始まる。

 

白髪で、頭の上にお団子、鼻眼鏡で写真をみながらソファーにすわるおばあちゃん。ソファーの下には、ひょうのしっぽ!?かべにはたくさんの額縁。キッチンのストーブの上ではお湯がわいてもくもくしているやかん。網掛けの毛糸玉。いかにも、生活感ただよう空間で、おばあちゃんが眉毛をへのじにして、ちょっと心配気に写真を眺めている。

”うちの おばあちゃんは、 ひとりで しずかに くらしているの。”


ごはんはいつもおなじもの。
はなしは なかなかおわらない。
おもしろいことなんて ひとつも ないの。

 

どうやら、姉と弟の二人兄弟は、おばあちゃんちにあそびにきても、面白くないみたい。

おばあちゃんは、かいものして、あみものして、びんづめを つくるだけ。

”たのしいことなんて なんいも してないんだろうな”という文字のページには、なぜか水着姿で魚やカメと一緒に水中を泳いでいるおばあちゃん。

 

そして、あるとき、だいじな話をしたいから、っていわれて、ふたりは仕方が無くおばあちゃんのうちにいく。

”「あのね
わたしたちのすむせかいは とてもこわれやすいって しってるかい?
いま ちきゅうにあるものは じぶんたちで まもっていかないと だんだんきえて
なくなってしまうんだよ」”

そんなこと、しらなかった。

ほんとなのかな?
弟とふたりでそとの世界をながめてみた。

流れ星がひとつ流れて消えた。

 

不安になった二人はおばあちゃんちにもどってみる。
おばあちゃんはいない。
地下に降りていくと、つきあたりに部屋がある。

びんづめがたくさん!!!ずらーっとならぶ瓶詰の世界。

そして、その奥の扉を開くと、広い広い場所にでて、そこではたくさんのいきものがのびのびとくらしていた。

助けてぇぇ!
おばあちゃんの声!!

おばあちゃんは、なぜか高い高い木の上にいて、降りられなくなっていた。
ぞうに助けられて、おばあちゃんはおりてくる。

 

あぁ、よかった。
おばあちゃんも、ながれぼしのように消えちゃいませんように。

おばあちゃんは、子供たちのために、この世界の美しいもの、大切なものをのこしておきたいの。子供たちのみらいのためにね、と。

 

そして、姉と弟は、おばあちゃんの大切なものを残すお手伝いをするようになる。

最後のページは、三人がせっせとびんに大切なものを詰めている。

お姉ちゃんは、太陽までつめている。
弟は、緑の葉っぱをつめている。

 

なんとも、ストレートな表現の絵本でした。

大事なものは、瓶詰ではなく、そのまま、、、大切に残したいものだ。

カラフルなイラストで、細部にまで書き込まれていて、文字は少ないけれど、じっくり絵をながめているだけでも楽しくなるような絵本。

 

自分ならなにを未来に残したいか、考えてみる時間になるかもね。

 

緑の大地、青い海、かな。