『CO2のりもの図鑑』  by 三浦太郎

CO2のりもの図鑑
三浦太郎
ほるぶ出版
2008年11月30日 第1刷発行

 

世界をひらく60冊の絵本』(中川素子、平凡社新書)の 「第12章  人間の作り出した世界」からの紹介本。図書館で借りて読んでみた。

 

著者の三浦さんは、1968年愛知県生まれ。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選。絵本『JE SUIS』『TON』が海外で出版。国内でも多くの絵本がある。わたしは、初めてみて気がする。シンプルで、ベタヌリの絵。

表紙は、絵本といいつつ、大学ノートのようなデザインの上に、文字と絵が描かれている。

 

表紙をめくると、

”くるまはどのくらいCO2を出すの?
バスは? ひこうきは? しんかんせんは?
いろいろなのりものを楽しみながら
CO2という環境へ関心を育てる絵本。”
とある。

 

まさに、CO2の排出量について学べる絵本。ページをめくっていくと、乗り物が動くときに排出されるCO2の量が、つぎつぎと明かされる。

 

”CO2とは二酸化炭素のこと
人も、動物も、自動車も、電車も、飛行機も
CO2を出しているよ。でもCO2って目に見えないんだ。

もし見えるとしたら、こんな感じかな?

 

生き物は息を吐くときにCO2を出しているよ。
自動車は飛行機のエンジンの中で、燃料が燃えて、CO2が出る
電車は電車で動くから、その電気を作るときにCO2が出るんだ。

 

人の1回の息で出るCO2は0.05グラム、とても少ないよ。
僕が1キロメートル歩くと、10グラムのCO2が出るんだ。

 

オートバイ、2つのタイヤでスイスイ走るよ。CO250グラム出るんだ。

馬車、馬がパカパカ引っ張って走るよ。CO2100グラム出るんだ。

乗用車、人や荷物を乗せてガソリンで走るよ。CO2150グラム出るんだ。

バス、バス停からバス停へ70人位の人を乗せて走るよ。CO2600グラム出るんだ。

飛行船、ヘリウムで風船みたいに飛ぶよ。CO22000グラム出るんだ。

ヘリコプター、大きな羽根を回して飛ぶよ。CO23000グラム出るんだ

電車、線路の上をたくさんの人を乗せて走るよ。CO27000グラム出るんだ。

新幹線、1300人位の人を乗せて、とても早く走るよ。CO210,000グラム出るんだ。

蒸気機関車、石炭を燃やして、煙を出して走るよ。CO230,000グラム出るんだ。

飛行機、500人位の人を乗せて、ジェットエンジンで空を飛ぶよ。CO240,000グラム出るんだ。

大型客船、世界の海を旅するよ。500人位の人が何日も過ごせるんだ。CO2200,000グラム出る。

 

1人分でも比べてみよう

乗用車は 30グラム
電車は 6グラム
新幹線は 8グラム
バスは 9グラム
飛行機は 80グラム


*本文中のCO2排出量は全て1キロメートルあたりの量です。”

なるほどーー!

これはなかなか優れた絵本だと思う。
大人だってこんな数字は知らないんじゃないかな?
結構、勉強になった。

電車や新幹線は電気で走るけれども、電気を作るときに二酸化炭素は出るんだよね。

実はそれと同じことが電気自動車にも言える。

 

廃棄ガスにCO2が含まれていないからといって、電気自動車に乗ると、CO2を出さないわけではない。電気を作るときに化石燃料を燃やせば、当然CO2は出る。
グリーンエネルギーと言われる。太陽発電だって風力発電だって、その設備を作るのには材料を加工したり設置したり、そこでCO2が発生する

 

人が生きていく上で、CO2を発生させないと言うのは、所詮無理なことなのだ。
水素だとかアンモニアをクリーンエネルギーだとか言うけれど、それらも全部燃料として水素を取り出したり、アンモニアを生成するためには、膨大なエネルギーが必要で、その時にはCO2が出る。
昨今の広告を見ていると、まるでCO2が出ないかのような宣伝をして、それは偽りだと思う。言葉のあやって感じ。

 

私自身が、アンモニアの小型安価製造プロジェクトで仕事をしていたこともあるので、そのコスト構造はよく知っている。アンモニア(NH)をつくるのは、その分子の一部である水素(H)をつくることと等しく、水素は天然ガスから膨大なエネルギーを使ってつくる。水(HO)も水素は含まれるが、そこから水素を取り出すのは、さらに膨大なエネルギーを必要とする。それが現実なのだ。

 

『プラスチックの海』も衝撃的な絵本だったけれど、これも結構考えさせられる絵本。

megureca.hatenablog.com

 

トランプ次期大統領は本当にパリ協定からまた脱退してしまうのだろうか?
”本気”で化石燃料を掘りまくれと言っているのだろうか?
アメリカで、ハリケーンやトルネード、山火事被害がこれだけ深刻化しているのに、地球温暖化と本当に無関係だといいきれるのだろうか?

やはり、地球温暖化を加速させるような行動と言うのは、暴力で等しいのではないだろうか?科学的視点でも、人道的視点でも・・・。

原始的な生活には戻れないけれど、やれる範囲で省エネしないとね。
地球に愛される地球人になろう。