宮沢賢治童話絵本2
どんぐりと山猫
宮沢賢治 文
里中満智子 絵
小学館
1993年12月20日 初版 第1刷発行
NHKの番組で紹介された、、、という記事を目にして、宮沢賢治のこのお話は、知らない気がしたので図書館で借りて読んでみた。
最後に、 畑山博さんの解説がついていた。
物語は、一郎という少年が おかしな はがきを受け取ったところから始まる。
それは、へたくそな字で、墨もざらざらで書かれていた。
”かねた一郎さま、9月19日
あなたは、 ごきげにょろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。
とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝”
一郎は、うれしくなった。そして、はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうをとんだりはねたりした。
翌日、一郎は、山猫の裁判にでかける。栗の木、笛吹の滝、ブナの木、きのこ、栗鼠に山猫の行方をおしえてもらいながら、最後は大変な急坂を上って、美しい黄金いろの草地へたどり着く。
おかしな恰好をした男が、
「おまえは一郎さんだな?」といって、はがきを書いたのは自分で、へたくそだったろう、という。
一郎は、
「五年生にはかけないくらいうまい」というと、
男は、嫌な顔をして、
「尋常五年生だべ」と哀れな声でいう。
一郎は、
「いいえ、大学の五年生」といってやると、男はうれしそうにした。
男は、自分のことを「やまねこさまの馬車別当」だという。
と、そこに、一風の風が吹き黄色の 陣羽織 のようなものを着て緑色の目をまん丸にした山猫が立っていた。
山猫は、
「 ちょっと面倒な争いことが起こって裁判に困りましたので あなたのお考えを伺いたいと思いましたのです」というと、 巻きタバコの箱を出して 1本 くわえた。
「いかがですか?」と薦められた一郎は驚いて、
「いいえ」という。
山猫が困っていた裁判とは、 どんぐり同士で わあわあ 何か言い合っていて収拾がつかなくなっていた。
「 裁判 ももう今日で3日目だぞ。いい加減に仲直りをしたらどうだ」山猫が言う。
どんぐりたちは、口々に叫ぶ。
「 何と言ったって頭のとがっているのが一番偉いのです」
「 丸いのが偉いのです」
「 大きいのが偉いのです」
「 せいの高いのが偉いのです」
と、まさに、どんぐりの背比べで、 蜂の巣をつついたようで、 訳が分からなくなるほどあらそっている・・・・。
「 やかましい。 ここをなんと心得る。 静まれ、静まれ」
別当が無知をひゅうパチッと鳴らしましたので、 どんぐりどもはやっと 静まりました。
と、しばらくすると、また、がやがやがやがや・・・・・。
「 やかましい。 ここをなんと心得る。 静まれ、静まれ」
別当のむちで、ふたたびしずまる。
「このとおりです。どうしたらいいでしょう?」と一郎にたずねる山猫。
一郎は、笑って答えた。
「そんなら、こう言いわたしたらいいでしょう。
このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらいとね。ぼくお説教できいたんです」
一郎にいわれたとおり、どんぐりにいいわたした山猫。
どんぐりは、しいんとしてしまいました。裁判はおわりました。
一郎は、どんぐりを一升もらい、おおきなきのこでこしらえた馬車で送られて帰りました。
山猫は、今度は簡潔に「出頭すべき」というはがきを出すので、また一郎に裁判を手伝ってほしいといいましたが、一郎は、その書き方はやめた方がいいといいました。それからあと、山猫拝というはがきは、きませんでした。
一郎は、「出頭すべし」とかいてもいいといえばよかったな、と時々思いました。
おしまい。
なんじゃ、このお話は、、、、。
おもしろいというか、どんぐりのせいくらべそのまんまというか、、、。
で、最後の畑山さんの解説がまた、面白い。
物語には、大きな3つの謎がある。
1 山猫はどうして一郎を呼んだのか
2 山猫と一郎は何語で話し合ったのか
3 山猫はどんぐりの訴えを、どうして自分の力で解決できなかったのか
答えは、
1 山猫はどんぐりからの信頼を失っていた
2 人間と他の生き物が話し合える「動物エスペラント語」
3 山猫がうぬぼれすぎて、ただ強いだけの 「頭空っぽ」 さんだった
なんなんだ。この解説は、、、。やっぱり、宮沢賢治って、なんだか謎の世界。ワクワクというより、たんたんとしていて、何じゃこりゃ?っていうのが多い気がする。。。。
『銀河鉄道の夜』も、『やまなし』もちょっと悲しいお話だし。
まだまだ、知らないお話がたくさんあると思う。
いつか、、、よんでみよう。。。