フレデリック Frederick
ちょっと かわった ねずみの はなし
レオ=レオニ Leo Lionni
谷川俊太郎 訳
好学社
2000年9月1日 第49刷
Frederick (1967)
2024年11月13日、 谷川俊太郎さんが亡くなった。 1931年 12月15日生まれの谷川さん。 たくさんの 絵本 を残してくださった。詩人の谷川さん。そして、鉄腕アトムの主題歌作詞も谷川さんだったそうだ。
そんな谷川さんが訳された絵本。先日、知り合いが子どもによく読んであげた、という話をしていて、私は『フレデリック』なんて知らないぞ?と思った。みんな、「見たら思い出すよ!」というのだが、、、。
で、 図書館で探してみた。 谷川さんの訳した 日本語の絵本と、 原書のFrederickと、両方あったので、両方借りてみた。
作者のレオ=レオニは1910年 オランダのアムステルダム 生まれ。 イラストレーター、 グラフィックデザイナー 及び 絵本作家として 米国で活躍した芸術家。『スイミー』『 せかいいちおおきなうち』の作家でもある。他にもたくさん。。。
借りて読んでみて、、、思った。私は、きっと読んだことが無い。我が家にはない絵本だったのかも・・・。でも、絵は、見覚えがある・・・気がする。水彩と、貼り絵を組合わせた様なやさしく、可愛い絵。
物語は、一匹の野ネズミの話。
牧草の生える草地に、石垣がある。そこに、おしゃべりな野ネズミたちが住んでいる。
a chatty family of field mice had their home.
近くにあった農家はどこかへ引っ越してしまったので、 小屋も納屋も空っぽ。
4匹の 野ネズミは、 せっせと 食べ物を運んで 冬に備えている。 でも 1匹の野ネズミ、 フレデリックは みんなが働いているのをよそに ちっとも働かない。 ひなたぼっこをしていたり、 色とりどりのお花を眺めていたり、 あるいは眠そうにうとうとしていたり。
働かない フレデリックに、 みんなは「何をしているの?」と聞く。
「おひさまをあつめている」
「色をあつめている」
「ことばをあつめている」
そして、冬がやってきた。
食べ物は、底をついていく。暗く、寂しく、野ネズミたちはおしゃべりすることもやめてしまう。
みんなは思い出した。 フレデリックは何かを集めてたはずだ。
「 きみが集めたものは、一体どうなったんだい フレデリック?」
フレデリック はみんなに目をつぶってごらんといって、
「 君たちに おひさまをあげよう」
みんな、なんだか、ぽかぽかしてくる気がした。
もういちど目をつぶるとこんどは、野原の草花の色が浮かんできた。
「ことばは?」
フレデリックは、石の上で舞台の俳優のようにしゃべり始めた。
「3月に だれが こおりを とかすの?
6月に だれが 四葉のクローバーを そだてるの?
ゆうぐれに だれが それの あかりをけすの?
・・・・・・
季節がよっつあってよかったね。
一つ減ったらどうなることか?
一つ増えたらどうなることか?」
みんなは、拍手した。フレデリックは、詩人。
フレデリックは、赤くなってお辞儀をした。そして恥ずかしそうにいった
”I know it.”(そういうわけさ)
おしまい。
可愛いフレデリック。
食べ物をあつめるだけが仕事じゃなかったんだね。
そして、太陽が季節をつくってくれているんだね。
そして、頭の中で想像するのは誰でもできるし、だれにも人の中の想像を破壊することができない。
そうだ、ロマン・ガリーの『天使の根』を読んでみようと思っていたことを思い出した。
表紙の眠そうなフレデリックも可愛いけど、裏表紙はその後ろ姿。
絵本って、こういう遊びができるから楽しいね。
やっぱり、絵本好き。