『だれも知らない小さな国  コロボックル物語 ①』 by 佐藤さとる

だれも知らない小さな国  コロボックル物語
佐藤さとる 作 
村上 勉 絵
講談社文庫
2010年11月12日 第1冊 発行
* 『だれも知らない小さな国』は1959年 自費出版ののち、小社より刊行されました。 本書は1980年に刊行された青い鳥文庫と1985年に児童局より 刊行された単行本をもとに文庫化したものです。

 

先日読んだ『よむよむかたる』の読書会でみんなが読んでいた本。

megureca.hatenablog.com

こぼしさまは、「おみとりさま」ではないか?とか「死」そのものではないか、、とか。そして、コロボックルという言葉、佐藤さとる、という名前に私の思い出アンテナが反応した。

子どもの頃、夢中になった覚えがある。。。。けど、ぜんぜん内容を覚えてない。でも、私、好きなヤツ!と思った。

図書館で借りてみた。

 

佐藤さとるさんは、1928年 神奈川県生まれ。『だれも 知らない小さな国』で毎日出版文化賞、国際アンデルセン賞 国内賞などを受賞。 日本のファンタジー作家の第一人者で作品も多く、『佐藤さとる全集』『 佐藤さとるファンタジー全集』が出ている。『 小さな国の続きの話』など、本作の続編もある。

 

本の裏の説明には、
” びっくりするほど綺麗なつばきが咲き、美しい 泉が湧き出る「ぼくの小山」。 ここはコロボックルと呼ばれる小人の伝説がある山だった。ある日 永遠の光を川を流れる靴の中で小指ほどしかない小さな人たちが僕に向かって手を振った。 うわぁ、この山を守らなきゃ! 日本初・本格的ファンタジーの傑作。 解説・梨木香歩”とある。

 

目次
第1章 いずみ
第2章 小さな黒い影 
第3章 矢印の先っぽ 
第4章 わるいゆめ 
第5章 新しい味方 
あとがき  その1 ~ その4 
解説  梨木香歩

 

感想。
わーい!わーい!
コロボックルだ!!!
そして、村上勉さんのイラストも懐かしい。

楽しい!大好きだ!こういうお話!!

最後の4つのあとがきは、単行本になったり文庫本になったり、改版されるたびにかかれたもの。

その1 昭和34年7月
その2 昭和48年6月
その3 昭和59年7月
その4 平成22年10月

すご~~い。 
佐藤さんは、2017年に亡くなっている。日付をみると89歳の誕生日を迎える4日前に亡くなったようだ。ずっと、創作されていたのだろう。すごいなぁ。。。

そして、佐藤さんが、 日本ファンタジー作家の第一人者といわれていたとは。しらなかった。なにをもってファンタジーなんだ??というきもするけど。小人は、やっぱりファンタジーか。でも、鉄板のファンタジーだ。だれもが、もしかしたら、私の部屋にも小人が現れるかも、っておもったことがあるのではないだろうか・・。子供のときは、みえていたかもしれない・・・・。

 

そして、この作品は、小学3年生の僕が夏休みに一人で出かけた小山で起こった不思議な出来事から始まる。

以下、ネタバレあり。


その小山は、僕が冒険して見つけた秘密の場所だ。僕は、そこを自分の一等地だと感じ、頻繁に一人で立ち寄るようになる。僕だけの秘密の場所。ある日、一人だと思っていたら、蕗(ふき)を採りに来ていたおばあさんに出会ってびっくりする。おばあさんは、この小山は「鬼門山」と呼ばれ、その山を荒らすと縁起の悪いことが起こるという言い伝えがあることを教えてくれた。そして、それは「こぼしさま」という小さな人がいるからなんだ、と話す。本当は「こぼしさま」が人々を悪い神様から守ってくれていたのだけれど、いつの間にかこぼしさまは人々に姿を見せなくなったのだという。
僕は、その話を聞いて、少しうれしくなる。僕の小山にこぼしさま!


いつものように小山に来て小川で遊んでいると、突然女の子が岩の上に座っていてびっくりする。知らない女の子だった。一年生くらいか、僕より幼そうだった。
「君、誰と来たの?」
女の子は、僕が来たのとは逆の方を指さす。そして、「靴が片方ない……」と言った。
女の子は、小川に靴を流されてしまったのだ。
僕は「探してきてあげる」と言い、小川の中を歩いた。
「あった、あった」
水しぶきを上げて靴に駆け寄り、手を伸ばした。そして、思わずその手を引っ込めた。小さな赤い運動靴の中で、虫のようなものがピクピクと動いているのに気がついたからだ。しかし、それは虫ではなかった。小指ほどしかない小さな人が2、3人乗っていて、僕に向かって可愛い手を振っているのを見たのだ。


こうして、僕はこぼしさまと出会う。


僕が靴を女の子に返そうと思ったときには、女の子はいなくなっていた。
それから次の年まで、相変わらず僕は小山へ出かけた。でも、もう誰にも会わなかったし、こぼしさまにも会わなかった。


やがて、僕は家の引っ越しで、電車で40分くらい離れたところへ行くことになる。それでも僕は、時々小山に来ようと決心する。僕の小山の目印として、青いガラス玉を泉の淵に丁寧に埋めた。
そして、新しい学校の生活が始まる。やがて日本は、戦争の渦に巻き込まれていった。町は焼かれ、人々は目ばかり光らせていた。
僕は背の高い中学生となり、工場で働かされた。小型飛行機に追いかけられた。命がけの鬼ごっこだった。
そして、終戦。お父さんは戦死した。


物語は、大人になった僕が小山を自分のものにするため、持ち主に小山を貸してほしいと交渉する場面に続く。突然訪ねて行って「小山を貸してほしい」と言う僕に、おじさんは驚いた様子だったが、話をきくと快く許可してくれた。そのおじさんは「峯のおやじさん」と呼ばれていた。そして、峯のおやじさんにも手伝ってもらい、僕は小山に小屋を建てた。時々仕事の合間に出かけては、小屋で過ごすようになる。


あるとき、小山で木の上で本を読んでいる女の人に出会う。その女の人は、僕を見ると逃げ出してしまった。でも、コートを忘れていったので、「おーい!忘れ物!」と声をかけると、戻ってきてコートを受け取ると、さっさと行ってしまった。


そしてある日、僕はとうとう、こぼしさまと出会う。


こぼしさまは、「僕」のような味方になってくれる人間を待っていたのだ。最初に僕の前に姿を現したこぼしさまは、「ヒイラギノヒコ」「エノキノヒコ」「ツバキノヒコ」と名乗った。
こぼしさまは、「ルルルル」と早口で話す。動きも素早いけれど、話すのも本当に速いのだ。そして、ヒイラギノヒコ、エノキノヒコ、ツバキノヒコは、僕と会話をするためにゆっくり話す訓練をしたのだった。
さらに、もうひとり、ヒコ老人が姿を現す。立派なひげをたくわえた、長老らしい人物だ。
僕は、「君たちは『コロボックル』の仲間ではないのか?」と、自分で調べたアイヌの小人の言い伝えを聞いてみた。しかし、こぼしさまたちは「コロボックル」という名前は知らないという。ただ、もしかすると祖先様かもしれない……と話す。僕は、こぼしさまを「コロボックル」と呼ぶことにした。


僕とコロボックルとの交流は続く。僕は電気屋で働いており、小屋に電気を引いて、小屋で過ごす時間がますます長くなっていった。
ある日、電気屋さんのお客さんである幼稚園へ仕事で訪れると、そこには以前小山でコートを忘れていった女の人がいた。その人は「おちび先生」と呼ばれていた。おちび先生は、僕を見るなり「あなたは、山の制多迦童子(せいたかどうじ)さんでしょ?」と言って笑った。
僕はドキッとする。コロボックルたちは、僕のことを「セイタカサン」と呼んでいたからだ。
「あの山は好きですか?」と僕が聞くと、
「ええ」と答えるおちび先生。
そして、おちび先生はこう続けた。
「あの山、ちょっと不思議な山だと思わない?」


おちび先生は、コロボックルの秘密を知っているのだろうか? コロボックルに聞いてみると、「知らない」という。でも、もしかしたら僕のように、コロボックルの味方になってくれる人かもしれない。


僕とコロボックルは仲良く過ごす。時には、僕の家や仕事場にもやってくるコロボックルたち。素早いので、あっちへこっちへとすぐにやってくる。
そうして暮らしているある日、事件が起こる。なんと、小山が新しい道路の建設のために潰されてしまう計画が決まったのだ。


コロボックルたちの調査により「味方」と認定されたおちび先生は、僕と一緒にその計画を何とか阻止できないかと考える。もともと、「鬼門山」として恐れられていた山だ。そこを壊すなんて……。おちび先生は、「計画者たちに、山を壊すと悪いことが起こると思い出させればいい」と提案する。
作戦は、コロボックルたちが計画者の耳元でささやいて、悪い夢を見させるというものだ。
コロボックルたちは「ルルル」ではなく、人間が理解できる速さで話す練習をみんなで始めた。そして、寝入りばなに見る夢だと忘れてしまうため、起きる直前の時間を狙って、人間の言葉でささやくのだ。


作戦は成功!!
僕とおちび先生、そしてコロボックルたちは、計画を撤回させ、新しい道は別の経路を走ることとなり、小山を守ることに成功する!


さらに、おちび先生が僕に内緒で「新発売の車のニックネーム」に応募し、それが採用されたことで、僕は賞金20万円を受け取ることになる。その20万円で、僕は小山を峯のおやじさんから購入する。
これで、小山は僕のものに。つまり、コロボックルの国を守ることに成功!


おちび先生が応募した小型車のニックネームは、「コロボックル」として採用された。
僕は心の中で叫んだ。
「矢印の先っぽの小さな国。いつまでも静かで明るい国でいてくれ!」
おしまい。

 

おちび先生は、実は、ぼくが小学生の時に出会った赤い靴をなくした女の子だったのだ。だから、あのときからおちび先生もコロボックルの存在に気が付いていた。ぼくとおなじように、それを誰かにはなしたりせず、そっと小さな国を守ることに貢献していた。

 

コロボックルたちの描写が、実に楽しい。会話も楽しい。祖先は、「スクナヒコナノミコト」だという。日本神話の神様。エノキノヒコは、ちょっとでぶさんで「エノキノデブデス」と自分でいったり。

 

今回は、文庫本だったから、白黒の絵だったけれど、単行本だとカラーだろうか。なんとなく、子供のときに読んだのは、綺麗な色のコロボックルたちの絵だったような気がする。。。

 

コロボックル物語、続きも読まなきゃ!

我が家にも小人さん、でてこないかしらん?