『アルメット』 by トミー・ウンゲラー、 谷川俊太郎(訳)

アルメット
トミー・ウンゲラー 作
谷川俊太郎 訳
好学社
2022年9月17日 第1刷発行
ALLUMETTE (1974)

 

図書館の絵本特設コーナーで見つけたので、借りて読んでみた。谷川さんの訳だし。

 

表紙は、目の下にくまをつくった女の子にALUMETTEとある。しかも、濃紺のバックに、赤の縁取りで、ちょっとくら~~い印象。

そして表紙を開くと、表紙にあったALLUMETTEが、いっぱいに並んでいる。おもわず、間違い探しをするのか?とおもっちゃう。縦に5こ、横に8こ。40のALLUMETTEが並んでいる。

中表紙のALLUMETTEはマッチで文字が描かれている。

中は、白い紙にカラフルな水彩画のような絵と、黒くゴシック体のカタカナとひらがなばかりのお話。

 

” アルメットはとてもびんぼう。
おうちもなければ おやもいない”

と、はだしで、ボロボロの服を着て、伸び放題の髪の毛、目の下にはクマをつくって、鼻のあたまを赤くしたアルメットが、工場と思しきたてやを背景に、荒涼とした草地に立っている。

”ごみばけつの ざんぱんをたべ
ひとけのないたてもののとぐちに こそこそかくれ、
すてられたくるまのなかで ねむる。”

 

描かれる町は、まるでアメリカのラストベルトの様だ。。。。

 

アルメットは、マッチを売って歩く。
でも、だれも、マッチなんかかってくれない。
オープンカフェでお茶を飲んでいるお金持ちそうなオジサンは、葉巻をくわえてジッポライターで火をつけている。

 

冬になって、クリスマスがやってくる。
みんなプレゼントをかって街を楽しそうに歩いている。

夜が更けて、腹ペコでくたくたのアルメットは、お菓子屋さんのショーウィンドウに思わず見入ってしまう。

”あっちへいけ、こののらねこめ。 
とっととうせろ、このやどなし。”
菓子屋のムッシュラクルートに怒鳴られて、アルメットはやみのなかへ逃げていく。

 

寒さにふるえるアルメットは、歩道にくずれおちる。
”もうおしまいだわ”

そして、死に物狂いで祈り始める。
”どうか あとほんのすこしだけ いきのびさせて、
おかしをひとくち、しちめんちょうか ハムを ひときれ
あじわうあいだだけで いいのです。
ああ おねがい・・・・ だれか きいて”

夜中の12時に鐘が鳴っている。
突然の稲光と激しい雷に凍りついたようになっていたアルメットは我にかえる。

そして、空から、とほうもなくおおきなバースデー・ケーキがあしもとに落ちてきた。
七面鳥のローストがいくつもふってきた。
倉庫いっぱいのハムがふってきた。
もうふ、うわかけ、、、ソーセージ、三輪車。。。

稲光はさらにはげしくなり、分厚い雲の塊が、つぎつぎにものを吐き出す。
アルメットが夢の中で願い続けたものが、つぎからつぎへと降ってくる。

 

ムッシュラクルートを欲を出して、ふってくるものを自分のものにしようと店を飛び出す。ふろおけや洗面台に足をとられてすってんころり。

郵便屋さんはマーマレードにすべってころび、クマのぬいぐるみの腕の中。
”たすけてくれ! かみつくなよ!”とあわてる郵便屋さんを助け起こすアルメット。

”いったいなにがおこったんだ?”と郵便屋さん。

”みんな あたしのものよ!
わたしが ねがったら、ゆうべ そらからふってきたの。
いますぐ、みんなにあげちゃうわ。”

そして、郵便屋さんがみんなに知らせてまわった。


すると、隠れていた人々が出てきた。

手足の不自由な人
体のきかぬの人
腹ペコで寒さに震える人
若者
年寄り
仕事のない人
喜びのない人
病気の人
目の見えない人
頭のよわい人

お金持ちは、やしきのなかからきまり悪げに人々の列をながめた。

市長は、
” みのほどをわきまえぬれんちゅうが、ぞろぞろあるいているのは むねがむかつく!”
といって、軍隊を呼び出す。

ムッシュ―・ラクルートは、アルメットにあやまりにくる。そして、人びとにものをわけるのを手伝い、あふれた荷物を自分の倉庫に運び始める。

市長は、青白い小さな女の子がおおさわぎの元だと知って面食らう。

子供が一人で溢れかえるものの山を 行儀よく並んだ人々に分配している。軍隊は無用の長物。恥ずかしくなった市長は、演説をはじめるが、誰も聞かない。

人びとは、手助けをするようになる。お金持ちの中には、寄付してくるものもいた。まるで、サンタクロースからのプレゼントのように、町はものであふれた。人も増えた。

 

アルメットには説明なんかいらなかった。
たいせつなのは それがうみだした すべてのよいこと

そして人々は、みんながそれぞれに助け合うようになった。
火事や洪水や戦争がおこるたびに、
アルメットの仲間が一生懸命働いた。

アルメットはにどと願いを口にしなかった。
でも、雲に手を振った。

おしまい。

 

不思議なお話。。。。
最初は、マッチ売りの少女かと思った。アルメットの願いはかなった。人々は、恵まれない人々にも優しくなった。そして、協力するようになった。

それは、ものが豊かになったから?


著者のトミー・ウンゲラーについての説明は、本には載っていなかったので、調べてみた。フランスの児童作家。1931年フランスのストラスブール生まれ。1956年にアメリカに移住し、画家・漫画家・絵本作家や広告美術など幅広く活躍。ヘラルド・トリビューン賞、国際アンデルセン賞画家賞等を受賞。

世界大戦後にアメリカに渡ったフランス人ということ。ストラスブールというから、ドイツとの激しい戦争も経験しているのかもしれない。

 

くっきりとした線と色づかいで、フランスらしい?アメリカらしい?はっきり、くっきりタイプのイラスト。お話は、ちょっと寂しいような気もするけれど、絵本として、結構深い。

貧困が無ければ、争いは起きないのかもしれない。ふと、そんなことも思った。

なんにしても、アルメット、暖かいところで暮らせるようになって、よかったね。
小さな子供が、マッチを売り歩かなくてはならないような社会がなくなりますように。

 

一応、クリスマスの絵本ってことらしい。

絵本は、楽しい。