いろいろへんないろのはじまり
アーノルド・ローベル 作
まきたまつこ やく
冨山房
1975年3月20日 第1刷発行
2023年8月10日 第50刷発行
The great blueness and other predicaments (1968)
Facebookが勝手にだしてくる広告で見かけた。1975年と古い作品だけれど、今でも増刷されているらしい。楽しそうなので、図書館で借りて読んでみた。
著者のアーノルド・ローベルは、 1933年 ロサンゼルス 生まれ。 高校卒業後、 ブラッド・ インスティテュートに学び、 本のイラストレーションに興味を持つようになった。 同じブラットで学んでいた アニタ・ケンプラーと結婚する。 アニタ ものち絵本作家となる。アーノルド最初の絵本は、 自分の子供のために描いた『マスターさんの動物園』である。 その後は幅広い活動を続け、1971年『ふたりはともだち』でコールデコット・オナーブック 賞を受賞するなど絵本画家としての確固たる地位を得た。 1987年没。
『ふたりはともだち』をネットで検索してみたら、がまくんとかえるくんの物語らしい。見たことある絵の気もする。本書の絵も、なんか懐かしいような気がする。どちらも記憶にはないのだが、、、。
本書のタイトル『The great blueness and other predicaments』は、直訳すると「偉大なる青さとその他の苦境」。苦境?? 読めばわかる。なぜ、predicamentsなのか。
表紙は、ペンキ塗りの刷毛のようまのものを手にして王様らしき人物が、石の門にたっている。両脇には黄色、青色、赤色がつまったツボが。。。これで、色を塗るのかな?
そして、中表紙には、カラフルな額縁のような模様。タイトルの文字はくろいのだけれど、「いろ」だけは、白抜き。
そして、物語はこう始まる。
”ずっとむかし、いろというものは ありませんでした。
ほとんどが はいいろで、
さもなければ、 くろか しろでした。
そのことを はいいろのとき と いいました。”
魔法使いが、かわり映えのしない灰色世界をわすれようと、まほうの薬をつくったり、呪文をとなえたりしてみる。あれをちょっぴり、これをちょっぴり、、すると「あおいろ」というものができた。
魔法使いが、「あおいろ」で家を塗っていると、近所のひとたちがきて欲しがった。
近所の人たちも「あおいろ」で色々塗ったので、
世界中が「あおいろのとき」になった。
見開きいっぱいの町の様子は、青。水彩のような濃淡のついた青色でそまっている。子供も音馬も、お肉も魚も、お家も自転車も、ぜーんぶあおいろ。
みんな喜んだけれど、そのうち「あおいろ」は、「ゆううつ」で誰も笑わなくなる。
「なんとかしなくちゃ」とおもった魔法使いは、つぎに「きいろ」をつくった。
すると世界は「きいろ」になった。
みんなよろこんだけれど、しばらくすると、みんな目がちかちかしてきた。
魔法使いは次に「あかいろ」をつくった。
そして、世界は「あかいろのとき」になった。
「うん、すばらしい」と言っていたのもつかの間、こんどは、みんな怒りっぽくなった。
魔法使いは、
赤色と青色をまぜて新しい色をつくった。
黄色と青色をまぜて新しい色をつくった。
黄色と赤色をまぜて新しい色をつくった。
赤色と黄色と青色を、、いろんなふうにまぜてみた。
むらさきいろ、 みどりいろ、 だいだいいろ、 ちゃいろ・・・・
町の人たちは、その色を持ち帰って、色々上手にぬりました。
「うん、まったく、もうしぶんのない よい ながめじゃ」
最後の2ページだけが、さまざまな色のカラフルな世界。
よく書き込まれた街の様子と、カラフルな色と、これはこれは楽しい絵本。
色も楽しいけれど、描かれた町の様子をじっくりみるのが楽しい。
喜んでいる人々、悲しんでいる人々、怒っている人々、鳥や動物、屋根をなおす人、抱き合う人、寝込む人、、、。
色のある世界で、よかったね。
私の子どものときの夢の一つは、新しい絵の具の色をつくる人、だった。絵を描くのがすきだったのだ。小学生の頃は、子供用の絵の具で絵をかいていた。でも、子供用の絵の具は、透明感がなくって、日本画のような透明感のある色が欲しかったのだ。だから、お花の透明感のある色を、そのまま再現できる植物をつかった絵具をつくりたいって思っていた。
でも、密かに自分なりの実験で、植物の色は酸化してすぐに茶色くなっちゃうということが分かった。小学生の夢は破れた。。。そして、桜の花の色は、桜の木の皮を煮だしてもできるという話をきいて、自宅前の桜の木を皮をはいでみたくなったのだが、実験はしなかった。
色って、不思議な世界。
そして、日本は虹の色の数が7つあって、世界でも多い方であるとともに、色の名称もたくさんある。萌黄色、桜色、、、らくだ色、ねずみ色、、、。色にも植物や動物の名称をつかうというのが面白い。ただのYellowish Greenとか、Soft Pinkとかではないのが、日本人の情緒かな。
しかし、王様かとおもった表紙のおじいさんは、魔法使いだった。
だって、ぷっくり太っているから・・・。
この時代の魔法使いは、結構いいもの食べていたらしい・・・。
アーノルド・ローベルの絵本、もっと読んでみたくなった。
読みたい絵本が増えるのも楽しい!
ついでに、久しぶりに絵も描きたくなった。編み物、裁縫、料理、私にとってものづくりの趣味はたくさんあるけれど、絵を描くほど贅沢な時間はないかもしれない。着られないし、食べられないし、、それでもなぜ描きたくなるのだろうか、ね?
あぁ、いつか、絵本も作りたい。
そうか、そう思っているのかも。。。
絵本を読んでいると、自分の奥深くに潜んでいる欲求を思い出すことにつながる気がする。だから、大人になって読む絵本は楽しいのかも。インプットが少ない分、自分との対話が増えるのかも。
絵本も楽しい。
