『おにたのぼうし』 by あまん きみこ、いわさき ちひろ

おにたのぼうし

あまん きみこ 文
いわさ きちひろ 絵
ポプラ社 おはなし名作絵本
1969年7月 第一刷
2021年9月 第129刷


節分の時期、広告で見かけた絵本。いわさきちひろさんの絵。お話より、ちひろの絵に惹かれて、図書館で借りてみた。

表紙に描かれているのが、おにたかな?

おはなしの、あまんきみこさんは、1931年、満州生まれ。大阪府立桜塚高校を経て、日本女子大学(通信)卒業。新日本童話教室第一期生。

 

画家の岩崎ちひろは、1918年、福井県生まれ。東京府立第六高等女子学校卒。日本の代表的な絵本画家として、多くの優れた作品を描いたが、1974年、肝ガンのため死去。現在、その業績を記念して建設された、いわさきちひろ絵本美術館が東京都練馬区にある。

ちひろは、私の大好きな画家。子供の時、この透明感のある絵が描きたくて、絵の具開発者になりたかったのだ。。。

 

このお話は、初めて読んだかな。
思わず、うるうると、、、してしまった。

 

おにたは、まことくんの家の物置小屋にこっそり住んでいたんだけど、節分の日に豆をまかれて逃げ出す。
おにたは、まことくんの失くしたびー玉をこっそり戻してあげたり、にわか雨のときに洗濯物を茶の間に取り込んでやったり、気のいいおにだったのに。。。。

 

おにたは、つのを隠すために麦わら帽子をかぶって、雪のなかを裸足で歩いて、住めそうなおうちをさがしてみる。でも、今夜はどのうちも、ひいらぎの葉を飾っていて、入ることができない。ひいらぎは、おにの目を刺すのです!

 

おにたは、ちいさな橋を渡ったところに、トタン屋根の小さなおうちを見つける。女の子が出てきて、洗面器に雪をすくっています。
今のうちだ!と、ドアからなかに入ると、天井の梁の上にねずみのようにかくれた。

 

部屋のなかには薄い布団がひいてあって、女の子のお母さんが寝てます。女の子は、雪で冷やしたタオルをお母さんのひたいにのせてます。


うっすらと目を開けて、「おなかがすいたでしょう」と、女の子に言うお母さん。
女の子ははっとしたように唇を噛み締めて、
「いいえ、すいてないわ。さっきたべたの。

しらない男の子が、持ってきてくれたの。あったかあかごはんと、うぐいす豆よ。今日は節分でしょう。だから、ご馳走があまったって。」

 

お母さんは、ほっとするようにうなずいて、また、目を閉じ眠ってしまう。
ため息をつく女の子。


おにたは、背中がむずむずして、じっとしていられなくなり、台所にこっそり行ってみます。台所は、からんからんに乾いてます。米粒ひとつ、大根の切れ端ひとつありません。
おにたは、夢中で飛び出していきました。

 

しばらくすると、入り口をとんとんと、たたく音。
雪まみれの麦わら帽子をかぶった男の子が、ふきんをかけたお盆をもってたってました。

 

「節分だから、ご馳走が、あまったんだ。」
女の子はもじもじしながら
「あたしに くれるの?」とききます。
そっとふきんをとると、あかごはんと、うぐいす色の煮豆が湯気をたてています。

女の子の顔がばあっと明るくなり、笑顔に。


女の子は、箸をもったまま考え込んであるので、おにたがどうしたの?、ときくと、豆まきをしたいといいます。

おにたは、びっくり。
「だって鬼がきたら、きっとお母さんの病気が悪くなるわ。」
おにたは、悲しそうにいいました。
「鬼だっていろいろあるのに、、、、」

 

氷が溶けたように急におにたは、いなくなり、麦わらぼうしだけがポツンと残ってます。


女の子が帽子を持ち上げると、まだ暖かい黒い豆がありました。
お母さんが目を覚まさないように、女の子はそっと豆をまきました。
さっきの子はきっと神様だわ。だから、お母さんだって、もうすぐ良くなるわ。

ぱらぱらぱらぱら
ぱらぱらぱらぱら
とてもしずかな豆まきでした。

 

おぉ、、、、泣ける。。。。

おにたは、、、豆になってしまったのだろうか・・・。

え~~ん、、、泣ける。

女の子のやせ我慢も、泣ける。

 

ちょっと悲しい。。。。

そして、ちひろの絵が本当にいい。

本当に、ちひろいがいにこういう絵具の使い方をできる人をしらない。

私も、輪郭線を描かずに、絵具だけで描くことを挑戦したことがあるけれど、こんな風にきれいな濃淡の輪郭にはならないのだ。。。。滲んじゃったり、予定外に色が混ざってしまったり、、、。

何度見ても、何をみても、いい絵だ。

 

我が家には、ちひろの絵の「白鳥の湖」の絵本があった。あれも、捨てちゃったんだろうなぁ、、もったいない。。。

 

私は絵画が好きだけれど、家に大きな絵を飾る習慣はない。部屋を見渡せば、せいぜい絵葉書が貼ってあるくらい。でも、ちひろの絵なら額縁に入れて飾ってもいいなぁ、、と、ふと思った。

 

わたしはちひろの絵が好きだ。

この絵本も好きだ。

好きなものを発見できるのは、楽しい。

 

ポプラ社 おはなし名作絵本」シリーズ、結構よいかも。他も読んでみようと思う。

 

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